- chitanda_L
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ヘリが好きだという発言は、生徒に対して事情をごまかすためのものでしょう。おそらくは知人と思われる(もしかしたら親しい間柄かもしれない)人間の命がかかっていますから、軽々しくは説明できなかったのでしょうね。その表情は笑っていましたが、果たして内心はどうだったのでしょうか。
2012-08-25 22:59:45内心はわかりません。ヘリが飛んだといっても、助かるかどうかはまた別の話です。安堵はあったでしょう。しかし心配の念がそれだけで消えるものではありません。それでも奉太郎の記憶の中では、小木先生は笑っていました。教師として、生徒に暗い顔を見せるわけにはいかなかったのでしょうか。
2012-08-25 23:00:102人の遭難者は、遺体で発見されたそうです。ヘリは飛びました。連峰は晴れていました。しかし結果は……。心は、晴れなかったかもしれません。
2012-08-25 23:00:45帰り道、千反田さんが奉太郎に訊ねます。「どうして気になったんですか」。たしかにいつもの奉太郎らしくはありません。奉太郎自身も、いつもなら省エネを優先するので、らしくないかもしれないと考えたみたいです。しかし千反田さんの質問は違う意味合いだったみたいですね。
2012-08-25 23:01:08「折木さんは、他の人のためにはいろいろと力を尽くします。わたしも、何度も助けてもらいました。でも折木さんって、自分のことには無頓着ですよね。それなのに、どうして今日だけは自分の疑問を調べたのか。……すみません、わたし、どうしても気になるんです」原作からそのまま引用しました。
2012-08-25 23:01:37これは珍しい場面ですね。千反田さんは一見わかりやすそうで、その実、内心はなかなかはっきりと見えてこない人物です。その千反田さんが、奉太郎をどのように見ているのか、どのように見えているのか、言葉ではっきりと説明しているのです。重要な台詞だと思います。
2012-08-25 23:02:20そして奉太郎。彼はたしかに他人に対して力を尽くします。これまでの話でも、どこか心の根っこでは他人に対して非情になりきれないような、人の良さを感じさせる場面が多々ありました。一方で、彼は自分のことにはあまり頓着しません。執着が薄い気がします。
2012-08-25 23:03:19それは省エネ主義であるがゆえなのかもしれません。何かに執着することは多大なエネルギーを使いますから。では、他人に対してはどうして力を尽くすのか。そこには省エネ主義は働かないのか。……そういうわけではないと思います。
2012-08-25 23:03:53肉体的な浪費だけではなく、精神的な浪費も省エネの範疇には含まれます。彼の心根が優しく、核の温かい人間であるがゆえに、誰かを見捨てることにどこかでためらいを覚えるのでしょう。ただし、それは自分が気づける範囲での話です。省エネですから、自分の守備範囲を広げたりはしません。
2012-08-25 23:05:13しかし、物事に気づいてしまったら、視界に入ってしまったら、なかなか放ってはおけなくなるのです。「夢見が悪い」とか「精神衛生上よろしくない」とか、精神的な負担を和らげるために、誰かに力を尽くすのでしょうね。これも彼にとっては省エネの一環なのだと思います。
2012-08-25 23:06:35(端から見てると全然省エネには見えません。彼の省エネって、いろんな意味で変ですね。しかし、そこが素敵です。魅力的です。ほうたるかわいいよほうたる)
2012-08-25 23:08:01そしてそれは今回の話でも同じです。奉太郎は、小木先生の事情に気づいてしまいました。もし予想通りなら、うかつに「小木はヘリ好き」なんて言えません。今後会うことはないかもしれませんが、それでもそこに誤解や間違いがあるなら気をつけないと、小木先生に悪いと思ったのでしょう。
2012-08-25 23:10:20今回の話は、細かい変更点はありましたけど、それほど原作から大きく変更した部分はありませんでした。アニメオリジナルの部分は図書館デートくらいでしょうか。ただ、少し心情描写が難しい回だった気がします。
2012-08-25 23:12:42千反田さんに相槌を打たせてしまったために(「と、言いますと」や「救難……」という言葉をつぶやかせてしまったために)、奉太郎の言葉を聞いて初めて事情に気づいたかのように映るのです。しかし、奉太郎も内心で言っていましたが、千反田さんはある程度事情を察していたはずです。
2012-08-25 23:14:27たぶんあの場面は、「救難」という言葉を聞いて、改めてショックを受ける様子を表したかったのだと思いますが、少しちぐはぐな描写になってしまった印象を受けました。
2012-08-25 23:15:03好奇心発動後の千反田さんの顔は、いつもなら楽しそうな表情に変わるのですが、「遭難」という言葉を受けてからは、楽しげな色が消えました。だいぶ気遣うような様子を見せています。千反田えるという人間の性質を、よく表しています。
2012-08-25 23:15:56これは11話のラストで奉太郎を気遣っていた場面にも通じるものです。彼女は好奇心を度々発現させながらも、ちゃんと彼女なりに相手のことを見ようとしているのです。奉太郎の人の良さとはまた違った、千反田さんの誠実な一面がきちんと描かれていました。
2012-08-25 23:17:32いろいろ言いましたけど、うまくアニメの中に落とし込んでいたと思います。とても落ち着いた回でしたね。地の文をそのまま読むような奉太郎のモノローグは、もしかして3話以来でしょうか。ラストの“借り”が、後の話にどうつながるか、気になります。
2012-08-25 23:18:09それでは、細かい話。今回は単行本未収録で、原作との違いもいまいちわからない方が多いと思いますから、原作からの変更点や補足を中心に挙げていきます。
2012-08-25 23:26:46細かい話その1。植物にクラシックを聴かせると成長が促進されるという話がありますが、今のところ科学的に証明されているわけではありません。しかし、別に損をするわけではありませんから、試してみてもいいかもしれません。たぶん千反田家でも、試しにやってみただけなのでしょう。最初は。
2012-08-25 23:29:03