伊東乾氏による物理学の視点からみた音の波形や音響のお話

伊東乾 @itokenstein さんとその周辺の方々の会話が興味深かったのでまとめてみました。
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watcher @a_watcher

@itokenstein 日々益々ご清栄の事と存じます。お忙しい中誠に勝手ですが、もし可能なら物理と音楽の境界領域の問題を手短にご相談させて頂けないでしょうか?(Additive Synthesis(加算合成)の定義等でもめております http://t.co/o16rv2tg )

2012-01-28 23:38:16
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher 手短にツイートで頂くご質問ならお応えできるものがあるかと思います。丁度いま岩波の編集者宛に非線形音響関連の長いメールを下書きし終わった所でもあり、判る事なら即座にお答えします。週明けからまた関西のため、時間を割く要のある事はご勘弁ください。続便お待ちします。

2012-01-29 02:04:53
watcher @a_watcher

@itokenstein ありがとうございます。1.フーリエ以前の加算合成の例としてパイプオルガンの倍音成分の少ないパイプ(フルート管)を重ねた音色合成例がありますが、これを当時の理論例えばピタゴラスのハーモニー等で説明する事は可能でしょうか、妥当性や事例についてもお教え頂きたく

2012-01-29 02:46:00
watcher @a_watcher

@itokenstein (続) 2.ヤニス・クセナキスのUPIC(1978)あるいはその前身(EXPO70展示)は、ビジュアル音楽作成ツールと理解してますが、スペクトログラムを逆フーリエ変換で音にする機能はありますか?その種の機能を加算合成の文脈で言及しても問題ないでしょうか?

2012-01-29 02:50:14
watcher @a_watcher

@itokenstein 以上、2点となります。誠に勝手な質問を一方的にお送りし申し訳ありません。非線形音響という新しいキーワードにワクワクしました。私も学生時代、脳の血流測定を目的に非線形光学の末席で勉強しましたが、非線形は奥が深いですね。書店に並ぶのを心待ちに致します。敬具

2012-01-29 02:53:43
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher 第一の問い「説明」の意味がご質問の中で確定していないように見えます。ルネサンス期以降発達したオルガンの調律原理は平均律的なものとそうでないものとで可也隔たりがあります。何を目的とした「定義」かによって答えが変わるし、問いは音楽作りに役立つ風に思えないのですが

2012-01-29 02:57:28
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher UPICは1983年ごろ国立音大で展示して若かりし日の莱孝之さんがオペレートしているのを触らせて貰っただけで機能の詳細は存じません。ご質問で不明確なのは「スペクトログラムを」で、あの製図台は縦軸周波数横軸時間の平面に手書きでフォルマントをデザインする事ができ

2012-01-29 03:01:57
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher 特にクセナキスの仕事で特徴的なグリッサンド、連続的な周波数~音程変化の大群を扱う事を当初は主要目的としていたと理解しますのでスケッチの線を加算的に扱うなどと言えなくはないですが、具象的な形を音に一括変換という意味では一種のサンプラーに近い側面もあるもので

2012-01-29 03:05:56
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher むしろ当初からお書きのように加算の定義をどうするかで全然変わります。一応概論的に補うならヘルムホルツの母音音叉やグレアム・ベルのデジタルテレホンカプラなどは典型的な線形加算モデル、逆にベルが実用化した糸電話膜同様のアナログカプラは非加算サンプラですよね?

2012-01-29 03:09:57
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher じゃデジタルサンプラは何なんでしょう?録音するときはマイクのコンデンサなどが振動しますからI/Oはアナログ不加算ですよね。しかしサンプリングというのはFFTなど要するに微細な加算器で動かす訳で、それをどう捉えどう考えるかで「定義」はどちらでも成立しますね?

2012-01-29 03:12:45
watcher @a_watcher

@itokenstein 第一の問い:別の方が、倍音を重ねるAdditive Synthesisの前史の理路的背景として、純正律のように単純な倍音関係で表される波の理論(ハーモニー)に言及しており、そこをうまく説明したいと考えております。 http://t.co/q03snZic

2012-01-29 03:03:08
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher 純正律というのは自然倍音列やピタゴラスの5度と違い長3度という音程をあらなた協和音と定義する所から出発します。4分の5倍という単純な数比で示される通り、線形加算的といってよいでしょう。だとすると「加算性」の度合い指標として個々の要素がどれ位明示的かが考えられ

2012-01-29 03:18:09
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher アタマで考えるとオルガンの調律全体が調和的であるように考えやすいですが、カトリック圏で転調の少ない楽曲用のオルガンはオクターブレジスターごとに調律を変化させ、高い声部は低い声部と半音ほども外れた音程で調律されている古い楽器も決して珍しくないとのことで

2012-01-29 03:22:02
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher イタリア圏がカトリック教会でプロテスタントのバッハのオルガン作品を弾きたいという運動(チェチリアリズモ)がおきるのは20世紀初頭以降の事であるのが一つ。またそんな音痴調律でも「音色」を揃える為にストップ毎の比率の関係は決定的なのでこの例は加算的といえそうです

2012-01-29 03:24:46
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher 逆にUPICの描画はでたらめなスケッチでもグリッサンド群の響きをとりあえずシミュレートするので周波数領域を斜めに横断しますから、仮に準静的なスペクトルの組の合成を加算合成と考えるならそこからは外れるかも知れません。帯域雑音のフィルタリングに近い描画も多いです

2012-01-29 03:31:53
watcher @a_watcher

@itokenstein UPIC: ありがとうございます。フォルマントデザインを関連文献で調べます。1950年代ソ連のANSシンセサイザー/近年のMetasynthは、周波数vs時間軸に濃淡を書き逆フーリエで音色を作れるので、これをマイクロトーンによる加算合成と説明致したく

2012-01-29 03:09:10
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@a_watcher マイクロトーンによる加算合成というのは微妙な考え方と思います。よしあしは言えませんが、例えば白色雑音のリングモジュレートみたいな音もデジタルで発生させたら加算的?とか訳判らなくなっちゃわないかな?というのが、その場で伺って持つだけの感想ですが第一リアクション

2012-01-29 03:34:23
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

で僕の結論は加算的かどうかなんて音楽作る人も研究開発者も殆ど誰も大事な区別とは思ってないんじゃないでしょうか。僕の所では線形か非線形かの区別などのほうが遥かに大事という立場をとってます。フーリエの定理は周期関数に関するものというのはよろしいですよね?という事は発散があったりすると

2012-01-29 03:37:28
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

単純な音叉の音のような正弦波の重ね合わせでは実は言語音声などは合成する事が(容易には)出来ません。そこで帯域雑音フィルタリング等別の原理が工夫される訳ですがうちのラボでは長らくシニュソイドという「正弦波もどき」を用いることで「準線形的」に非線形な言語音声を取り扱っています、これは

2012-01-29 03:39:56
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

逆に聴覚末梢を考えると人を含む多くの動物の内耳は蝸牛管という円錐状管を用いて刺激信号の周波数ブロックごとのアナログ・デジタル分解をしていますが有毛細胞によるこの分解はかなりイイカゲンであるために「擬似正弦波的」つまりシニュソイド的な振る舞いに近い部分波系数列として中枢に伝播します

2012-01-29 03:43:01
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

定在波のような準安定的な部分波を線形結合的に加算するものを仮に狭義の加算合成と呼ぶならば、蝸牛神経やデジタルサンプラー程度の細かさの分解はすでに独立加算的に認知される可能性が極めて少ないので、まあ中間タイプくらいに思う方が、単に分類するだけでもより当たってるのではないかと思います

2012-01-29 03:46:41
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ただ最後に重要な点。ディジタルであれば大半が加算的なんて思いそうですが、確かにプロセシングだけ見ればそうかもしれませんが実際に僕らが音を聞くのはスピーカーのコーンだウーファーだといった振動体が非加算的に鳴ってるのを聞く訳で、オルガンパイプの独立加算性とは全く違っていますでしょう?

2012-01-29 03:50:09
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

特定のご質問へのお答えが途中から同報になっていました。細かく迂遠な話をお届けしてしまい、すみません。音楽や音の関係するご質問は、はしょりながらではあっても、出来るだけ正確にお答えするようにしています^^

2012-01-29 03:54:07
watcher @a_watcher

@itokenstein ご指導ありがとうございます。ヘルムホルツ、Speech Synthesis、ボコーダー、FFT/IFFTは、Analysis/Re-synthesis方式の枠組みで加算合成と考えておりますが、現在は狭義の定義(非倍音、時間変化まで)が主流派でいかんとも

2012-01-29 03:37:15
watcher @a_watcher

@itokenstein「高い声部は低い声部と半音ほども外れた音程で調律」素晴らしい例ありがとうございます!ストップ間合成は比率が決定的とは言え、ストップ内ではオクターブ間隔が2のべき乗倍(2^n)と限定されないのですね。ハーモニーの音響心理的捉え方について考察が必要と感じました

2012-01-29 03:47:34
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