【ゾンサバ小説】軍人サークと小さな夢【10日目~11日目】

診断メーカーのゲーム「ゾンビサバイバル」の結果を元に勢いで書いた小説です。 どんどん想定外の方向に突き進んでおります。話を畳める気がしない。 【最初】1日目~2日目:http://togetter.com/li/330602 【前話】7日目~9日目:http://togetter.com/li/336200 続きを読む
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へっぽこぴーすけ @hpsuke

転倒した少女ゾンビの喉を踵で圧し潰す!そして首のなくなった体の足を掴み、派手にスイングしてもう一体に叩き付ける!二体目も転倒し、すぐに最初の一体と同じ末路を辿った。カタが付いた後、サークはゾンビの懐を探り、出てきた生徒手帳を見る。写真の中で可憐な少女が微笑んでいた。259

2012-07-14 07:46:50
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「なんか…可哀想だね」もう一体の遺物を拾うサークに、リッカがしんみりした声をかける。「あたしもこうなってたかもしれないし…」「今は考えるな。ここを出ることだけを考えろ」「うん…」そこにニレが頭を下げる。「ほんとすいません!まさかこんなことになるとは僕も思わなくて」260

2012-07-14 07:48:35
へっぽこぴーすけ @hpsuke

三人は今、校舎の中にいた。ニレが近道だと言って二人を誘ったのである。実際に周囲は横転したトレーラーや崩れた工事資材で道が塞がれ、ひどい迂回を余儀なくされるところだったのだ。しかし校舎の中はあちこちの出入り口や廊下の防火扉がバリケードで封鎖されていた。直進できる状況ではない。261

2012-07-14 07:49:48
へっぽこぴーすけ @hpsuke

結果、地上階から二階に、二階から三階にと校舎内を彷徨っていたのだが、そこには大量の高校生ゾンビが潜んでいた。生徒達がバリケードで学校に立て籠もったものの、中で感染が拡大してしまったのだろう。今では外より多くのゾンビがうろつく状況と化したのは皮肉としか言いようがない。262

2012-07-14 07:51:22
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「マジ腹立つ。なんでこんなところに連れてくるんだよ」リッカがニレを睨む。「僕だってこうなるとは思ってなかった」ニレが言い返す。「この役立たず!」「どっちがだ!」「やめろ」サークは眉間を抑えた。何度仲裁してもこれだ。リッカが噛み付き、ニレがやり返す。その繰り返しだ。263

2012-07-14 07:52:59
へっぽこぴーすけ @hpsuke

とにかく馬が合わないのか、合流からこっち、口論が絶えない。高校卒業と同時にこれまでずっと世界中を放浪し続け、つい先日この町に戻ってきたらこうなっていた…というニレの来歴を聞き出すだけでも相当な時間がかかった。いちいちリッカが吠えるのだ。煩くて敵わない。実に厄介だ。264

2012-07-14 07:54:12
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「頼むからもう少し静かにしてくれ。さもないと」サークの言葉の途中で、ゾンビの唸り声が響き渡った。「…連中がどんどん寄ってくる」窓が塞がれ薄暗い廊下の向こうから、数えきれない程の制服姿の少年少女のゾンビが、廊下を塞ぐ勢いで湧き上がってくる!「うわあーっ!」ニレが絶叫する!265

2012-07-14 07:55:44
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「二人とも手伝え」サークはすぐ横の教室の扉を勢いよく開けると、中から机を持ってきた。そして頭上に振りかぶり、恐ろしい力でゾンビに向かって投げつけた!机は先頭を歩いていたゾンビの腹部に直撃、大量の後続を巻き込んでばたばたと倒れてゆく!「とにかくここに椅子や机を持ってこい」266

2012-07-14 07:57:00
へっぽこぴーすけ @hpsuke

リッカとニレが慌てて教室に飛び込み、サークの元に片っ端から机や椅子を運んでくる。サークは渾身の力で次々とそれらを投げつける!狭い廊下で先頭のゾンビに大質量の物体が直撃すれば、当然後ろのゾンビも巻き込むことになる。サークは手を休めず、次から次へと手当たり次第に投擲!267

2012-07-14 07:58:25
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「…こんなところか」流石に疲労がピークに達し、その場に膝をついてサークは喘いだ。視界の先には、潰れたゾンビとひしゃげた椅子と机が絡まりあった新しいバリケードが築かれていた。「流石に少し無茶だったか…」「おっさん…ごめんなさい」反省したリッカがしゅんとして頭を下げる。268

2012-07-14 07:59:45
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「大群は抑えたけど、これじゃこの先には進めないですよね。僕が他の道を探してきます」ニレが申し出るがサークは即座に却下した。「単独行動は禁止だ」「大丈夫ですって!」ニレはサークの制止を振り切り、あっという間に廊下を駆けて行った。「あのバカ…!」リッカが苛立たしげに呻く。269

2012-07-14 08:01:19
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「ごめん、おっさん。クソ兄貴が手間ばっかかけさせて…」「いや、確かに兄妹だなと思っているところだ」サークはあえて冗談めかして言った。「妹も突っ走るタイプの人間だったのか?」「…あの子は違ったよ。ほんとにあたしたちと同じ血が流れてたのかわかんないくらい」270

2012-07-14 08:02:43
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「わーっ!」どこか遠くからニレの絶叫が響く!「…っ!マジで、あいつは!」リッカが毒づき、サークは立ち上がった。先の無茶による疲労は色濃く残っているが、そんなことを言っている場合ではない。「どこから聞こえたかわかるか?」「たぶん、さっき登った階段の近くだと思う」271

2012-07-14 08:04:10
へっぽこぴーすけ @hpsuke

二人は来た道を駆け戻り、階段前のロビーに飛び出た。すると、さっきは会議机で塞がっていた防火扉が開けられている。「行くぞ。離れるなよ」「もちろん!」サークを先頭に扉をくぐると、そこは隣の旧校舎に続く渡り廊下だった。渡り廊下の終点から、古びた木造の床や壁に切り替わっている。272

2012-07-14 08:05:39
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「兄貴はこの先にいるのかな」「だろうな」リッカは息を呑む。旧校舎は「外側」と見做されていたのか、これといってバリケードがなされている様子はない。しかし裏を返せば、それはここが学校を襲ったゾンビのいる危険地帯であることを示している。旧校舎は不気味に暗く、物音ひとつ聞こえない。273

2012-07-14 08:07:05
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「…やっぱ行くんだよね」「当然だ。行くぞ」淡々と歩き始めるサークに慌ててリッカがついていく。何故か服の裾をつままれたサークが振り返ると、リッカはそっぽを向いた。「離れるなって言ったじゃん」「言ったが」「ならいいだろ」「服の裾を持つ必要は…」「気分だよ」「そうか」「そう」274

2012-07-14 08:08:25

11日目分(前半)

へっぽこぴーすけ @hpsuke

【11日目】(7/6)今日のhpsuke:【休息】安全そうな路地裏を見つけ、新聞と段ボールで野宿。こんなものでもないよりはマシというものだ。HP:+3 食糧:-3【HP:88 食糧:73】【同行者:親を失った少女(リッカ)】

2012-07-16 10:16:43
へっぽこぴーすけ @hpsuke

(あらすじ:リッカの兄・ニレと合流したサークとリッカ。彼の案内によって近道となる学校敷地に侵入するが、大量のゾンビに襲われてしまう。なんとか撃退したサーク達だったが、今度はニレが行方不明に。彼が向かったと思われるのは、どこにゾンビが潜むかわからない旧校舎だった)

2012-07-16 10:17:04
へっぽこぴーすけ @hpsuke

旧校舎は新校舎に比べて小さく、それに比例するかのように廊下も狭い。古くなった床の木材が軋む音を抑えるためか、足元にはカーペットが敷かれ、自身の足音さえもほとんど耳に届かない。日が落ちていないにも関わらずひどく薄暗いのは、北側に隣接する新校舎の陰になっているからだろう。275

2012-07-16 10:17:21
へっぽこぴーすけ @hpsuke

旧校舎に入ってからというもの、なぜかリッカが身を寄せてくるのがサークには不思議だった。サーク自身にはほとんど実感がないものの、この建物がいわゆる「雰囲気」に満ちているのは理解できる。しかし、あれだけ大量のゾンビを見てきた後でこの反応は、やはり不思議としか思えない。276

2012-07-16 10:18:34
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「調子が悪いのか?」小声で尋ねるが、リッカは首を振るだけだ。「問題があるならすぐ言え」「…あのさ」リッカがぽつりと呟く。「おっさんは苦手なものってあるの?」唐突な質問に戸惑ったが、サークは正直に答えた。「爆弾を抱えたテロリストの子供は苦手だ。極めて後味が悪い」277

2012-07-16 10:19:52
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「いや、そういうんじゃなくてさ…」リッカは何かを言いかけて、やめた。「ごめん、なんでもない。兄貴を探そう」「ああ」そう言いながら、サークは、脳裏に微かな違和感を感じていた。ここではまだゾンビに出会っていない…ことではない。リッカのことでもない。もっと根深い何か…278

2012-07-16 10:20:57
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「今すぐ新校舎に走れ!」サークはリッカに叫んだ。「ここは囲まれている!一旦脱出しろ!」気がつくと、廊下の左右に並ぶ木製の扉が全て開いている!それらの奥からは例外なくゾンビの呻き声が響く!「なんで!?いつの間に!?」リッカが叫ぶ!「いいから走れ!」サークは構える!279

2012-07-16 10:22:21