第6話 「 放課後の先生 」
- Hika_Rarala
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【第6話の50】 ささのみことは、使い込んでピカピカに磨かれた透明のクリア・ファイルを手に取りました。これは、未咲と琴子が出動している間に、質問したいことをリストにしたからと、秋本くんに手渡されたものです。見ると、右上の端が、なにやら ふくらんでいます。「何でしょう?」
2012-03-21 15:21:23【第6話の51】 ささのみことは、そのふくらんでいる部分を右手でつまみ、左手でクリア・ファイルを持って、そっと取り出しました。それは、角をそろえ、パステル・ブルーのクリップで留められた、3枚のルーズ・リーフでした。「すごっ!」未咲が、うしろから じーっと見ながら言いました。
2012-03-21 15:29:48【第6話の52】 ささのみことが言いました。「途中から印刷の字ですが、読みやすいですね」未咲には、どこから印刷なのか わかりません。「なんか優しい字♪//」「はい。教科書体(きょうかしょたい)ですね」「ぐは! 今から、お勉強ッ!?」「いえ、フォントの名前です」「なぁんだ」(ホッ)
2012-03-21 18:06:33【第6話の53】 トントン。未咲は、ドアを見ました。「では、時空をですね‥今、止めましたので」ささのみことが、座禅のポーズで言いました。「へ?」未咲は、わけもわからず、キョロキョロと立っています。「では、秋本くんを起こしましょう。ラファエル、入室してください!」「はい」「??」
2012-03-22 17:12:03【第6話の54】 「失礼します」ラファエルは、ドアを透りぬけて入ってきました。「すご!」驚く未咲の背後で、ささのみことが机からジャンプし、スタッと宙に着地しました。「ここは!? プラネタリウム?」「秋本くん!」「未咲ちゃん、ブーツと赤いスカートは?」―未咲は、ハッとしました。
2012-03-22 22:24:10【第6話の55】 そして、頭を整理しないとムリになって、思い出しながら言いました。「そうだ! 最近、家の中でブーツをはくのがマイ・ブームだったっけ‥たしか毎日じゃなくて、コスプレの練習とかで。スカートも、最近ママがくれて」頷きながら聴いている、秋本くん、ラファエル、ささのみこと。
2012-03-22 22:34:36【第6話の56】 ほかの人の姿は見えず、宇宙のような空間に抱かれていました。(ここ、自分ちだよね? 帰ってから着替えて‥あれ?)未咲が考え込んだところで、秋本くんが言いました。「僕たちが玄関で『おじゃまします』って言ったら、未咲ちゃんは階段を駆け上がっていって、着がえてから、
2012-03-22 22:41:57【第6話の57】 また下りてきてくれたでしょ? 赤にチェックの入ったミニ・スカートと、ブーツと‥あと、白っぽいタイツで」「そ、そうだよね! なんでセーラー服なのかしら??」未咲が今の自分の服装を見ながら言うと、突然、不思議なことが起こりました。輪のように立つ4人の中央の空間に――
2012-03-23 00:12:47【第6話の58】 玄関から見た廊下が、まるでテレビ画面のように映し出されました。奥の階段から駆け降り、こちらへ走ってくる少女――それは、いま秋本くんが説明したとおりの服装で、髪を2つ分けにした――「私!?」。その次の瞬間、等身大になって本物の未咲とすれ違い、数歩走って消えました。
2012-03-23 00:21:30【第6話の59】 「分身っっ??」未咲は、目を大きく見開いたまま、自分を指さしてキョロキョロと立っています。「この空間自体が、全部バーチャルっていうことなのかな?」秋本くんは、いつもの落ち着いた口調で、ささのみことに尋ねました。不思議さを実感したうえで楽しんでいるのがわかります。
2012-03-23 09:50:31【第6話の60】 「そう‥ですね‥」「よかったぁ。じゃあ、おやつもコミック代も、全部、自分のか」ささのみことが言い淀んだところで、未咲は、心から安心しながら言いました。自分は1人しか存在しないことを実感できたからです。それに、妹の蕾とは、お小遣いも、おやつのチョコも別々でした。
2012-03-23 09:58:35【第6話の61】 「それとも、超能力で?」秋本くんが、ふいに真剣な声で尋ねました。「『魔法みたい』なことをしたい場合、普通は科学の力を使うけれど、人によっては、超能力でも出せるとしたら‥」「正解は『両方』です」ラファエルが言いました。「そっか♪」「科学と超能力が、共存できるの?」
2012-03-23 10:10:04【第6話の62】 今度は、ささのみことが答えました。「はい。ほかのスポンサーの皆さんと話し合って決定いたしましたので。今でも、共存は続いているはずですよ」「ほかの‥みなさんって?」未咲は、興味津津です。「知りたいですか?」「うん!」即答でした。秋本くんも、頷きます。
2012-03-23 13:05:20【第6話の63】 2秒後、ささのみことは答えました。「この6社‥、4社と2店ですね」そして、「ご覧ください」と言いながら、見ていたプリントを手渡しました。「うそ! こんなに!?」未咲は感動いたしました。会社やお店のことはわかりませんが、胸に気持ちがこみ上げてくるのを感じたのです!
2012-03-23 13:44:55【第6話の64】 ささのみことは、答える前の2秒間に、13年と9カ月の日々を想いました。≪知ってる人≫以外で、未咲が興味を持つのは、4歳のときからずっと―― 一緒に遊びたい子と、好みの美男子と、お菓子をくれる人だけでした。(出資者に感謝できるまでに、成長してくれていたとは!)
2012-03-23 14:24:57【第6話の65】 いっしょにプリントを見ていた秋本くんが、言いました。「本棚が、急に浮かび上がってきたね‥不思議なことに」「あ! しかも、部屋が宇宙ぅ??」あわてる未咲。「気がつきましたか」と微笑んでから、ラファエルは、ヒントを口にしました。「それと、机が‥少し」「ああ!」「?」
2012-03-23 23:49:35【第6話の66】 「ガラス製にっ!? いつ、どうやって‥」秋本くんが、仰天しています。「どうしたの?」未咲も、机のそばに立ちました。「ほら、僕たちの手が、透けて見えるでしょう?」「!」未咲は、机が透明になっていることを実感し、顔の表情も、ときめきから驚愕へと変わりました。
2012-03-23 23:50:24【第6話の67】 未咲は、マンガのように机に飛び乗り、「なんで? なんでー!?」と、激しくキョロキョロしながら立っていました。「たしか、小学生のとき、木でできた学習机が火事で焼けて、似た机をもらったって言ったよね?」「うん。言った//」未咲は、急に足をそろえて、机に腰かけました。
2012-03-23 23:43:03【第6話の68】 「ビンがあるね」「ほんとだ」ガラスでできた机の上に、ガラスのビン。「まるで――」秋本くんが言いかけた瞬間、一同は、『不思議の国のアリス』という本を思い出しました。物語の中の場面と似ていたからです! 「元の時空へは帰れるの?」「うそぉ!」未咲は涙目です。
2012-03-24 00:01:19【第6話の69】 「帰れますよ」ささのみことは、満面の笑みで断言してから、真面目な顔になって言いました。「ただ、せっかく‥ですね、機会を与えられたわけです。もう少しだけ解いてからにしませんか?」「たしかに」秋本くんは、迷わずスタスタと未咲の本棚へゆき、並んだ背表紙を見つめました。
2012-03-24 00:12:20【第6話の70】 未咲は、突然パンと手をたたいて言いました。「言うの忘れてたわ。『ハート・クエスト』っていって、1問ずつ解いてって、答えが合ってたら、帰れるの♪」秋本くんは、尋ねました。「未咲ちゃんは、変身を解く度に 学校のセーラー服にもどるの? 『セーラームーン』と違うんだね」
2012-03-24 00:20:49【第6話の71】 「早速きましたか」目を見開く、ささのみこと。「『ドラえもん』とも違うね。タイム・マシーンは、引き出しじゃない。スポンサーと関係あるとしたら、‥外階段かな?」「正解です!」ラファエルが驚きながら言うと、空間がゆらぎ、一同はもとの部屋にいて、部屋のドアが開きました。
2012-03-24 00:29:44【第6話の72】 そして、ラファエル、物部さっちゃん、ユリアの順に入室。気絶していた大助と琴子も起きました。本棚の前にいたハルルは、秋本くんと額がぶつかり、おたがいに謝りました。不思議な人も、立っています。「琴子にもどってる!」未咲が言いました。琴子も、変身が解けていたのです。
2012-03-24 00:41:59【第6話の73】 「今回で‥ですね、スポンサーが変わると先生も変わるというのを終わりにいたしましょう!」ささのみことが言いました。「たしかに。一貫してるような、してないような」琴子が思い出しながら言うと、「めんどくさいし」未咲はゲッソリと、ため息交じりに言い捨てました。
2012-03-25 00:25:11【第6話の74】 「3つあるのですが、先生を選べるクラスにしませんか?」ラファエルが、にこやかに言いました。「もう2つは?」と琴子。ラファエルは、手帳を開いて読み上げました。「授業内容を自由に変えられるクラスと、」「琴子といっしょのクラスがいー」「じゃあ私、最初ので」「即決だな」
2012-03-25 00:38:45