【ゾンサバ小説】軍人サークと小さな夢【10日目~11日目】

診断メーカーのゲーム「ゾンビサバイバル」の結果を元に勢いで書いた小説です。 どんどん想定外の方向に突き進んでおります。話を畳める気がしない。 【最初】1日目~2日目:http://togetter.com/li/330602 【前話】7日目~9日目:http://togetter.com/li/336200 続きを読む
1
前へ 1 ・・ 3 4
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「成程、確かにとんでもない家庭環境だったわけだ」サークは笑った。内心ではなく、実際に口元を歪ませて。「末妹とやらはさぞ大変だっただろうな」ニレは肩をすくめ、話を変えた。「さて。お互い自己紹介も済んだところで、どうしましょうか?僕は適当に『はぐれる』つもりでしたが」303

2012-07-17 02:16:07
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「リッカには悪いが、お前を連れて行く気にはなれんな」「でしょうね!」ニレが心底愉快そうな声を上げる。「僕も任務があるので…。妹にはよろしく言っておいてもらえます?」サークは少し考え、首を振った。「自分で言え」「まいったなぁ。ぶっちゃけ僕、あいつは苦手なんですけど…」304

2012-07-17 02:16:46
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「この際だからこってり絞られておけばいい」「そんなこと言わないでくださいよ」ニレが苦笑したその時だった。微かに聞こえたリッカの叫び声に、二人は振り向き新校舎を見た。無言のまま、二人は瞬時に駆け出す。ニレは走りながら背中に手を伸ばし、両手にサバイバルナイフを握った。305

2012-07-17 02:17:25
へっぽこぴーすけ @hpsuke

渡り廊下を越え、二人はノンストップで階下を目指す。集中を研ぎ澄ませた二人の耳には、階下で争う小さな物音がはっきり聞こえている。すぐに廊下の奥、バリケードの会議机を次々と押してぶつけ、高校生ゾンビの集団に必死で抵抗しているリッカの姿が目に入った!ニレが速度を増す!306

2012-07-17 02:18:11
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ニレはサークをも越えるスピードでゾンビの群れに突撃、両手のナイフをカマイタチのように振り回し、片っ端からゾンビの首を切断してゆく!続いて到着したサークはニレの量産する死体を使って姿を隠し、死角から頭部に致命打を放ち続ける!三十はいたはずのゾンビがどんどん数を減らす!307

2012-07-17 02:18:50
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ゾンビの群れの中、触れた人影を次々と斬り伏せてゆく兄の姿を、リッカは信じられない思いで呆然と眺めていた。記憶の中の兄の姿を思い起こす。昔から何を考えているかわからない人間ではあったが、こんな卓越した強さの持ち主ではなかった。しばらく見ない間に一体何があったのか。308

2012-07-17 02:19:30
へっぽこぴーすけ @hpsuke

やがてニレとサークが同時にゾンビにトドメを刺し、戦闘は終了した。驚きのあまり声も出ないリッカを一瞥し、ニレは笑顔でサークに告げた。「僕の他にも入り込んでる連中はいます。好戦的な奴らもいるみたいですよ?じゃあ、気をつけて」言うが早いがニレは窓から飛び出し、姿を消した。309

2012-07-17 02:20:08
へっぽこぴーすけ @hpsuke

数時間後。夜の闇に沈みかける町の路地裏を、サークとリッカは歩いていた。交わす言葉はない。元々無口なサークはともかく、リッカはまだ頭の中を整理できていないのだ。一方でサークは、ニレの最後の忠告は彼なりの餞別代わりなのだろう、と疲労に霞む頭で考えていた。310

2012-07-17 02:20:59
へっぽこぴーすけ @hpsuke

乱戦を繰り返したせいで、全身の疲労はもはやピークに達していた。あの場でニレと戦り合っていた場合、間違いなく敗北していただろう。最早立っているのも辛い状況だ。周囲を見回す。大通りからも陰になり、周囲に敵の気配はない。ここなら安全だ。そう思うと一気に気が抜けた。311

2012-07-17 02:21:31
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「…ちょっ、おっさん!」体勢を崩しかけたサークに気付き、慌ててリッカが支える。「大丈夫!?どっか怪我が…」「ただの疲労だ。悪いが限界が近い。少し休ませてくれ…」「待って!待って!」リッカは近くの段ボールを拾ってくると、その場に崩れ落ちるサークの下に大急ぎで敷いた。312

2012-07-17 02:22:09
へっぽこぴーすけ @hpsuke

近くの電柱脇に、新聞紙の束が捨ててあるのが目に付いた。リッカは束を抱えると、塀に背をもたれて動かないサークの横に一緒に座った。束をほどき、新聞紙を広げ、せめてもの夜露凌ぎにサークの体を覆う。それから自身も新聞紙に包まり、空を見上げた。濃紺の空に、一番星が瞬いていた。313

2012-07-17 02:22:44
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「おっさん」「…なんだ」俯いたままのサークに呼びかけると、小さな声で返事があった。「食べる?」缶詰を差し出すが、ぴくりとも動かない。「今はいい。お前は食べろ」「…うん」缶詰を開け、中身を一口。何故か味がしなかった。脳に味を感じるだけの余裕がないのかもしれない。314

2012-07-17 02:23:20
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「おっさん」「…なんだ」「兄貴のことなんだけど…ごめん」リッカの言葉に、サークはちらりと彼女を見る。「なぜ謝る。お前のせいではないだろう」「でもさ…」リッカなりに責任を感じているのだろう。サークはあえて突き放すように言った。「何か言うなら、頭の中の整理がついてからだ」315

2012-07-17 02:24:14
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「…そうだね」リッカは小さく頷き、勢いよく缶詰の残りをかき込んだ。今は何を言っても意味のある言葉にならないだろう。サークの言葉に甘えることにした。横を見ると、既にサークは寝息すら立てずに眠りに就いている。リッカも目を閉じ、一旦全てを忘れて眠りにつこうと決めた。316

2012-07-17 02:24:59
前へ 1 ・・ 3 4