ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/15

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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unkofree @unkofree

「空間に記録された『思い』というコンテンツが脳をデバイスとして出力・認識されたもの。それが霊魂です」教授の穏やかな声が甦る。 #twnovel 私は大学近くの牛丼屋、理化学棟3Fの男子トイレ等々で亡き教授の霊魂を探し続けている。教授、早く出てきてください。実証実験を始めましょう。

2012-08-15 01:25:24
おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 引き忘れたゴールライン。気づいたのは皆がスタートしてから千年が経ったときだ。だから誰も戻ってこないのだ、と呟きながら足元の空に白線を引き始める。それはちょうど飛行機雲と同じに見えるので、地上の博学がもしも生き残っているならば、文明の再来に小躍りしてしまうだろう。

2012-08-15 02:17:36
layback @laybacks

道化は王子のお守りを任される。これが面倒で仕方がない。ガキの相手なんかやってられるか。だが王にそう言うわけにもいかない。道化は窓辺でため息をつく。ねぇ遊ぼうよ。うるせぇ。ねぇねぇ。ひとりで遊んでろ。道化はすり寄る王子に鼻くそをつける。王子は玉子になって転がった。 #twnovel

2012-08-15 02:35:04
とおる7th @windcreator

影縫いを生業にしている。使うのは針だけ。目標の影を一刺し。精確に影の心臓を射抜けていれば、もう本体は動けない。後は、煮るなり焼くなり刺身にするなり愛玩するなり、なんでも自由だ。人間より小さく素早い獣を相手に修行して来た、もう外すことはない。後は、恋をするだけだ。 #twnovel

2012-08-15 03:39:35
すなお @Svnao

#twnovel 不意に歩き方が解らなくなった。たたらを踏む俺を他所に、影だけスタスタと先へ進んで行く。呆然と見守っていると、俺と離れた事に気付いたのか慌てて戻ってきて、今度はゆっくり歩き出す。その影の動きに添うように足を動かして俺も歩く。あれ、ずっとこうやって歩いてたんだっけ?

2012-08-15 09:05:50
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 海から兵士達があがってきた。大勢。みな、表情がなかった。いや、顔がなかったというべきか。目と鼻と口を備えていても、それは人の顔ではなかった。無言で山の方角へと行進し、消えて行った。あの中に、我々の誰かがいた。私であり、あなた方であり、祖父であり、孫でもある者が。

2012-08-15 09:08:33
黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel ネタのタネをまいてから数ヶ月。毎日欠かさず水をやり、時に肥料をやり、星の輝く夜空に向かって願ってみたりもしたが一向に芽は出ない。焼けるような陽射しの中今日も水やりに精を出すが芽の出る気配は微塵もない。土埃の舞う中、私は理解する。ネタのタネなんてなかったんだ。

2012-08-15 10:47:20
Takao Rival @takao_rival

#twnovel 博士は穴を見ていた。7年前、博士が見つけたその穴は深さが測れないブラックホールの様な穴で、今や核廃棄物を含む万能のゴミ箱と化していた。嫌な予感がする。と博士が呟いた時、空から博士の足元に何かが落ちてきた。7年前、穴を見つけた時に落ちた博士の携帯電話だった。☆

2012-08-15 10:51:10
すわぞ @suwazo

#twnovel 風の通り道に蜘蛛が糸をはる。一晩かけて、慎重に。ぴんとはりつめた銀糸を、三本。三本でよい。三本でじゅうぶん。明け方、小さな蝶が風とともに通り抜けようとする。風に置いていかれる。蝶のもがきに三本の糸が震える。蜘蛛はささやかな和音の響きを聴く。蝶もまた、それを聴く。

2012-08-15 12:21:38
miecha @miechorz

#twnovel 河童は愕然とした。水遊びをする子供達から尻子玉が奪えないのだ。去年までは水中で着物をするり脱がせば、そうでなければ足のほうから手を突っ込めば簡単に取れたのに、何故だ! 「プロ仕様の競泳用水着ですもの」川縁から女の嘲笑う声が聞こえた。

2012-08-15 13:37:18
みお @miobott

#twnovel 地面に膝を降ろし老女は静かに頭を垂れる。線香の香りに祈りの言葉。何時間経ったろう。後ろ頭に暖かさを感じ彼女は振り返る。見れば一羽、鳥が飛び去ったところだ。鳥は死んだ男の魂であるという。「貴方ですね」あれから67年、恥ずかしがり屋の夫を思い出し、彼女は微笑んだ。

2012-08-15 14:17:41
あいまい文庫 @aimaiZ

あいまい文庫の曖昧な物語は、数えきれない事実を踏み倒し見直し捨てられ拾い、もみくちゃにし、裏返されひっくりかえされ引き裂かれて、繕われ修復され呼び止められまた落とされたのちに、生み出される。その過程に混じる嘘は新生児の小指の爪よりもまだ小さいという。 #twnovel

2012-08-15 18:56:37
苔。 @waka_enkai

#twnovel 「レモネードを飲みに行こうか」彼が読書に飽きたときの決まり文句だった。私はうんと頷いて原色の図鑑をぱたんと閉じる。そして小銭を握って小さな夏の店へ行くのだ。あれからもう二十年。最近の彼の台詞はこうだ「シャンディ・ガフを飲みに行こうか」私は頷いてPCの電源を切る。

2012-08-15 20:10:05
@mimimdr

昔から、祖母の家に行くとおはぎを食べさせられる。戦時中は貧しくて食べられなかったからと、祖母は自分の憧れだった和菓子を子供に食べさせたがるのだ。あんこ嫌いだった私は苦痛だった。大人になりそうして食物を厭えるのもまた平和の証だと気付いた。今年も祖母とおはぎを食べる。#twnovel

2012-08-15 22:25:08
すわぞ @suwazo

#twnovel 籠屋に行く。鳥籠、虫籠に並んで、籠籠があった。籠を入れるための籠だという。確かにその籠の中には籠があった。「では中の籠は何の籠なんだ?」「とても危険な物です。何の籠でもない故、逆に何でも入れられる」店主が籠籠の中の籠を取り出した次の瞬間。私の姿は闇の中にあった。

2012-08-15 23:13:27
wacpre @wacpre

ミーンミンミン...余計に暑く感じてしまう。ミーンミンミン...蝉の声をかき消すようにかき氷を作る。ガリガリガリ...できあがったのを急いで食べる。シャリシャリシャリ... 頭がキンキンしたお陰で蝉の声も聞こえなくなった。しばらくするとまた。ミーンミンミン... #twnovel

2012-08-15 23:16:44
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel あ。お客さん、そのまま動かないで。この町の伝承に「鬼に影を10回踏まれると命を落とす」というものがありまして。この町にとっての鬼とは部外者、すなわち観光客のあなたです。今あなたが踏んでいる私の影から足を離すとカウントされてしまう。そう10回目なんです。私。

2012-08-15 23:33:40