ハイパーテクストからハイパーメリトクラシー(非点数主義教育)へ

ハイパーテクストを提案したテッド・ネルソンの思想が、目標達成のものさしが当人内にしかなく客観的に点数化しない教育思想、ハイパーメリトクラシーに、ネット環境の発達とともに連綿と息づくことを示唆する芦田せんせの連続ツイートをまとめました。
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芦田宏直 @jai_an

テッド・ネルソンのハイパーテキスト論(1960年代)は、学ぶ順序の自由、つまり「学校」教育体系の相対化を目指したものだったが、その大衆化は、90年代中盤以降のハイパーリンク型インターネット情報を待ってのことだった。

2012-02-26 02:49:29
芦田宏直 @jai_an

必修科目の相対的な縮小は、インターネット時代において加速することとなった。くしくも大学「大綱化」路線は、少子化現象のみならず技術的な潮流に呼応していたのである。

2012-02-26 02:49:47
芦田宏直 @jai_an

そもそもテッド・ネルソンのハイパー(ハイパーリンク)概念は、強力な学ぶ主体=意欲ある学習主体を前提にしていた。学習目標を自分自身に課しながらハイパーリンクを丁寧に辿(たど)り続けるには、根気が要るに違いない。

2012-02-26 02:50:17
芦田宏直 @jai_an

学ぶ順序を相対化した分、学ぶ主体(を前提すること)はむしろ強化された。学校教育体系は保守的な分、学ぶ主体は受動的であり、そのことによって主体性の形成に力点が置かれていたが、ハイパーリンク型(学校教育で言えば「選択」制カリキュラム)は学ぶ主体=積極的な学ぶ主体を半強制していた。

2012-02-26 02:50:47
芦田宏直 @jai_an

若い中学生や高校生はそういった選択的な「学校」体系の相対化を前にして、いわば強制的な主体主義=自主性を強いられるようになったのである。

2012-02-26 02:51:03
芦田宏直 @jai_an

現在のハイパーメリトクラシー主義(コミュニケーション能力論、問題発見・解決力、社会人基礎力、人間力など)が改善の見えない教育現場と親和性が高いのは、教育の出来不出来を生徒、学生の個人的な素因に解消できるからだ。

2012-02-26 02:52:28
芦田宏直 @jai_an

自分で「選んだ」科目や進路の出来不出来は自分(生徒・学生本人)にあるというように。教員の教育力は永遠に棚上げにされる傾向になる。

2012-02-26 02:52:42
芦田宏直 @jai_an

しかし、そんな重い選択の責任を取れる自己など生徒や学生に存在するわけがない。「学校」教育の受講者(生徒、学生)がいわゆる〈顧客〉ではないのは、彼らが消費者的な主体性以前の学習者だからだ。これから自己を形成する若い世代に、「自己」など存在しない。

2012-02-26 02:52:58
芦田宏直 @jai_an

しかしこのような空虚な「自己」主義を不断に強化する装置が携帯電話やITオンライン環境だった。

2012-02-26 02:53:21
芦田宏直 @jai_an

現在の30歳以下の(かつての)若者たちは、通信手段の個別化、24時間化を通じて、その反作用のようにして「自己」を獲得していった世代なのである。私はそれをとりあえず「オンライン自己」(の世代)と呼んでおきたい。

2012-02-26 02:54:06
芦田宏直 @jai_an

Input(ストック)よりは、output(フロー)中心の「自己」が肥大化している。つまり他者が自分をどう思っているのかばかりが前面化する。「自己」はその反作用でしかない。

2012-02-26 02:54:32
芦田宏直 @jai_an

外面の強度が内面の強度と同じものとなる。

2012-02-26 02:55:15
芦田宏直 @jai_an

他者が自分をどう思っているのかなどという悩みは、その他者が少数者でしかない場合にのみ可能なこと。携帯電話の着信表示やハイパーリンクの選択的な情報化は、自己拡大の契機と言うよりは、既知なものへの心理的な安定を獲得するためのものでしかない。

2012-02-26 02:55:37
芦田宏直 @jai_an

既に知っているものの知識拡大とは奇妙なことだが、自分に肯定的な要素を持ったものだけを過剰に獲得しようとする傾向のことである。逆に言えば否定的な要素は過剰に排除する。非通知の着信には一切反応しないように。

2012-02-26 02:55:55
芦田宏直 @jai_an

電気冷蔵庫が「つきっぱなし」の家電の最初だったが、今ではそれが「サーバー」になっている(私は、IT時代というのは依然として電気の時代の比喩でしかないと思っている)。そうやって個人もますます先鋭化し、「つきっぱなし」の個人が前面化している。

2012-02-26 02:57:05
芦田宏直 @jai_an

個人がフローになっている。対面機能主義(functionalism)=行動主義(behaviorism)、つまり「オンライン自己」論が、現代の自己啓発論、コミュニケーション論の諸前提を形作っている。

2012-02-26 02:57:24
芦田宏直 @jai_an

学びたがる奴にもイヤな奴は多い。 RT @may_roma: 主体性のない人が多いから教えて君が減らないのね… RT @jai_an: そもそもテッド・ネルソンのハイパー(ハイパーリンク)概念は、強力な学ぶ主体=意欲ある学習主体を前提にしていた。学習目標を自分自身に…

2012-02-26 03:03:25