【ゾンサバ小説】軍人サークと小さな夢【10日目~11日目】

診断メーカーのゲーム「ゾンビサバイバル」の結果を元に勢いで書いた小説です。 どんどん想定外の方向に突き進んでおります。話を畳める気がしない。 【最初】1日目~2日目:http://togetter.com/li/330602 【前話】7日目~9日目:http://togetter.com/li/336200 続きを読む
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へっぽこぴーすけ @hpsuke

「おっさんは…」「こいつらを寝かせたら戻る」リッカは反論しようとしたが、諦め、全速力で駆け戻っていった。その後ろ姿を眺めながら、サークは深呼吸した。ひとつ思うところがある。それを確認するには、リッカがいない方が好都合だ。だが、その前にまず目の前の敵を倒す必要がある。280

2012-07-16 10:23:53
へっぽこぴーすけ @hpsuke

周囲の部屋からぞろぞろとゾンビが姿を現す。バットを持ったユニフォーム姿のゾンビ。サッカー部らしき、身軽な格好のゾンビ。そして柔道着姿のゾンビがそれぞれ2体ずつ。部活中、外で被害に遭った高校生達に違いない。不意にサッカー部ゾンビが突進!ゾンビとは思えぬスピード!281

2012-07-16 10:25:14
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ゾンビの動きは遅いと思い込んでいたサークは虚を衝かれ、突撃をまともに受けて転倒する!そこに覆い被さるようにサッカー部ゾンビがサークにのしかかり、噛み付こうと大きく口を開く!サークは咄嗟にその頭を掴み、腕力任せにひねり上げる!ごりゅん、と音がして、ゾンビの首がねじれた。282

2012-07-16 10:26:34
へっぽこぴーすけ @hpsuke

途端、絶命したゾンビの体が急に持ち上がる。見ると、邪魔だとばかりに柔道着ゾンビがサッカー部ゾンビの死体を持ち上げている。柔道着ゾンビはそのまま死体を放り投げる!死体は壁に叩き付けられ、トマトのようにぐしゃりと潰れた。腕力が通常のゾンビとは比較にならない!283

2012-07-16 10:27:47
へっぽこぴーすけ @hpsuke

ふと頭上を見ると、今度は野球部ゾンビがバットを上段に振りかぶっていた!慌てて横に転がり回避!バットはカーペットに直撃し、半ばからべきりと折れる。そのまま転がり、距離を取って立ち上がりながらサークは考える。スピード、パワー、武器持ち。ゾンビにもいろいろいるということか。284

2012-07-16 10:29:08
へっぽこぴーすけ @hpsuke

そこにサッカー部ゾンビのもう一体が突進する!生前の健脚がゾンビ化で強化され、信じられないスピードだ!だが!サークはゾンビを見据え、両手を開いて飛び掛ってきた刹那、右足を踏み込み、脇をすり抜けて突進を回避!勢い余ったゾンビは足をもつれさせ、廊下に派手に転倒した。285

2012-07-16 10:31:12
へっぽこぴーすけ @hpsuke

そこに襲い掛かる野球部ゾンビ!やはり大きく振りかぶり、力任せにバットを振り回す! サークはダッキングで回避!空振りしたバットの勢いにバランスを崩したゾンビの足を蹴り床に転ばせ、直後に頭を踏み潰す!やはりか。サークは確信した。最初は驚いたが、この程度であれば問題にならない。286

2012-07-16 10:32:28
へっぽこぴーすけ @hpsuke

もう一体の野球部ゾンビがバットをかざして迫るが、体幹バランスの崩れたゾンビが大振りをしたところで、それは巨大な隙を作るだけだ。案の定一度かわしただけで致命的な隙ができる。サークのハイキックが顎に直撃し、首から上を吹き飛ばす。そこに三度迫るサッカー部ゾンビ!287

2012-07-16 10:33:47
へっぽこぴーすけ @hpsuke

脚力は確かに強化されているが、神経系統は逆にぼろぼろに衰えている。速いだけで狙いのつかない弾丸など恐ろしくはない!サークは突進してきたゾンビの頭部に狙いをつけ、カウンターで上段蹴りを叩き込む!ぐしゃっと鈍い破砕音がして首から上が消失する。あと2体。288

2012-07-16 10:35:09
へっぽこぴーすけ @hpsuke

サークは首なし死体を受け止めると、それを盾に柔道部ゾンビに迫る。十分に接近したところ、やはり真っ先に邪魔な死体を退けにかかる柔道部ゾンビ。力が強いだけで頭の中身は普通のゾンビと同じだ。攻略法も同じ!死体の死角からゾンビの背後に回ったサークは、背中を全力で蹴り飛ばす!289

2012-07-16 10:36:42
へっぽこぴーすけ @hpsuke

重量物を両手に抱え、背後から蹴られたゾンビは前のめりに倒れ伏す。その隙にトドメを刺し、床に転がるバットを回収。残る柔道部ゾンビの顔面に向けて投擲し目を潰す!視界を失った最後のゾンビを難なく仕留め、サークは息をついた。疲労が無視できない。だが、あと一仕事残っているのだ。290

2012-07-16 10:38:19
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「ニレ!ゾンビは片付けた、出てきても大丈夫だ!」サークが怒鳴ると、廊下の奥の木造の扉がそろそろと開き、ニレが顔を出した。「サークさん…。すいませんでした、ゾンビが大量にいて、出るに出られなかったんですよ」ニレは周囲を見回しながら、こちらに向かって足早に駆けて来る。291

2012-07-16 10:39:40
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「あれ、リッカはどうしたんですか?」「元の校舎に避難させている」「そうですよね。危ないですからね!」「あまり待たせても心配だ。行こう」サークはニレに背を向け、道を戻り始めた。ニレが後ろからついてくる。「そうだ、ニレ。ひとつ聞きたいことがある」「なんでしょうか?」292

2012-07-16 10:41:24
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「高校卒業後、家を出て世界中を回っていたと聞いたが」「そうですよ。リッカから聞いたかもしれませんが、僕らの家は酷い環境だったもので…。それが?」サークは…気配に反応し体を反転、ニレの突き出した包丁を蹴り飛ばした!「…それで、どこの国の犬になることにしたんだ?」293

2012-07-16 10:42:41

11日目分(後半)

へっぽこぴーすけ @hpsuke

「あらー。やっぱりバレてたんですね!」最初に会った時と同じ陽気な笑みを浮かべながら、ニレは瞬時に体を引き、腰を落として構えた。「確信したのはつい先刻だ。猛獣を使ったトラップは過去に食らったことがあるからな」「猛獣かあ。元は人間なのに、酷いことを言いますね!」294

2012-07-17 02:10:42
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「最初に引っかかったのはリッカの妹の葬式の話の時だ」ニレの言葉を無視してサークは続ける。「『知らなかったから仕方がない』と言ったな。まるで今は知っているかのような言い草だった。そして実際、お前の妹が感情豊かだから余計に目立ったが、お前はあまりに反応が薄すぎた」295

2012-07-17 02:11:14
へっぽこぴーすけ @hpsuke

どちらもそれだけでは疑いと呼ぶにも足りない些細なことだ。だからサークは深く考えなかった。しかしここに来てゾンビを使ったトラップを食らい、あからさまに怪しい状況を踏まえて考えれば、引っかかりは確信へと変わる。「大方、この事態の『原因』をさらって来いとでも言われたか」296

2012-07-17 02:11:44
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「それで、どうするんですか?」ニレは笑みを浮かべながらサークに尋ねる。「別に僕らが積極的に敵対する理由はありません。今のところは…ですが。ここで殺し合いでもしますか?」思った以上にふてぶてしい男だ、とサークは内心で笑みを浮かべる。「今のトラップについてはどう釈明する」297

2012-07-17 02:12:15
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「あんなの挨拶にもなりゃしません。噂の『砦崩し』のお手並みを拝見したかったんです。気を悪くされたなら謝りますよ」ニレは悪びれもせずあっけらかんと言う。「噂に違わぬ腕前でした。なんであんなに強いんです?」「さあな」サークは白を切った。「ふたつ、確認したいことがある」298

2012-07-17 02:12:50
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「今のお詫びです。答えられる範囲で良ければ何でも」ニレはおもむろに構えを解いた。「ひとつ。ショッピングモールにゾンビを放ったのはお前か?」「モール?」ニレは首をかしげる。「僕じゃないですね。答えはノーです」サークは注意深くニレの表情を観察するが、発言の真偽は読めない。299

2012-07-17 02:13:31
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「それで、もうひとつは?」「リッカのことだ。お前はあいつをどうするつもりだ?」今まで笑顔のまま固まっていたニレの表情が、この時初めてほんの少し動いたのを、サークは見逃さなかった。「どうするもこうするも。僕の任務にあいつは関係ありません。今後の成り行き任せですよ」300

2012-07-17 02:14:16
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「狙ったように姿を現したから、保護するつもりなのかと考えていたが」「いーえー」大げさに首を振るニレの表情は既に戻っている。「全く気にならなかったと言えば嘘ですけどね。要注意人物と一緒に行動してるのを知った時はびっくりしましたよ!こりゃ是非一度顔を出さなきゃと思って」301

2012-07-17 02:14:59
へっぽこぴーすけ @hpsuke

「つまり、守ってやるつもりはないということか」「あなたがいる。これ以上の安全地帯がどこにあります?」「買い被られたものだ」サークはため息をつく。「念のため聞く。ここでリッカを渡せば、外に逃がすつもりはあるか」「任務の中途放棄は認められていません。ほんと残念ですけどね」302

2012-07-17 02:15:30