ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ #5
(獣人は他に構わず、一直線に目指した……アムニジアを!彼女の捕縛がザイバツの至上目的なのだ!「!」「ハッハァ!イヤーッ!」……「イヤーッ!」アムニジアへ稲妻めいた速度で伸ばされた獣人の手首を、横から割り込んだ手が、掴んだ!)
2012-03-24 11:54:17(テツオ?違う。彼は上空から飛来する影とブラックヘイズ達とを見比べ、身構えている。獣人の手首をマンリキめいた力で掴んだのは、マトモ電器の役員だ!「何だと?」「……お出ましだな……ザイバツ・シャドーギルド」「ヌウウウッ」獣人が牙を剥いた。「私はフェイタルだ!名を名乗れ……!」)
2012-03-24 11:54:48(アムニジアは事態が呑み込めぬまま、後ろへ転がってフェイタルから間合いを離した。マトモ電器の役員は片手でフェイタルの手首を掴んだまま、己の髭を掴み、引き剥がした。付け髭だ!その目に赤黒の光が灯る!「……ドーモ……」役員スーツが内側から赤黒の炎に燃え上がる!)
2012-03-24 11:55:17(スーツを包んだ赤黒の炎は、一瞬にして衣類の繊維を捻じ曲げ、変形し、ニンジャ装束を作り出していた。そこには赤黒の装束を着たニンジャが立っていた。彼は腕を掴んだまま、懐からメンポを取り出し装着した……「忍」「殺」のメンポを!「……ニンジャスレイヤーです」)
2012-03-24 11:55:36「ニンジャスレイヤー!?」フェイタルが焦げ臭い息を吐いた。「なぜ貴様がここに……イヤーッ!」自由な方の腕で殴りつけにかかる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは懐へ潜り込み、掴んだ手首を支点に投げた!イポン背負いだ!「グワーッ!」悪魔めいたフェイタルの身体が床に叩きつけられる! 1
2012-03-24 12:04:53「ニンジャスレイヤー?」ブラックヘイズが横目で不測の事態を追った。「イヤーッ!」ドラゴンベインが回し蹴りを繰り出す。アブナイ!「イヤーッ!」ブラックヘイズは咄嗟のバックフリップで回避しながら、右手首からヘイズネット弾を撃った。「イヤーッ!」ドラゴンベインは側転でこれを回避! 2
2012-03-24 12:09:02「貴様にはそろそろウンザリさせられる!ニンジャスレイヤー=サン」ブラックヘイズがドラゴンベインを牽制しつつ叫ぶ。サブリ化学CEOが呻いた。「わけがわからん……新手のニンジャだと……?ニンジャスレイ……何だって?では本物のマトモ電器は?」 3
2012-03-24 12:13:05そう、本物のマトモ電器は!?……同時刻!既にもぬけの殻となった巨大コタツ会議場を包囲したオムラ社員兵達は、なにか手掛かりとなる物が遺されていないか、伏兵は無いか、注意深くクリアリングを行っていた。そして男子トイレの中から聴こえてくるくぐもった叫びを耳にした。 4
2012-03-24 12:17:34「突入!」オムラ社員兵はツーマンセル戦闘体制でドアを蹴破り、アサルトライフルを突きつける!(ヘルプミー!ヘルプミー!)「……?」(ヘルプミー!ヘールプ!)そこには両手足と口を縛られた髭面の男が便座に座らされていた。アワレにも身ぐるみはがされ、下着姿だ。 5
2012-03-24 12:22:54「なんだ、これは?」社員兵は注意深く猿轡をほどいた。髭の男は堰を切ったようにまくしたてた。「た、助けてくれ!いきなり襲われたんだ。ありゃニンジャだ!私は……あんたら、オムラ=サン?アー……とにかく助けてくれ!私はマトモ電器の専務だ!御社とは何でも提携するから!」ナムアミダブツ!6
2012-03-24 12:26:37「おい」社員兵が床に置かれたオリガミメールを拾い上げ、書かれた内容を読み上げる。「このマトモ電器役員はオムラに会合を売ろうとした裏切り者、親オムラ人間であるがゆえに、ここで反省を促す。無慈悲なイッキ・ウチコワシより」「……」社員兵は顔を見合わせた。「我が社のスパイなのか?」 7
2012-03-24 12:31:51「え……じ、実際そうだ!そうなんだ畜生!」役員は激しく頷いた。「上の人間を呼んでくれ!話をつけるから」社員兵はしぶしぶ頷き、IRC通信を開始した。……ナムサン……その巧妙極まるオリガミメールは、ニンジャスレイヤーによる、せめてもの奥ゆかしいアフターケアであったのだ! 8
2012-03-24 12:36:29読者の皆さんも今や全容を把握しつつある事だろう。ニンジャスレイヤーはアムニジアに取り付けた発信器を利用してアジトから移動する彼女を追い、区画へ潜入した。そして状況判断し、マトモ電器の役員と入れ替わったのだ。役員がこの後、巧みな弁舌で切り抜けたか否か……それはここでは語るまい。9
2012-03-24 12:56:35「バスター・テツオ=サン。こうして顔を突き合わせるのは初めてだ」ニンジャスレイヤーが言った。テツオが赤いスコープ越しに彼を見やる。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。実に面白い。アムニジア=サンへの未練が戻って来たかね」「ザイバツの手が伸びているとあれば」彼は無感情に答えた。10
2012-03-24 14:48:11「イヤーッ!」フェイタルが跳ね起き、バック転で間合いから脱出した。ブラックヘイズと背中合わせに立つ。「忌々しい……アマクダリにニンジャスレイヤーだと」「目的のアムニジアを頂き、とっとと仕事を終わらせるとしよう」ブラックヘイズは言った。「どうやらアレも降って来る。幸か不幸か」11
2012-03-24 14:57:10『電磁バリア限界が近いです』ネブカドネザルの網膜インプラントにアラートが映り込む。モーターツヨシが球状に展開する電磁バリアは高射砲の弾丸とミサイルを完全に無効化する。エネルギー喰いだが、計算装置インプラントは電磁バリア限界時間予測を算出済みだ。ヘリポート到達に十分間に合う。13
2012-03-24 15:02:19『ネブカドネザル=サン!どうだ!当然問題無いな!』モーティマー・オムラ社長の興奮した声がノイズと共に届いた。「イエスボス。マグロツェッペリンが撃墜されました。宜しくお願いします」『そんなのはどうでもいい!やれ!やっちまえ!』「イエスボス。11秒後にヘリポート突入」 14
2012-03-24 15:06:52ネブカドネザルはモーターツヨシの背部ブースターを切り離した。肩のブースターで逆噴射をかけ、突入速度と角度を調整。ヘリポートがぐんぐん近づいてくる。チチチチ、アラート音が鳴り、屋上に居る者たち全てをセンサーがロックしてゆく。「役員は殺しますか?ボス」『殺せ!面子の問題だ』 15
2012-03-24 15:19:37「あれが……バスター・テツオと推察……テツオは殺しますか?」『当然だ、ぜんぶ殺……ザザッ……パパ!やめてよ!』『ネブカドネザル=サン!』皺がれた老人の声が割り込んだ。アルベルト・オムラ会長だ。『うまくやれ!殲滅してはイッキ・ウチコワシの全容も反オムラ組織の情報も得られぬぞ』 16
2012-03-24 15:25:22「……ボス?会長のご提案は妥当な物と判断しますが、いかがなさいますか」『畜生畜生!』ネブカドネザルは有効な命令を得られなかったので、降下タイミングでの殲滅攻撃を却下し、屋上に着地した。そして屋上の者たちに向かってアイサツした。「ドーモ。ネブカドネザルです」 17
2012-03-24 15:28:35「ドーモ。ネブカドネザルです」陽炎に霞む巨大なシルエット……恐るべき背部アーマーを装着した鋼鉄ニンジャがアイサツした。全ての者たちが一瞬、固唾を飲んだ。「アーッ!」ヤマミ鋼材の跡取りが風圧で床を転がった。バスター・テツオが叫んだ。「オムラだ!奴をやれ!皆殺しになるぞ!」 19
2012-03-24 15:35:23「あなた方のアイサツは省略します」ジャキン!音を立て、ネブカドネザルが両肩のキャノン砲と両腕アーマーのミサイルランチャーを展開した。「とりあえず重要対象を除く者達を全滅させます。当然ながら降伏は認めない」「イヤーッ!」ドラゴンベインが跳んだ! 20
2012-03-24 15:49:24