定本・銀ねずの和歌タイム1

このまとめは、平成24年5月27日~平成25年4月27日の約11ヶ月間にわたって、銀ねずがTwitter上に流していた和歌解説ツイートをまとめたものです。全100首。 取材範囲は基本的に勅撰集を主体とし、あとは銀ねずが持っている私家集等より引用しています。 当初はまとめる意図もなく、本当に何の気なしに始めたつぶやきでしたが、フォロワーさんからご感想など頂戴していい気になってしまい、かくのごとき仕儀と相成りました。 続きを読む
12
前へ 1 ・・ 19 20 22 次へ
銀ねず @ginn_nezz

【2】玉津島たえぬ流れをくむ袖にむかしをかけよ和歌の浦波(藤原良経) #waka #jtanka 良経というひとは、家集を『秋篠月清集』とし、摂関家の人間でありながら隠者を夢見ていた『生まれる場所を間違えたひと』。この歌を収める『西洞隠士百首』もネーミングからしてどうなのよ。

2013-04-26 15:31:55
銀ねず @ginn_nezz

【3】玉津島たえぬ流れをくむ袖にむかしをかけよ和歌の浦波(藤原良経) #waka #jtanka 『玉津島明神の偉大な流れをくむ私(の袖)に、和歌が栄えた昔のすばらしい時代の余波(なごり)をかけてくれ、和歌の浦の波よ!』。和歌の神さんを喜ばすためには隠者になったっていいっていう。

2013-04-27 14:33:23
銀ねず @ginn_nezz

【4】玉津島たえぬ流れをくむ袖にむかしをかけよ和歌の浦波(藤原良経) #waka #jtanka こういう歌はいわゆる名歌選みたいなものではスルーされるのだけど、私はこのタイプの歌が好き。神事と呪術と詠歌と、やっぱり底のところは今もつながってると思うからね。(了)

2013-04-26 15:32:17
銀ねず @ginn_nezz

【1】いそのかみ古きを今にならべこし昔の跡をまた尋ねつつ(後鳥羽院) #waka #jtanka 続古今和歌集、賀歌。詞書『元久二年三月廿六日、新古今集竟宴おこなはれけるによませ給ひける』。「いそのかみ」は「ふる」につく枕詞。「古きを今にならべ」はそのまま新古今集ということ。

2013-04-26 16:12:09
銀ねず @ginn_nezz

【2】いそのかみ古きを今にならべこし昔の跡をまた尋ねつつ(後鳥羽院) #waka #jtanka 古きを今に引き上げて並べるのは、自分の編んだ新古今集こそ第一等のものであることを言う。その圧倒的な自負! はいはいその通りですよ、あなたにゃかないませんよ。

2013-04-26 16:12:19
銀ねず @ginn_nezz

【3】いそのかみ古きを今にならべこし昔の跡をまた尋ねつつ(後鳥羽院) #waka #jtanka 本当は後鳥羽院御集から玉津島や和歌の浦を詠んだ御製を探っていたのですが、さすが後鳥羽院は俊成や良経ほどに自分を卑下するような(神さんを持ち上げるような)歌に乏しかった。

2013-04-26 16:12:27
銀ねず @ginn_nezz

【4】いそのかみ古きを今にならべこし昔の跡をまた尋ねつつ(後鳥羽院) #waka #jtanka なら、後鳥羽院らしく自負の塊のようなこの歌の方が百首のトドメにふさわしいかなと思ってこれを選びました。これにて『銀ねずの和歌タイム』、おしまいです。ありがとうございました。(完)

2013-04-26 16:12:36
銀ねず @ginn_nezz

【1】和歌の『上手い』『下手』ということ。この定義を簡単に書いておきます。上手い和歌とは、基本的にほとんどが贈答歌です。相手が返歌に困るくらいの技術を詰め込んだ歌が『上手い歌』で、掛詞や縁語、はたまた序詞などがふんだんに、贅沢に使われます。

2012-09-15 00:54:16
銀ねず @ginn_nezz

【2】対して『下手な歌』は代表格を提示しておきます→【この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば(藤原道長)】、多くの現代人にとってはこの道長の歌は面白いんじゃないでしょうか。和歌の約束事も技術も使われていない歌は分かりやすくそれゆえに下手くそです。

2012-09-15 00:54:37
銀ねず @ginn_nezz

【3】『上手い和歌』は相手があって初めて成立するので、一人の感慨を表す時には必要ありません。自分一人の感慨を表現するのは漢詩の役目で、実は和歌はそんな漢詩との差別化をはっきりさせるために、相手を必要とする文学として発展してきたのです。

2012-09-15 00:55:16
銀ねず @ginn_nezz

【4】相手を必要とする文学、ということは恋歌がその発展に欠かせない存在でありました。歌のやりとりを続けるうちに技術が向上してゆき、またその続かせるモチベーションが男女の恋心だったことで前進を続けたわけです。これは健全なことだと私は思います。

2012-09-15 00:55:36
銀ねず @ginn_nezz

【5】しかし明治になって写生短歌ブームが起きた時、その推進者たちは和歌の恋心を完全無視しました。時代的にも源氏物語がけしからん文学とされたので仕方がないのですが、これによって『上手い歌』がどういう歌であるか日本人は忘れてしまいました。

2012-09-15 00:56:07
銀ねず @ginn_nezz

【6】明治以後の短歌は相手を特に必要とせず、仲間(ギャラリー)がいれば良いという『自閉的』なものになってゆきます。で、その自閉的短歌の旗印にされたのが万葉集の一部の歌と、源実朝の歌でした。万葉集はともかく、実朝の歌を一言で言うと…要するに和歌としては下手くそです。

2012-09-15 00:56:28
銀ねず @ginn_nezz

【7】実朝は相手がいなくても成立する和歌を始めた人で、本人はそんなこと意識せず見よう見まねで歌詠んでただけなのですが、王朝和歌の歴史からするととんでもなく危険なことをしていました。下手くそなほどいいと言うのは完全に未来の価値観で、絶対にどうかしてる人です。

2012-09-15 00:56:52
銀ねず @ginn_nezz

【8】道長の『この世をば』の歌は、宴の座興で作ったものでさすがに道長も家集には入れてません。本人も恥じるくらい下手くそだと思っていたからです。でも宴に同席した貴族が「道長の野郎、こんな歌詠みやがって」と日記に書き付けてくれたおかげで後世に伝わってしまいました。

2012-09-15 00:57:14
銀ねず @ginn_nezz

【9】対して実朝は…自分の歌が下手かどうか認識していたでしょうか。中には驚くほど巧みな贈答歌もあるにはあるのですが、大多数は下手くそな自閉的和歌です。そういうの関係なく家集に収めて後世に残した功罪はとにかくでかいです。彼によって『上手い下手』の価値観が逆転したのです。

2012-09-15 00:57:38
銀ねず @ginn_nezz

中途半端だけどひとまず、【了】。

2012-09-15 01:01:00

--ここからは備忘録風に更新しています


銀ねず @ginn_nezz

古りにける朱【あけ】の玉垣神さびて破【や】れたる御簾に松風ぞ吹く(源実朝) #waka #jtanka 金槐和歌集・雑。題『社頭松風』。古びたお社の、破れかけた御簾(みす)を風が揺らしてる、っていうだけの歌。短歌を続けてきた今は、完全に現代短歌の領域だなあ、と驚いています。(了)

2013-12-19 22:37:41
銀ねず @ginn_nezz

【1】わたつうみに流れ出でたる飾磨川しかも絶えずや恋ひわたりなむ/源実朝 #waka #jtanka 金槐和歌集、恋。実朝の恋歌は、俊成卿や定家などと比較するなら、はっきり言ってヘタクソです。この歌も歌枕やら序詞駆使してますが、それだけです。実朝の魅力はヘタクソにあるんです。

2014-01-28 00:36:45
銀ねず @ginn_nezz

【2】わたつうみに流れ出でたる飾磨川しかも絶えずや恋ひわたりなむ/源実朝 #waka #jtanka 三句「飾磨川(しかまがは)」まで、四句「しか(然)」を呼び起こす序詞です。飾磨川が海に絶えず流れ出るように、私はずっとあなたを恋しつづけますよ、っていう。…練習か!

2014-01-28 00:36:56
銀ねず @ginn_nezz

【3】わたつうみに流れ出でたる飾磨川しかも絶えずや恋ひわたりなむ/源実朝 #waka #jtanka 書いた通り、実朝の魅力はこういう和歌のお約束を離れたところにあるんだと思います。だから「万葉調歌人」みたいなことを言われてしまうのだとも。王朝和歌は自由じゃないから。

2014-01-28 00:37:06
銀ねず @ginn_nezz

【4】わたつうみに流れ出でたる飾磨川しかも絶えずや恋ひわたりなむ/源実朝 #waka #jtanka でも恋歌がこんなヘタクソでも実在の人物との贈答歌はとても巧みだったりするので、空虚な恋歌だけが苦手なのかもしれません。そのあたりが、とても不思議な存在。

2014-01-28 00:37:21
銀ねず @ginn_nezz

【5】わたつうみに流れ出でたる飾磨川しかも絶えずや恋ひわたりなむ/源実朝 #waka #jtanka ちなみにこの歌、万葉集に本歌があります。→【わたつうみの海に出でたる飾磨川たえむ日にこそ吾が恋やまめ】。誰が何と言おうと万葉歌の勝ち。(了)

2014-01-28 00:37:31
銀ねず @ginn_nezz

【1】春は来れど人もすさめぬ山ざくら風のたよりに我のみぞとふ(源実朝) #waka #jtanka 定家所伝本金槐和歌集、春。詞書『人のもとによみてつかはし侍りし』。柳営亜槐本では初句「春くれど」で字余りが改変されていますが、定家本の字余りの方が「溜め」があって効果的。

2014-04-06 14:04:01
前へ 1 ・・ 19 20 22 次へ