オペレイション・レスキュー #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

電算室内を、主を失ったカラスが飛び回った。一羽がボーンアーマーの肩に衝突した。「グワーッ!……アン?」ボーンアーマーは首を傾げた。肩のあたりに黒い染みが拡がり、すぐに蒸発した。「ヨロシダムンシット!」「チィー。ハッタリか」アサイラムは四本の腕を組んだ。「追い詰めて殺すまでよ」23

2012-06-27 15:47:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「展開!」「展開展開!」「スッゾー!」廊下の角を曲がり、十数人の武装クローンヤクザが走り出る。「展開展開!」……彼らの足音が聴こえなくなるのを待って、天井に張り付いていたフォレスト・サワタリは床に降り立った。「フゥーム」彼は歯でくわえていたククリナイフの刃を舐め、鞘に戻した。25

2012-06-27 18:45:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダクトを這い進んだ彼は別の温室めいた最深部区画に到達、その先の詰所にいた二名のクローンヤクザを殺し、居合わせた研究サラリマンを殺した。彼は今、闇の中をしめやかに進むクーガーめいていた。先程の警報に反応し、施設内が騒がしい。クローンヤクザ部隊はなかなかに規模が大きいようだ。 26

2012-06-27 18:53:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は中腰の姿勢で足を運ぶ。足音は殆ど無い。やがて彼はT字の別れ道に到達する。第二電算室で当初の解散地点として指定したポイントだ。フォレストがニンジャスレイヤーらの無事を祈る事など当然無い。「……」彼は己のニンジャ方位感覚と地図画像の記憶を照合し、実験室方向へ進んだ。 27

2012-06-27 19:18:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」赤外線ナリコ・トラップ等を警戒しながら、すり足で前進する。彼は弓矢を構えている。前方から敵が現れれば即座に射殺す。罠は無い。彼はサブジュゲイターとの遭遇を警戒する。やがて、壁に「結構防護服が要します」と書かれたパネルを発見。そして、隔離された実験室に通ずる下り階段だ。28

2012-06-27 19:31:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストは階段を降りきった。「バイオハザード」とカタカナでショドーされた隔壁。「……」彼は認証鍵のパネルを眺める。「フゥーム……」彼は思案した。パネルに手をかざす。「社員コード。網膜」とマイコ音声が告げる。廃棄された施設。ずっと前に……。彼は身を屈め、覗き込んだ。 29

2012-06-27 19:45:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「認証出来ドスエ」マイコ音声が告げた。ブルズアイ!外界から打ち棄てられたこの施設は、社員データベースすらも未更新。研究職としてのフォレスト・サワタリのデータが残ったままだ。彼は二重隔壁を抜け、さらにその奥へとエントリーする。 30

2012-06-27 19:50:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

暴走したボタニックは当時の研究員達を虐殺し、施設を蹂躙し、その後の復旧作業を不可能とし、外界から全てを断絶せしめた。ゆえにセキュリティも穴だらけだ。サイオー・ホースめいて、施設を破壊したボタニック自身が侵入者をも阻み続けた。この施設はヨロシサンにとって如何ともしがたい恥部だ。31

2012-06-27 20:08:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストココココ、ストココココ、ストココココ。フォレストはUNIX計算音で包まれる。彼は弓をしまい、マチェーテに持ち替えて警戒する。破損した巨大なシリンダーに「ボタニック」の刻印。既に殺したニンジャの名。彼はその側にある檻を見据えた。ニンジャの気配はそこにある。「ハイドラ……」32

2012-06-27 20:24:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「違うね!」皮肉めかした否定の言葉が返って来た。フォレストはいつでも斬りかかれる姿勢だ。ニンジャは檻の中で肘を突き、横になっている。サブジュゲイター……違う。装束がモノトーンだ。メンポの奥の目には、どこか馬鹿にしたようなアトモスフィアがある。「残念、こっちはハズレだよ」 33

2012-06-27 20:38:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何者だ」フォレストは問うた。ニンジャはヒヒヒと笑った。「どいつもこいつも。俺を閉じ込めてほったらかしておいて、またぞろやってきて、何者だ、と来らぁ。アンタ、おかしな格好してやがるな」「貴様も捕虜か?」「捕虜?」ニンジャは訊き返した。「ぷっ!戦争気分か?ンなわけねぇだろ」 34

2012-06-27 20:46:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「では犯罪者か。戦争のドサクサで盗みでも働いたか?」「まだ言ってやがる。お前さんの妄想にこっちも付き合わなきゃいかんのかい」「フゥーム」フォレストは親指で顎を擦った。「ジャングルの奥地でイクサの継続を知らぬ脱走兵の話は、聞いた事がある。情けない奴め」「アー……」 35

2012-06-27 20:54:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャは尻を掻いた。「とにかく俺のことはアレだ、いないと思っていい。もしくは、殺せ。好きに家捜しすりゃいいや。もっともサブジュゲイター=サンがお前さんの目当てのモノを持って行っちまったかも知れんがね」「……」フォレストは思案した。「私はフォレスト・サワタリだ。お前の名は」 36

2012-06-27 20:59:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「名前はサブジュゲイター=サンにあげちまったよ」ニンジャは答えた。「お前さん、何を探してンだ?捕虜?ぷっ!捕虜ね、捕虜」「捕虜の名はハイドラだ。我がサヴァイヴァー・ドージョーの隊員だ」「バイオニンジャか」「そうだ」 「……」ニンジャは目を細めた。「電算室に気配が二つ」 37

2012-06-27 21:04:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「では一つはサブジュゲイターだ。敵軍の指揮官だ」フォレストは言った。ニンジャは起き上がり、アグラした。「じゃあ、もう一つが、そのハイドラだろ」ニンジャは言った。「なァるほど、取られちまったってわけだ。あいつのジツで。こいつは傑作だ」「ヨロシ・ジツだ。知っておるのだな」 38

2012-06-27 21:09:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知っているとも。俺はあいつの出来損ないよ」ニンジャは言った。「俺の能力がベースになっているんだ。あいつは完成形だ。俺にゃ、遠隔操作だの、洗脳だの、とてもとても……」「お前もバイオニンジャか」フォレストは言った「ヨロシサンが生み出した……」「まあ、そうだな」「ずっとここに」39

2012-06-27 21:14:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうだよ。ボタニックが研究員を皆殺し。以来、ここでこうして、ほったらかしさ。何もする事ねえし、寝てンのさ」彼はアクビした。「殺していいぜ」「……」フォレストは檻に手をかけた。「ヌゥーッ……」「イイね。ひと思いにやってくれ」「殺す?何をバカな」格子を捻じ曲げながら言った。 40

2012-06-27 21:18:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アア?」「お前は一緒に来い」フォレストの眉間に血管が浮かび上がった。極度のニンジャ腕力の発揮だ。「サヴァイヴァー・ドージョーに」「ナンデ?」ニンジャは心底不可解そうに目を見開いた。フォレストは答えた。「そこで座って、何になる」格子が曲がってゆく! 41

2012-06-27 21:25:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何になる、って、何にもならねえよ」ニンジャは言った。「バイオ手術を受ける前の事なんか忘れちまったしよォ、仕事もねえし、寝てるか殺してもらうか、二つに一つ……」「ナンデ?」今度はフォレストが問うた。「檻は空いたぞ。なぜ出ない」「出る?」「当然だろう」 42

2012-06-27 21:28:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストは一歩下がった。そして言った。「お前がそこにいる理由は何も無い!」「……まあ、そりゃ、無いさ」「ならば共に来い。サヴァイヴァー・ドージョーは戦力を必要としている。自由獲得の為の戦力を!サヴァイヴァルの力をな!」「……」ニンジャはのそのそと檻から出てきた。 43

2012-06-27 21:39:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バイオニンジャは企業の道具では無い。わかるか?サヴァイヴァルする為のニンジャだ。厳しいサヴァイヴァル環境に適応する肉体と力を持つ。ゆえにサヴァイヴァルする。我がドージョーはサヴァイヴァル集団であり、サヴァイヴァルの為に戦う!自由!」フォレストは叫んだ。「お前もそうなのだ!」44

2012-06-27 21:45:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何言ってんだアンタ」ニンジャは檻から出ると、その場でストレッチを始めた。「だがまァ、寝る・死ぬ以外に、俺にやる事があるとはな!その発想は無かった。発見(ディスカバリー)だ」「ディスカバリー!」フォレストが言った。「名前が無いなら、今からそれが名前だ。ディスカバリー=サン!」45

2012-06-27 21:58:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ディスカバリーか」彼は呟いた。「俺はディスカバリー。ははは」「よし。作戦再開だ、ディスカバリー=サン。我々は医療物資を必要としている。そして捕虜奪還」「わかりくいんだよ、アンタ。メディキットだのバイオインゴットだのか?この部屋にあるだろ、そこのコンテナだ」「よし!流石だ!」46

2012-06-27 22:09:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォレストはコンテナに飛びつき、蓋を力任せに引き開けた。冷気が漏れ出る。中には緑のヨーカンめいた直方体が満載!バイオインゴットだ!さらに壁際の棚にバイオエンブレムの箱を発見!メディキットだ!「モッチャム!」バイオフロシキに詰め込む!「待っておれハイドラ!フロッグマン!」 47

2012-06-27 22:13:58