牧眞司の文学あれこれ2

牧眞司の文学あれこれ http://togetter.com/li/290388 あまりに前のまとめが長くなりすぎたので、続きを作りました。
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

豊﨑由美『ガタスタ屋の矜持』(本の雑誌社)読了。読者としてはめっぽう面白く、おなじ書評仕事をする身としては悲鳴と溜息が交互に出てしまう。悲鳴は極太の精神注入棒で尻を叩かれている気がするからであり、溜息は豊﨑さんの器量に惚れてしまいそうだからである。 

2012-07-02 12:19:02
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

書評集の類は世の中にあまたあって、ぼくも参考資料として携えてはいるが、読んで面白いものは少ない。なぜ面白くないかといえば、評者があまり本気で書いていないか、本気であっても論調に変化がない(どの本も同じアルゴリズムで処理している)からだ。 (続く

2012-07-02 12:19:40
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

まあ、書評はバイヤーズ・ガイドとしての機能さえ果たせばよいという考え方もある。しかし、非本気・単論調だと、一冊にまとまったとき、読んでいてだんだん飽きてくる。しかし、『ガタスタ屋の矜持』はちがう。本気度はなりふりかまわぬレベルで、作品ごとに異なった斬り結びかたをしている。 (続く

2012-07-02 12:20:01
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

作品ごとに評し方を変えるのは、豊﨑さんにかぎって小手先の技巧ではない。作品との相互作用だ。真摯な書評家は、オツに澄まして作品を判定したりしない。作品に押されたり引かれたり回されたり、もうぐるんぐるんになって、その動いている実感をなんとか文章化しようとする。 (続く

2012-07-02 12:21:06
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

言うなれば、作品をパートナーとした即興舞踏で、相手次第でどうにも変わる。あるときは華麗なリード&フォロー、あるときはめっぽう愉快なタコ踊り。『ガタスタ屋の矜持』には、さまざまなダンスが収められている。 (続く

2012-07-02 12:21:28
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ぼくもつねづね見ならいたいと思っているのだが、思いきりが足らぬためか足腰が弱いせいか、なんとなく中途半端な盆踊りになってしまうのだ。

2012-07-02 12:21:48
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

北上次郎・大森望『読むのが怖い! Z』(ロッキング・オン)読了。ちょっとずつ読むほうが良い本だが、個人的な事情があって一気に通読。 (続く

2012-07-05 22:20:34
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

扱っているのがエンターテインメント小説なので、ブックガイドとしてはぼくとあまり縁がない。SFについては大森望の単著のほうが圧倒的に役立つ。本書はむしろ話芸を楽しむ本です。 (続く

2012-07-05 22:20:55
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ふたりのやりとりは微笑ましい。しかし、北上さんは老人力とかボケ芸ですましてならない部分がある。好みが偏っているのはむしろ個性だし、記憶が長続きしないのもけっして欠点ではないが、読みとりがおぼつかないのは良くない。 (続く

2012-07-05 22:22:33
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『ねじまき少女』に関して、「書き方と構成は(バチガルピよりも)伊藤計劃のほうがはるかにうまいですよ。だって、読ませてくれるもん、僕でも」と言うが、それって「うまさ」なのか。あのくらいは、「読ませてもらわ」なくても、ふつう読めるでしょう。 (続く

2012-07-05 22:23:26
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

まあ、その件はセーフとしよう。日常生活には支障がないから。しかし、『きのうの世界』のネタがわからなかったというのは、基本的な読解に問題があるのでは。作中にけっこうハッキリ示されていたと思うのだけど。 (続く

2012-07-05 22:24:39
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

とは言え、それでもなお、ぼくは北上さんは偉いと思う。それは容易にノセられないところだ。大森望が「まさかと思うようなラストが待っている」と評すと、「へえ……それにびっくりするの?」と応える。この対談には、そんな場面が何度もある。 (続く

2012-07-05 22:25:02
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

SFでもミステリでも「意外性を狙う」作法があって、それはある程度、作者と読者の共通了解・共犯関係によるところがある。大森望はそつなく汲みとるのだが、北上さんはそういう反応をしない。天の邪鬼でやっているのではなく、もともと興味がないのだ。 (続く

2012-07-05 22:25:38
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その自然にわがままなところは、とても好ましい。本人はまったくその気はないだろうけど、批評性すらおびている。

2012-07-05 22:26:29
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

@Sakai_Sampo ええと。あまり言うと貶しているみたいになっちゃうんですが、さきほど例にあげたのは「深読み」以前の問題で、書かれているとおりに読むだけだと思うんですよ。でも、北上さんは読めていないことを隠さないのは立派。ふつうだったらゲラの段階で隠滅するでしょう。

2012-07-05 22:44:16
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

泉鏡花『春昼・春昼後刻』(岩波文庫)を読んでみた。期待以上というか予期せぬというか、じつに変な小説。筋書きだけに着目すれば唐突だったり無駄な逸脱が目立つが、いやこれはこれで完璧に構成されているとみれば、いろいろな符合が浮きあがる……ような気もする。 (続く

2012-07-08 16:29:40
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

幻想恋愛小説、ドッペルゲンガーもの、日常のなかの異界、枠物語の内外がぐるりとつながるメビウスの輪、そのすべてがここにあるのだが、迂闊なぼくはもうひとつ読む焦点が定まらない。「この登場人物は必要なの?」と思ったり。

2012-07-08 16:34:26
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『春昼・春昼後刻』ほんすじとはあまり関係ないが、物語の転換点に蛇が出てきて、蛇好きのぼくは楽しかった。蛇好きと言っても、動物マニア的な蘊蓄を蓄えるのではなく、たんに好きなだけなんだけど。

2012-07-08 16:38:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

B・V・ラーソン『スターフォース 最強の軍団、誕生!』(ハヤカワ文庫SF)読了。大味なミリタリSFだが、物語がすんなりしていてそれが大味とマッチして、停滞なく読める。 (続く

2012-07-08 21:40:09
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

SFにかぎらず現代のエンターテインメント小説は、大味なくせに、設定がいたずらに凝っていたり、多視点の語りを弄したりで、煩わしいものが多い。その点、本書はまっすぐ単線で好ましい。これで長さが半分くらいだともっと良いのだけど。 (続く

2012-07-08 21:40:33
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

物語はエイリアンの侵略もので、巻きこまれた主人公が地球を救うために奮闘するというパターン。この主人公、コンピュータ・サイエンスの大学教授なんだけど、おつむの調子が「スタートレック」並みの賢さで、エイリアンのマシンもそれに見合った論理構造です。 (続く

2012-07-08 21:41:08
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

敵のエイリアンからの通信を、味方のコンピュータが受信し「解読不能です」と言うと、われらが主人公はすかさず「ASCIIコードではどうだ? ユニコードかもしれない」と指示する。あのなー。 (続く

2012-07-08 21:41:26
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

コンピュータ「一致しません」。主人公「人類のコンピュータ言語を全部あてはめてみろ」。どんだけ。

2012-07-08 21:42:06
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

デュレンマット『失脚/巫女の死』(光文社古典新訳文庫)読了。やはりタダモノではありませんでした、この作家。ぼくにはまず怪奇小説の傑作「犬」でデュレンマットを知り、ついこのあいだ推理小説『判事と死刑執行人』を読んで仰天したのだけど、 (続く

2012-07-10 20:29:57
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

この短篇集は、彼のまた違った側面を見せてくれる。ただ、そのすべてに共通するものもあって、あえて言葉にするなら「この世の深淵がのぞく」感覚とでも言おうか。

2012-07-10 20:31:17
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