武田邦彦、近藤誠 トンデモ系専門家の読み方 補足

近藤誠「患者よがんと闘うな」についての補足。 流れのため、初歩的な統計に関する無知と臨床経験が無いために起こしたエラー と書いたが、詳細については触れなかった。 これもフェアじゃないと思うので、補足。 なお、内容的にはかなり難しいと思いますので、`統計の結果`がそれほど断定的に信頼出来るものではないということを理解していただければ、それで結構です。 続きを読む
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cladegifan @cladegifan

近藤誠 患者よ、がんと闘うな について補足。以下、彼の勘違いについて少し詳しく説明。問題は、統計に関する無知と臨床医としての感覚が無いことだと書いた。この点が少しラフ過ぎたので。 http://t.co/B02CT3pp にほとんど同じ本の要約がある。問題になるのは6~8だろう

2012-05-20 05:36:44
cladegifan @cladegifan

特に、7と8。これらは、彼の持つ統計的データが根拠になっているわけだが、その解釈について述べる。問題は4点。1,検出力が様々なファクターによって変化すること。 検出力ってのは、2つのサンプル間に差があることを検出する力のこと。測定器の鋭敏さみたいなものだ。

2012-05-20 05:40:14
cladegifan @cladegifan

これが、サンプル数、母集団の分布型、用いる統計手法等によって変化する。例えば、母集団がどれだけ正規分布からずれるかによって変わる。また、非正規分布を仮定してノンパラな手法を使えば一般に落ちる。サンプル数との関連では、一般にサンプル数が多いほど検出力は上がる。

2012-05-20 05:42:50
cladegifan @cladegifan

極端な話、サンプル数を無限にすれば、全ての検定で有意差が出る。実際に、コンビニの客に関するデータ等のメガデータでは、全ての検定で有意差が出てしまうため、検定が使えなくなっている。逆に、少ない場合、過剰な検出力の問題は無いが、結果が不安定になる。 

2012-05-20 05:46:56
cladegifan @cladegifan

つまり、サンプルによって有意差が出たり出なくなったりする。一般に医学、生物学でサンプル数が多すぎることはなく、サンプル数が足りない場合がほとんど。サンプルが多ければ多いほど正確という都市伝説はこの辺りから生まれた。

2012-05-20 05:48:46
cladegifan @cladegifan

2,解釈の問題。例えば、2者の間に有意差が認められたとして、それが何故なのかということに対する考察が必要であり、これが難しい。有名なのは、相関と因果関係の違い。例えば、下水が汚くなるほど癌による死亡が少ないというのが例。これは、相関があるが因果関係が無い例。

2012-05-20 05:51:55
cladegifan @cladegifan

3,棄却は否定ではない。大方の統計利用者が勘違いしている点。いっぱしの学者でも、有意差が無いので両者に差が認められないと嘘をつく。統計は、有意差があったことについてしか主張出来ない。有意差が無かった場合には、`何物も語れない`ということについては全ての利用者が知っておくべき。

2012-05-20 05:54:24
cladegifan @cladegifan

有意差が無いということは、両者の間に、`今回使われた手法では、統計的に差を主張出来ることは出来なかった`というだけの話だ。差が無いということを主張出来るわけではな。詭弁の様に聞こえるかもしれないが、実際に、例えば薬剤に効果が無かったことを検定する手法が研究されていたりする。

2012-05-20 05:57:01
cladegifan @cladegifan

勘違いしない様に。4,検定の仮定で必ず情報量の減少が生じる。これが最大の問題なので、最後に置いた。以下、これについて説明する。例えば、平均について考えて欲しい。100と0、50と50、25と75はどれも`違う`集合だ。ところが、平均値は同じになる。つまり、要約による情報量の喪失が

2012-05-20 06:00:28
cladegifan @cladegifan

起きているわけ。統計的検定ってのは、一般に次の様なプロセスで行われる。既存の分布に載る検定統計量を計算し、確率を求める。それが設定された(医学、生物学では普通5%)危険率以下であれば、有意とする。この際、要約による情報量の喪失が必ず起こる。難しくなったが、以下、具体例を挙げる。

2012-05-20 06:06:12
cladegifan @cladegifan

以上より、癌の早期発見や手術が無効であることを、有意差が無かったことから主張する行為には無理がある。詳しく説明しよう。両者に、その手法の検出力では検出出来ない程度の差があった場合、それは無効なのだろうか。実際、特異なデータは、情報量の喪失で結果に影響を与えない場合が多い。

2012-05-20 06:16:11
cladegifan @cladegifan

例えば、早期発見され、それによって命が助かった症例が、100例に1例でもあれば「やる意味がある」というのが、一般のお医者さんの感覚だと思う。これは一般人の感覚とも合致すると思う。もっと解り易い例を挙げよう。インテンシブな治療に関する問題だ。

2012-05-20 06:19:34
cladegifan @cladegifan

鳥越俊太郎っていうニュースキャスターはご存じだと思う。大腸癌を発病し、肝臓、肺の転移巣を切除され、現在も存命の方。この、遠隔転移時の転移巣の切除について、現在では治療指針として認められているが、長い間、エビデンスが無いということで公には認められていなかった。

2012-05-20 06:33:22
cladegifan @cladegifan

遠隔転位した癌の治療には、化学療法が常識であり、転移巣を切ることはマッドサイエンティストであるみたいな言い方をされていた時期もある。実際、少ない症例の画期的な成功例(例えば、鳥越の様な場合。遠隔転移巣を次々切っていったら、長期に延命が可能だったという例)は統計に載りにくい。

2012-05-20 06:36:18
cladegifan @cladegifan

有り体に言えば、有意差が出にくいわけで、個々の情報が検定の段階で`ならし`によって喪失されてしまうためだ。では、それにブレーキをかけていたのは何かというと、臨床経験。実際にやってみた。そうしたら、少数ではあるが長期延命が可能だった。だったらやってみる意味あるだろ、っていう感覚。

2012-05-20 06:39:32
cladegifan @cladegifan

検診や早期癌の手術による効果も同様で、実際に、検査による早期発見→オペで救命された例や、逆に手遅れで手術不能になった悲惨な例を散々見ていれば、「統計的データは知らない、理論的には良く解らない。だけど、実際助かっている人がいる以上、俺はやるべきだと思う」になる。それが普通。

2012-05-20 06:43:25
cladegifan @cladegifan

つまり、詳細な統計理論に関しては知らないが、実際の経験がストッパーになって正しい選択をしていたということ。これで、近藤は臨床医じゃないから...って書いた例がお解りだろう。結局、彼の本は、統計学に無知な人間が机上のデータを元に空論を振りかざして出来上がった物だということ。

2012-05-20 06:45:27
cladegifan @cladegifan

アクセルとブレーキを取り違えて覚えたペーパードライバーが、いきなり自動車を運転して大事故を起こした様なものだということ。以上、あれこれ書いてきたが、専門家って言われる人間が意外なほど無知だということを覚えておいて欲しい。彼らは、自分の専門領域に関しては詳しい。

2012-05-20 06:48:24
cladegifan @cladegifan

例えば、近藤も、専門分野ではそれなりの実績を持っているはずで(乳がんの放射線治療だっけ?)、その分野に関しては、一般人が及ばない知識や経験を持っているはずだ。しかし、そこから踏み出した時点でこける。ある意味、専門家であるということは、ネガティブに他分野は知らないということでもある

2012-05-20 06:51:51
cladegifan @cladegifan

前に書いた様に、人間のロジックに関する感覚は鋭敏なので、貴方が胡散臭いと思ったら多分それは本当に危ないと信じて良い。以上、本当に色々書いたが、最後、統計について詳しく解説したのは、統計の結果がそれほどrobastではないことを知って貰いたかったから。

2012-05-20 06:56:34
cladegifan @cladegifan

色々な要素によって動く上、その中には推定が可能じゃない物もあったりするので、本当のところは、まあこんな感じかな 程度しか言えなかったりするのだ。にも関わらず、統計データってのが多くのトンデモに使われているわけで、誤用も悪用も自由に出来るのはこの曖昧さ故。それを理解して欲しかった。

2012-05-20 07:01:59
cladegifan @cladegifan

以上です。疲れたのでここまで。

2012-05-20 07:03:50