「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#5
(親愛なる読者の皆さんへ:本日のリアルタイム連載中、140文字成型する中で担当ほんやく者が「ザ・ヴァーティゴ」とすべき所を誤って「ザ・」を削り取ってしまいました。彼はザ・ヴァーティゴ=サンによってケジメされ、頭のう指数も下がったので、これ以上の更新が不可能と判断しアイキャッチだ)
2012-09-02 00:41:32過剰なまでのクナイダート・ベルトを全身に巻いた刺々しいシルエットは、暗く病的な攻撃性と孤立を連想させる。黒灰色の装束を纏った若いニンジャが、キョート城内を駆け上っていた。先刻まで、彼はシャドーギルドの一員であり侵入者を狩る立場にあったが、叛逆罪を宣告され今では追われる側だ。 26
2012-09-02 21:44:57「ダッテメッコラー!」階段の踊り場に陣取ったクローンヤクザたちが、一斉にチャカ・ガンを構えて彼を迎え撃つ。「イヤーッ!」シャドウウィーヴは壁を蹴って三角飛びで銃弾を回避しながら、ダートを連続で投げ放つ。狙いは喉元。「グワーッ!」ワザマエ!三体のヤクザがソクシし道を空ける。 27
2012-09-02 21:52:44彼は後ろ向きに倒れたヤクザの胸の上に着地すると、前転しながら素早く繊細な動きでダートを引き抜き、ベルトに刺し直しながら駆ける。一撃必殺のシャドウピン・ジツを持つ彼にとっては、クナイダートの残弾数こそが生命線だからだ。それでもニンジャの追っ手を撒くために既に三割を失っている。 28
2012-09-02 21:57:48立ち止まって苦悩する暇は無い。階下からは追っ手の気配が迫る。過酷な木人拳トレーニングでカラテを高めたとはいえ、多数のニンジャを始末するほどの力は彼には無い……足留めが精一杯だ。囲んで棒で叩かれ爆発四散する不名誉な死をありありと想像しながら、シャドウウィーヴは駆け続けた。 29
2012-09-02 22:08:31(((状況は何も変わっていない!あの夜のままだ!)))シャドウウィーヴは片手で頭髪を乱暴に鷲づかみしながら、迷宮じみた廊下を駆け抜ける。(((いや、それよりも遥かに悪い!マスター!マスター!失われてしまった!美しきものや、崇高なものや、優しきものは、全て!未来は暗黒!))) 30
2012-09-02 22:17:01ショウジ戸を突き破ってカワラ屋根を走る。遥か下の中庭ではデスドレインとパーガトリーが松の木を飛び渡り、暗黒物質とカラテミサイルをぶつけ合っている。何が起こっているのかは、もうどうでもよかった。ネクサスからの通信も拒絶している。結局のところ、派閥争いの延長に過ぎないのだから。 31
2012-09-02 22:23:35シャドウウィーヴは天守閣を睨む。そして滅び行く下界を。最後に、右斜め前方のステンドグラスを突き破り、ワインレッド色の絨毯が敷かれた広大な晩餐の間に着地した。縦長の大テーブルを挟んだ反対側には、天守閣を目指していた赤黒いニンジャ装束の男が、今しがた扉を蹴破ったところだった。 32
2012-09-02 22:42:05直前まで、彼の選択肢はふたつあった。ひとつはキョート城からの逃亡。だがこの男……すなわち師父の仇と遭遇を果たしたことで、そちらの選択肢は却下された。この男が現れさえしなければ。いま自分の側にはマスターが居たのだ。「……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、シャドウウィーヴです」 33
2012-09-02 22:59:25「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。聞き覚えのある名だ」満身創痍の死神は敵と向かい合い、ジュー・ジツを構えた。「かけがえの無い人を、貴様に殺された。大切なことを教わる前に」シャドウウィーヴはクナイを抜いて言った。「ならばアノヨで師と再会するがいい」ニンジャスレイヤーは言った。 34
2012-09-02 23:09:37「イヤーッ!」シャドウウィーヴは怒りに衝き動かされるままクナイダートを放った!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは連続側転からの開脚ジャンプで回避し、逆に五連発のスリケンを投げ放つ!「イヤーッ!」シャドウウィーヴは側転回避しながら、敵の落下地点……その影を狙ってクナイを投擲! 35
2012-09-02 23:18:09だが「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは着地寸前に回転しながら素早く腕を伸ばし、ブレーサーでダートを受け流す!鋭角の刃物は斜め後方の壁に向かって飛んで行き、そこに掛けられた油絵……ニンジャが天井裏から竹筒で毒液を落とそうとする、「最後の晩餐」の真実を描いた絵画に突き刺さった。 36
2012-09-02 23:25:58ニンジャスレイヤーは敵のジツを見抜いている。厄介なジツだ。あの時まとめてスレイし損ねた禍根が、ここへきて響くとは。「イヤーッ!」着地から0コンマ3秒、ニンジャスレイヤーは電撃的なトビゲリを真正面から繰り出す!「グワーッ!?」弾き飛ばされ、壁に叩きつけられるシャドウウィーヴ! 37
2012-09-02 23:34:38一撃で敵の心臓を破壊すべく、ニンジャスレイヤーは駆け込み、ポン・パンチを叩き込む!「イヤーッ!」……だがその腕を、思いがけぬ伏兵が掴んだ。ウカツ!いつの間にか、シャドウウィーヴの影の中から人型が編み上げられ、墨絵の如き漆黒のブラックドラゴンが現れたのだ!「オヌシは死んだ筈」 38
2012-09-02 23:45:48『イヤーッ!』ジツで編まれたブラックドラゴンはリバースイポン背負いを繰り出す。ナムアミダブツ!これは江戸時代に禁止されたジュー・ジツの禁じ手であり、腕を折りながら敵を投げる残虐殺法だ!「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは投げられる直前に自らタンブリングし、辛うじてこれを回避! 39
2012-09-02 23:54:24「イヤーッ!」『イヤーッ!』「イヤーッ!」『イヤーッ!』両者は大テーブルを乗り越えながら、激しい近接カラテの応酬を続ける。その間にシャドウウィーヴは、トビゲリのダメージから体勢を立て直し、影を狙ってクナイを投げ放つ!「死者に敬意を払え、ニンジャスレイヤー=サン!イヤーッ!」 40
2012-09-03 00:10:49「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは間一髪のブリッジで影の形を変え、シャドウピン・ジツを回避!だが致命的な隙が生まれ、ブラックドラゴンの痛烈なカラテキックが連続でニンジャスレイヤーを襲った!『イヤーッ!』「グワーッ!」『イヤーッ!』「グワーッ!」『イヤーッ!』「グワーッ!」 41
2012-09-03 00:20:17後ろによろめくニンジャスレイヤー。『イイイヤアアアーッ!』ブラックドラゴンの手に影のヤリが出現し、勢いを乗せた一撃を生み出すために巧みな回転を始める。距離を取ったシャドウウィーヴも、両手に十本のクナイを構え、抜かりなく援護の姿勢を見せた。ナムサン!恐るべきコンビネーション! 42
2012-09-03 00:31:52そしてついに、ニンジャスレイヤーの心臓目掛けてヤリが突き出される!同時に、シャドウウィーヴもクナイ・ダートを投げ放つ!「イヤーッ!」ナムアミダブツ!だがニンジャスレイヤーは僅かに身体をスライドさせ、ヤリを脇に抱え込む形で咄嗟にホールドすると、渾身の力を込めた!「イヤーッ!」 43
2012-09-03 00:49:07ニンジャテコの原理で持ち上げられたブラックドラゴンの身体は、そのままニンジャスレイヤーの周囲を半周し、シャドウウィーヴの放ったクナイがその背中に突き刺さった。『グワーッ!』「マスター!」実戦慣れしていないシャドウウィーヴの想像力を、ニンジャスレイヤーのカラテが上回ったのだ! 44
2012-09-03 01:00:58ニンジャスレイヤーはそのまま影の竜を放り捨て、静かな怒りに満ちた、葬列の如く厳粛な足取りでレイジへと迫る。「忍」「殺」メンポからは、ジゴクめいた蒸気が噴出していた。シャドウウィーヴはバック転回避し、仕切り直しをはかるが……動けない!「モータルに敬意を払え」死神が低く言った。 45
2012-09-03 01:14:43「ああ、ああ!」シャドウウィーヴはジゴクの化身のごときニンジャを前に、彫像のように固まり、涙を流し嗚咽した。計り知れぬ恐怖に打たれたか?……否!自らの暗い影から生み出されたブラックドラゴン……その背に深々と突き刺さった何本ものクナイが、彼自身をシャドウピンしていたのである! 46
2012-09-03 01:23:05