- chitanda_L
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そして、おそらくは一番の成果をもたらした、奉太郎の裏交渉。4人の働きが見事に実を結び、古典部は危機を乗り越えました。千反田さんが言うように、期待以上の成果です。
2012-08-18 23:35:07期待という言葉を聞いて、奉太郎は田名辺先輩のことを思い返します。あのとき里志は既に立ち去っていましたから、おそらく彼は田名辺先輩の話を聞いてはいないでしょう。そのことを知るのは、奉太郎のみです。
2012-08-18 23:35:40田名辺先輩は陸山会長の才能に期待していました。しかし、陸山会長にとって、漫画描きは1年限りの遊びでした。それがやるせなく、もったいないとさえ思い、田名辺先輩は自分の抱いた絶望と期待を、今回の事件に託したのです。
2012-08-18 23:36:06陸山会長が『クドリャフカの順番』を読んでさえいれば、暗号は解けるはずです。しかし、陸山会長はメッセージに気づいていないと、田名辺先輩は言いました。陸山会長は『クドリャフカの順番』を読んでおらず、思いも伝わらなかったと。
2012-08-18 23:36:55そこであの閉会式の「おつかれ」です。あれはどういう意味だったでしょうか。普通に考えれば、あれは田名辺先輩がやっていたことに気づいていたという意味でしょう。では、メッセージは陸山会長に伝わっていたのでしょうか。
2012-08-18 23:37:16……私は、伝わっていないと考えています。もし伝わっているなら、田名辺先輩のやるせない思いにも気づくはずですが、それならあんな屈託ない笑顔は向けないはずです。それとも気づいていてあんな笑顔を向けるほど、陸山会長の性格は極悪なのでしょうか。……可能性は、まあ、ありますけど。
2012-08-18 23:37:53あの笑顔はおそらく「田名辺先輩が何かやっていることには気づいていたけど、『クドリャフカの順番』を読んでいなかったために、彼の伝えようとするメッセージには気づけなかった」という意味なのでしょうね。たぶん、文化祭を盛り上げるためのいたずら程度にしか考えていないのではないでしょうか。
2012-08-18 23:38:40そしてメッセージが伝わっていないことが、『クドリャフカの順番』の原作を読んでもいないことが改めてわかったからこそ、田名辺先輩はあの笑顔に対して顔を曇らせたのだと思います。読んでいない。それはつまり、今後も漫画を描く気はないということですから。
2012-08-18 23:39:12対して奉太郎はどうでしょう。誰かに期待をするほど、彼は何かに執着していません。田名辺先輩の気持ちも、表面的にしかわからないでしょう。いつか彼に執着するものができたとき、彼はどのような屈託を抱えるでしょうか。それは彼の省エネ主義すら揺るがすものとなりえるでしょうか。
2012-08-18 23:40:12今回の話で出てきた様々な期待の話。どれも自分の近しい相手に対して期待を抱いています。しかしその距離感と、期待に対するスタンスは様々です。
2012-08-18 23:41:08里志は自分が何の才能も持ち合わせていないと考えていて、そして似たような立場にいると思っていた奉太郎が、自分には持ちえない特別な才能を有しているかもしれないことに気づかされて、複雑な思いを抱きました。
2012-08-18 23:41:38しかし彼は「こだわらない」ために、自分の立ち位置も不確かなまま、十文字事件で奉太郎に勝負を挑みました。これは河内先輩や田名辺先輩の抱く屈託とは、明らかに違う種類のものです。彼のこだわりのなさは、たぶん勝負自体に向かない類のものなのでしょうね。
2012-08-18 23:42:04一方、河内先輩は自分の得意なジャンル、こだわりのものがはっきりしています。漫画を描くことです。得意な分野で、自分に自信もあったでしょう。だからこそ、認められないわけです。友達との差も、その差に諦めてしまうことも、諦めから友達に期待を寄せてしまうことも。
2012-08-18 23:42:30彼女が何も持ち合わせていなかったのなら、また違った屈託を抱えていたかもしれません。でも、河内先輩には実力がありました。それは彼女にとってよかったのか、それとも。……再び、友達と向き合える日はくるのでしょうか。
2012-08-18 23:43:00そして、田名辺先輩。彼も漫画描きにこだわりを持っている人間です。ただ、彼には特別な才能はないみたいです。特別どころか、はっきり下手だと断言しています。漫画は好きなのでしょう。描けるものなら描きたいとさえ思っているでしょう。しかしそれに見合う腕を、彼は持ち合わせていません。
2012-08-18 23:43:37陸山会長はその腕を、才能を持ち合わせていました。だからこそ彼は期待します。しかし彼が望んでも得られない才能を持っている彼には、意欲がありません。そんな才能なんて簡単に放り投げてしまいます。田名辺先輩は、もしかしたら里志よりも、河内先輩よりも傷ついたかもしれません。
2012-08-18 23:44:03里志や河内先輩の葛藤は、自分の才能の有無と、それに対する友人との距離感が問題です。しかし田名辺先輩の場合、才能の有無より、陸山会長個人の才能に対してのこだわりが大きくて、簡単に払拭できる問題ではないと思います。諦めた末に期待を抱いたのに、その期待さえ諦めなければならないとしたら。
2012-08-18 23:44:38「期待」というテーマで、様々な形の人間模様が描かれた今回の話。表向きのテーマは「期待」ですが、裏のテーマは「才能」だと思います。この才能に関しては、文化祭前から丁寧に紡がれてきたテーマでもあるので、前の話を観返してみると、新たな発見があるかもしれません。
2012-08-18 23:45:17(たとえば奉太郎の才能の話だったり、里志の才能の話だったり、摩耶花の絵に対するこだわりだったり、千反田さんが奉太郎に寄せる期待の話だったり)
2012-08-18 23:45:45千反田さんは、奉太郎に対して期待を寄せています。いろんなことに好奇心を抱く反面、謎を自分では解き明かせないことが多々あり、一方で奉太郎がそれを見事に解き明かしてしまうために、彼女の中で奉太郎ははっきり特別な存在となっています。しかし彼女は奉太郎に激しい嫉妬を抱きません。
2012-08-18 23:46:55これは彼女が、自分にできること・できないことを、しっかり見つめているからだと考えられます。里志が自分の才能を諦めているのに対して、彼女は事実を事実としてしっかり受け止め、その上で自分に何ができるかを考えている節があります。それは彼女の行動力の高さに表れていると思います。
2012-08-18 23:47:34いえ、里志も自己をよく見つめていると思いますけど、千反田さんの見つめ方は、もう少し大局的なものです。おそらく今後描かれると思いますけど。
2012-08-18 23:49:15