ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/27

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
0
無茶 @notastetea

放送「ポニーテールで黒髪のワンピースを着た、20歳前後の女性の方。お探しの方がお待ちですので待合室までお越しください。」女「私・・・ですか?」男「探していましたよ」女「貴方、誰ですか?」男「貴方の運命の人です。」こうして現れた理想の人が、現在の妻である。 #twnovel

2012-07-27 00:11:54
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel アスファルトに立ち昇る陽炎の向こうから夜七時にさよならした隠れ鬼が駆けてくるので、子どもたちは皆それぞれの家に逃げ込んだ。鬼はひと夏の間に破られた約束の分だけ指切りして、ことさら勲章みたいに首飾りにしてぶら下げる。誰かがもういいよを言うまで首の重みは増してゆく。

2012-07-27 07:37:34
猫春雨@ものがたる屋 @nekoharusame

秒刻みでチェスを指す。一見無作為のようにも見えるが、知識と経験と大局観を総動員し、相手の指し手を何手先までも予測しているからこそ出来る妙技だ。私は早指しで百戦錬磨を誇っていた。しかし、ついに対戦相手がいなくなり、現在はこうして鏡に映った自分と指す日々を送っている。#twnovel

2012-07-27 10:20:08
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel ハザマさんは時の狭間に住んでいて、僕の人生の節目に現れてはアドバイスをくれる。そんな彼が、今日は土用の丑の日だから「う」のつく物を食べろと言う。知ってるよ、でもうなぎ食べるお金なんてないんだ。寂しくカップラーメンにお湯を注ぐ僕に彼は言った。「うどんもあっただろ」

2012-07-27 10:32:00
だりむくれ @darimukuretyu

これから何をしたらいいのか分からない、と祈った途端、神を名乗るヤツが現れた。ヤツは、何をしたらよいのか分かっているのは神だけですよ、と言った。なら教えてくれ、と私が彼に言うと、彼は、私が知っているのは私が何をしたらよいかだけです、では失礼、と言って去っていった。 #twnovel

2012-07-27 10:36:10
よしのちほ @chiho_yoshino

少し後ろめたく思いながら、設定温度をまた下げた。寒いくらいの部屋の中、ひざを抱えて座れば冷蔵庫の中にいる気分。隅っこに追いやられ、忘れられてる食材みたい。こうしていたら、少しは鮮度が保たれるかしら。賞味期限ギリギリの恋。夏が終わるまで、そばにいたいよ。せめて。 #twnovel

2012-07-27 11:57:55
すなお @Svnao

#twnovel 左手に違和感を覚えてふと見ると、小指が溶けていた。この暑さのせいだ。街中には元は人だった水溜まりが溢れている。海に行ったはいいが水に溶けてしまう人間も続出。脳が溶けているらしくその事態をどうこう感じる思考力はもう無い。タオルで顔の汗を拭くと、頬がどろりと落ちた。

2012-07-27 14:23:53
七歩 @naholograph

「丑の日だしうのつくもの食べないと」「うどんでしょ」「何でわかったの?あ、もしかして僕の事好…」「あんた香川県民だもん」「うん」「だからうどんに決まってる」「確かに」「香川っていい所?」「いい所だよ」「こ、今度連れてってよね」「うどん好きなんだね」「ばかっ!」#twnovel

2012-07-27 16:14:20
ちゃーち @churchdevil

限定図書館には本が一冊しかない。ように見える。実際は本棚に手を伸ばすと、見えない本が並んでいるのを確認する事ができる。限定図書館に置かれた本は全て“特定の一人にしか見えない本”。その人物が訪れるまで決して誰も中身を知ることが出来ない、たった一人のための本なのだ。 #twnovel

2012-07-27 17:24:35
layback @laybacks

男が丸めた雑誌を振りかざした瞬間声がした。家で病気の妻と腹を空かせた子供たちが私の帰りを待っている。どうか見逃してもらえないだろうか。蝿が手をすり合わせて懇願していた。とっとと行け。男は窓から飛び去ってゆく蝿の後ろ姿を見ながら故郷に残してきた妻子のことを考えた。 #twnovel

2012-07-27 19:01:59
悪鷹 @akutaka

玉はゼロ。穴に隠れる僕らは絶体絶命のピンチだ。どうする?と我らが参謀に目を向ける。「エントロピーを増大させる」眼鏡を押し上げ、クラスきっての秀才は言った。バカな僕らにはさっぱり理解できなかったがなんだか凄そうだ。彼の指示で穴から飛び出した僕らは勢いよく散った。 #twnovel

2012-07-27 19:30:59
すわぞ @suwazo

#twnovel 悲鳴をあげた。突然、ベビーベッドの横に白衣眼鏡の青年が現れたのだ。博士、と青年は呟く。「貴方の実験のせいで僕はあらゆる時をさ迷い続けてます。僕を救えるのは貴方だけなのに。やっと再会できたのに」そして青年の姿は消失する。私は私の赤ちゃんを見つめる。貴方が博士なの?

2012-07-27 22:05:13
tokoya @tokoya

#twnovel 男達は緊張した面持ちで、カップ麺を見詰めていた。タイマーが時を告げ。男の一人がフタを開けた。中から湯気と独特な香りが立ちのぼった。最初に麺を口にした男は、顔をしかめてこう言った。「なあ?やっぱり違うんじゃないか?ホントに古代人は麺に火薬を入れて食べていたのか?」

2012-07-27 22:12:24
舞村そうじ(RIMLAND) @radio_rimland

#twnovel 「下界で淋しくなったら吹きなさい」出立前に、銀のひとが呉れた土笛。半年後、孤独に耐えかね、お月さまの曲を奏でても、天の迎えは現れなかった。かわりに痩せ犬と痩せ猫、涙目をした裏町の子供らが、おずおずと寄ってきて、私の膝に取りすがった。淡く銀色に光り始めた私の膝に。

2012-07-27 22:37:40
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 俺の仕事は狙撃。二枚の写真と、商売道具をとった。最初のターゲットを狙う。美人なのに、残念だが。俺は急所を射抜いた。次の標的。こんな醜男と、ね。矢が当たった瞬間、ふたりはぶつかった。散らばった女の荷物を拾う男。誠実さに彼女は妙に惹かれ…。またひとつ、恋が生まれる。

2012-07-27 22:52:12
@K_Ichida

#twnovel 『光』がストライキをはじめた。視界がおかしくなった。あるはずのものが見えなかくなる。光の代表と協議し、交代制での休暇を認めた。光専用の保養地も用意した。もちろん保養地はブラックホールだ。見えないからと犯罪者が逃げ込んだが、二度と外に出ることはできなかった。

2012-07-27 23:30:38