木下直之「文化資源学と日本古代学研究」基調講演

2012年3月3日、明治大学の古代学研究所主催のシンポジウム『文化資源学と日本古代学研究』において、東京大学文化資源学研究室の木下直之教授が行った基調講演「文化資源学の展望」の概要をまとめました。
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kind_hiko @Kind_hiko

木下「狭義の文化財、法律上の文化財には常に「わが国にとっての価値」が関わってくる。ユネスコ文化遺産にも人類にとっての普遍的価値という問題がつきまとう。」

2012-03-03 13:49:44
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木下「文化資源の説明で、以前はゴミと資源ごみの関係の比喩をよく使っていたが、今日のそれはクリティカルな社会の問題になっている。話はそれるが放射性廃棄物の最終処理が作られず、中間処理の中で流れているという問題はどうか?」

2012-03-03 13:51:25
kind_hiko @Kind_hiko

木下「ものがゴミとなるのは持ち主の決定による。まだ使えるものをゴミとして出した時に資源ごみとなる。(今は資源ごみとなるとすら言わず、資源・ゴミと表記されるようだが)。考古出土物も取り出されて評価されて、文化財となる。それ以前はゴミにも文化財にもなる状況。」

2012-03-03 13:53:13
kind_hiko @Kind_hiko

木下「東京大学そのものの発掘と連携して来た。古代・近世・近代すべての遺構が東大の中に残されている。実は同じ場所を徹底的に掘り続けて来たプロジェクトとしては稀有の長さの発掘」

2012-03-03 13:54:50
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木下「美術史の徒として古代と言うと、直ぐにバザーリの『列伝』の古代・中世・近代の3分法を思い出す。しかし、古代と言う概念が近代の生み出した概念と言える。例えばこの固定を打ち破るものとしての意味もモダンアートはもっている。」

2012-03-03 13:57:23
kind_hiko @Kind_hiko

木下「美術がどこまで含まれるのか、誕生したのかに関心をもった。日本において初めて日本美術をまとめたのは、岡倉天心であった。彼は大和民族の美術から美術史を考えた。それ以前の石器や土偶は語らない(先住民族というナショナリズムの問題もあった)」

2012-03-03 14:00:25
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木下「一方で岩波写真文庫『東京国立博物館』の表紙、土器が並び子供がそれを見つめる図に、岡倉とは別の日本美術の始まりを見出すことができる。学芸員はどの文脈で並べ、どの様に鑑賞されるかまで考えるべき。文化的価値評価へ注目し、注意することが、文化資源研究に求められると思っている。」

2012-03-03 14:03:21
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木下「兼六園の日本武尊像の扱いの問題も面白い。この像はいわば近代日本の歴史の中でおかれたもの。戦後修復される際に、文化庁から「いいチャンスだからどかしたらどうか」という話が出たと憤懣に耐えない様子のメモが残っている。しかし、現在はこの像に社会の評価が追いついて来たか」

2012-03-03 14:05:46
kind_hiko @Kind_hiko

木下「青木繁の裸体像、「腰巻事件」や黒田清輝による男性ヌード画発言、中村不折「建国創業」などにも、同じものが言える。古代の裸体であっても、どの時点で誰が考えた古代なのかという問題がつきまとう。こう言った部分を担保する意味でも文化資源と言う言葉を使い続けたい。」講演終了

2012-03-03 14:10:00