東北大助教、堀田氏(QEnergyTeleport)のツイート

主に量子力学の話について、堀田さんの何度もの連続ツイートをまとめたもの。最初から最後まで繋がっているわけでは全然ないので、飛ばし読みして面白い部分を探してもOKです。 他の人との会話もあったのですが、相手の発言も拾わなければ分からないものは省きました。当初は誰でも編集可能にしていましたが、堀田さんのツイートは追加できない(はずな)ので、停止しました。
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1月23日

@QEnergyTeleport

自分の量子力学のTWの大半は、教科書にも書かれていた記述からデマを除いて整理しているだけのレベル。別に新しいことを言っているつもりはない。ただ多くの物理屋がコペンハーゲン解釈すら、突き詰めて考えていなかったから、目新しく感じるだけ。これは観測問題を避けさせてきた教育風土の帰結か。

2012-01-23 05:32:40
@QEnergyTeleport

普通のコペンハーゲン解釈での波動関数の収縮を整理すると、観測問題は存在しないという、ある意味当たり前のことが、自分の意見。波動関数は物理的存在ではなく情報(知識)的存在であり、同じ1つの物理系を見ていても、持っている知識量の差のため個人毎で波動関数が違うことがあるというだけだ。

2012-01-23 05:38:15
@QEnergyTeleport

ちなみに量子情報理論での波動関数(というより量子状態)の定義は、混合状態まで含んでいる。純粋状態はその中の特別な状態に過ぎない。例えばスピン等の有限自由度の状態は、エルミートでその固有値が負にならず、トレースが1になる演算子(行列)で定義される。

2012-01-23 05:41:24
@QEnergyTeleport

量子情報の物理屋向けの標準的教科書は、やはりM.A.Nielsen-I.L.Chuangの「Quantum Computation and Quantum Information」(Cambridge Univ Press) かな。量子情報の基礎的内容は、大体これで十分。

2012-01-23 05:44:45
@QEnergyTeleport

量子状態が、人の情報量に応じて異なる簡単な例。2つの電子のスピンが1重項状態(あるベル状態)にあるとしよう。外部からのあらゆる相互作用をカットする箱に一方の電子1を入れて部屋(1号室)でアリスが保管する。そして他方の電子2をボブが隣の2号室に持っていくとしよう。

2012-01-23 05:50:00
@QEnergyTeleport

アリスは目の前の電子1の箱に、外部からの電磁波が侵入するなどの撹乱は起きていないことを確かめている。彼女にとって、電子1はベル状態を縮約して得られる単位行列に比例する最大エントロピー状態にある。

2012-01-23 05:53:10
@QEnergyTeleport

しかしボブは2号室で電子2を測定してダウン状態を観測してしまったとしよう。ボブはこの瞬間アリスの電子1はアップ状態であることを知ってしまう。そしてボブにとって電子1の状態(波動関数)は瞬間にアップの純粋状態になる。

2012-01-23 05:55:26
@QEnergyTeleport

実は、ボブは電子1の波動関数が収縮したと思わなくてもいいのだが。敢えて、得た情報を使って、ボブは自分の波動関数の記憶を書きかえる。しかしボブの測定は電子2の測定であるため局所性からアリスの電子1に物理的影響は与えていない。アリスも測定結果を知らされていない。

2012-01-23 05:57:51
@QEnergyTeleport

それでアリスが意識している(記憶している)電子1の状態(波動関数)は、隠れてボブが行った測定後も、そのままである。ボブは電子2を2号室に残したまま、1号室のアリスのところに来る。ボブはアリスに隠れて測定した事実を黙っておくが、「この電子1はアップ状態だね。」と言う。

2012-01-23 06:01:15
@QEnergyTeleport

この段階ではアリスはまだ「いや最大エントロピー状態だ」と主張しても、物理的に何も矛盾が起きない。箱を開けて電子1に対してあらゆる測定をしても、電子1のスピンが最大エントロピー状態と仮定しても、アリスは何も矛盾を見出さない。

2012-01-23 06:03:44
@QEnergyTeleport

実際には電子1のスピンでアリスはアップを測定するのだが、最大エントロピー状態でもそれは半分の確率で起こるため、アリスは別に不思議に思わない。しかしボブは電子2の測定情報の知識を持っているため、彼にとっては、電子1だけで既に純粋状態にある。アリスとボブで量子状態は異なっている。

2012-01-23 06:06:14
@QEnergyTeleport

この話は古い教科書にも出ているレベルの話。ただ、もしボブが測定後の電子2をアリスのところに持って帰ってくると、電子1と2の両方からなる合成系の測定が可能になる。こうなると状況は変わる。

2012-01-23 06:10:18
@QEnergyTeleport

そこでアリスが、もし初期のスピン1重項状態が保たれているかどうかのベル測定を行えば、誰か(実際はボブ)が隠れて測定をしてしまったことを50%の確率で気付くことはできる。もし1重項状態でないものが実現して、その情報を知った段階で、アリスは自分の知識を書きかえることになる。

2012-01-23 06:13:19
@QEnergyTeleport

このベル測定の議論が、実は量子暗号で盗聴を検知するテクニックの1つにもなっている。量子暗号とは、ビット列で書かれている文章を量子状態に書きこみ量子ビット列にして、送受信したときに盗聴があったかどうかを検知できる技術。

2012-01-23 06:16:56
@QEnergyTeleport

なおこのアリスとボブの話は、一定のスピードで走っている異なる慣性系のチャーリーにとって電子1の状態はどうなっているかも考えると、更にもっと面白いことに。

2012-01-23 06:19:39
@QEnergyTeleport

量子力学の教訓:もし標準的コペンハーゲン解釈を採用するならば、それを徹底して、波動関数は情報的存在であることを強く意識すべし。人によって波動関数は異なる。その系だけで純粋状態なのか、それとも他の系と合わせてはじめて純粋状態なのか、自分の知識量に依存する。

2012-01-23 06:29:10
@QEnergyTeleport

シュレーディンガーの猫の拡張版、ウィグナーの友人の話でも、この波動関数の人間依存性は明らか。猫を直接観測した自分にとって、猫は生きているか死んでいるかのどちらの純粋状態。だが自分の観測結果を聞くことを外で待っている友人には、それを聞く前まで猫と自分の合成系の量子もつれ状態にある。

2012-01-23 06:34:58
@QEnergyTeleport

普通の量子力学の教育では、知りたいことだけ計算できればOKという安易なことがまかり通っている厳しい現状。特に素粒子分野で、量子力学に対しては「考えるな!ただ計算せよ!」の精神が広く流布している。超ひも理論での量子重力でも、測定論の欠如はとても深刻。実世界とのリンクが切れている。

2012-01-23 06:44:38
@QEnergyTeleport

これら以外に量子力学のこれまでの教育における問題はまだまだある。角運動量と角度に関する不確定性関係の問題(これはリング上の自由粒子の位置測定の問題に直結)や、無限に深い井戸型ポテンシャルでの運動量の測定の話など、基本的な演習問題にさえ、魔物が潜んでいる。

2012-01-23 06:53:23

1月24日

@QEnergyTeleport

以前ニューヨークタイムズで取り上げられた、フェアリンデさんの記事。http://t.co/XBSXMVKI

2012-01-24 06:37:50
@QEnergyTeleport

彼のホログラフィック宇宙描像では、“For me gravity doesn’t exist.”(重力は存在しない。)この意味は、宇宙の投影元になっている自由度の熱力学的エントロピー力こそが、宇宙の中の重力のように見えているという主張。http://t.co/XBSXMVKI

2012-01-24 06:38:02
@QEnergyTeleport

量子力学トリビア:エネルギー(ハミルトニアン)は、普通の観測量と同様に、どんなに短い時間でも精密に測れる測定方法が存在する。時間とエネルギーの普遍的不確定性関係は存在しないし、関係ない。(もちろんプランク定数/測定時間の誤差を伴うダメ測定もあるが、そんなものは使用しないように!)

2012-01-24 06:41:53
@QEnergyTeleport

量子力学トリビア:量子ゼノン効果。ある不安定な量子状態が時間とともに崩壊する時に、こまめに測定をしてその量子系が初期状態に留まっているか、それとも崩壊したかを確かめ続けると、測定無しの場合に比べて、不安定状態の寿命が延びているという話。

2012-01-24 07:01:29
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