甲状腺検査の結果を読むために考えたこと、調べたこといろいろ

非公開でまとめていたものですが、ようやく時間ができたので情報を補足して公開しました。 続編もご覧いただけると嬉しいです。 「甲状腺検査の結果を読むために考えたこと、調べたこといろいろ(その2)」 http://togetter.com/li/400901
82
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 ありがとうございます。中国の論文で調査対象となったのは結節のみなんですね。嚢胞も調べてくれてたらよかったのに、と思っちゃうのはわがままでしょうかw

2012-08-28 18:37:06
nao @parasite2006

@chiba_donguri おっしゃる通りです。嚢胞をチェックしていないのはウィークポイントですが、1地域1938人〜2854人と標本数も多いので、一定の説得力はあると思います。現在他の地域で同様の傾向を確認する論文が出ていないか探しているところです(おそらくあるはず)

2012-08-28 18:48:06
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 日本人成人のヨウ素摂取量と甲状腺機能との関連について http://t.co/3T99gPqq こゆのもあります。

2012-08-28 18:47:31
nao @parasite2006

@chiba_donguri なるほど、この資料で見る限り、日本人の状況は中国の調査の3地域のうち中間の「やや過剰摂取気味(more than adequate)」の地域に相当すると言えそうですね。

2012-08-28 18:53:55
nao @parasite2006

@chiba_donguri WHOのヨード欠乏症の世界地図(6-12歳のこどもの尿中ヨウ素濃度の中央値で色分け)で日本と韓国は2003年、2007年の2回とも「データなし」の空白地帯。両国とも海産物をよく食べる習慣があり、中国のような内陸部の極端なヨウ素欠乏地域もないので(続く

2012-08-28 19:14:41
nao @parasite2006

@chiba_donguri (続き)ヨード欠乏症世界地図の上では尿中ヨウ素濃度200-299 μg/l の米国や中国大陸と同じ色が塗られることになると考えてさしつかえなさそう。

2012-08-28 19:19:31
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 そうですね。厚労省の資料でも(東京の学童)中央値は 282 µg/Lだったそうなので。 http://t.co/CBdkJQcW 昨日の昆布地図では東京と福島では6ポイントほど差があるようですが、そんなに大きな差ではないように感じます。

2012-08-28 19:29:07
nao @parasite2006

@chiba_donguri その意味で、乳腺の超音波検査(乳房のしこりが良性か悪性かを判定http://t.co/1hj2g5cOを受けた韓国人女性を対象に甲状腺の超音波検査を同時に行い異常所見の発生率を調べた論文http://t.co/PtB3vtkh は参考になります

2012-08-28 19:36:26
nao @parasite2006

@chiba_donguri 年齢15-77歳で平均年齢42.6歳の女性2079人(甲状腺疾患の手術歴も検査値異常の前歴もない)を調べて異常なし(58%)と甲状腺癌(2.5%)を除いた39.5%に異常所見(結節19.8%、嚢胞14%、甲状腺炎5.1%、石灰化0.2%)

2012-08-28 19:50:30

(↑この韓国の論文でどの程度以上の大きさの病変を検出していたかは気になるところです。この論文自体では病変の大きさにほとんど触れていませんが、同じ診断装置を使った2002年発表の前報では検出した結節の大きさを3-28 mmと記載していますので、後でご紹介する日本の人間ドックの検診結果の論文とさして変わらない検査が行われていたものと考えられます)

千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 ありがとうございます。韓国のデータは参考になりますね。

2012-08-28 19:59:15
nao @parasite2006

@chiba_donguri わたしもこの論文を見て「何だ、全く自覚症状のない人でもこの程度は出ているものなのか」と思いました(早野先生が以前教えて下さった日本の人間ドック検診での検出率も確か似たような傾向だったかと)。あとは同じ国の大人と子供でどの程度検出率に差がつくかだけ。

2012-08-28 20:09:11

(↑次の2つの日本語論文のことです。どちらも同じグループによる研究。

  1. 宮崎ら「人間ドック全受診者に対する甲状腺超音波健診の結果と、結節性病変の経年的変化」人間ドック 2011;25:789-797
  2. 志村浩己「日本における甲状腺腫瘍の頻度と経過」日本甲状腺学会雑誌 2010;1:109-113

論文1はこちら http://bit.ly/W2ktnm から掲載雑誌1号まるごとで無料ダウンロードできます。
論文2は医療関係者向け会員制有料サイト、メディカルオンラインで公開なのが残念。目次 http://t.co/R4cz6xjM をみると診療ガイドラインの特集があったりして役に立ちそうな情報満載なので、ガイドライン部分だけでもぜひ学会には無料公開してほしいものです。

論文1では、5年間(2004年4月-2009年3月)に山梨大学医学部付属病院の人間ドックを受診した成人男女21856名(年齢20-93歳、平均49.7歳)における甲状腺超音波検診の異常所見発見率(前年の論文2によれば充実性腫瘤=結節、嚢胞とも直径3 mm以上を検出と判定)を充実性腫瘤22.8%(男性18.1%、女性29.1%)、嚢胞27.6%(男性23.2%、女性33.3%)と報告。また発見率が年齢とともに上昇する様子をグラフで見ることもできます。
論文2では過去の文献に報告されている日本人における甲状腺の結節性病変の触診と超音波検査による発見率を比較し、超音波検査の発見率は触診の約12倍と報告しています)

nao @parasite2006

@chiba_donguri 甲状腺の検査結果の論文を読む時には、WHOのヨード欠乏症の世界地図か単発の尿中ヨウ素濃度のデータを横において読むべき。「嚢胞結節の検出率が日本より低い」という論文の中には、ヨード欠乏地域に分類される所のデータだったり、検査法が触診だったりしたものも

2012-08-28 20:20:00

(「読んでみたら検査法が触診だった」論文とはこれのことです http://bit.ly/Ok6d6g
Chiesa F, et al. Thyroid disease in northern Italian children born around the time of the Chernobyl nuclear accident. Ann Oncol 2004;15:1842-1846.

チェルノブイリ事故から10周年の1996/1997年に、事故後に雨とともに降下した放射性物質による低線量の放射能汚染が認められた北イタリアのミラノ周辺に住む1985-1986年生まれの学童3949人の甲状腺を検査(チェルノブイリ事故後のヨーロッパの汚染地図はIAEAの2006年版英文事故報告書 http://bit.ly/gYUlqu のp.24で見ることができます。拡大するとイタリア北部にドイツ南部とほぼ同程度のオレンジ色の汚染地域が広がっているのがわかりますが、イタリアの道路地図 http://bit.ly/Tn7V3H と見比べるとミラノはこのオレンジ色の範囲にぎりぎりで入りそうです。サルジニア島の北にあるコルシカ島はフランス領なのでイタリアの地図には入りません)。
最初に触診(本来WHOが規定したヨード欠乏症のスクリーニング法で甲状腺肥大の発見が第1の目的。イタリアはフランス、ベルギーとならぶ中央ヨーロッパのヨード欠乏地域の1つ)を行い、触知可能な結節が認められた1%(30名)についてさらに超音波検査を実施。その結果は腺腫1、甲状舌管嚢胞1、甲状腺嚢胞4、甲状腺炎4、甲状腺の片方のみの肥大20。甲状腺疾患の有病率は非汚染地域と比較しても差なし。5年後に予定した再検査の参加者は(1回目の受検者全員の親に再検査案内を郵送し再検査参加を勧めたものの)わずか5 名で全員陰性。
触診と超音波検査による甲状腺異常検出率はざっと1桁違うので、最初から全員を超音波で検査していれば検出率はもっと違っていた可能性が。この研究で一次検査が触診で行われたのは、考察の説明によれば「両親が機器による検査を望まなかったから」だそうです)

nao @parasite2006

@chiba_donguri 検査法が超音波であっても、大きさがどのくらい以上のものを検出判定しているかという判定基準をきちんと確認しないと(だから面倒でも高くついても本文まで読まないと足元をすくわれる。抄録にだまされたこと数知れず)。判定基準が違えば検出率も当然影響を受けます。

2012-08-28 20:27:23
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 はい、私もそう思います。やはり同精度で行われる福島県外の子供の甲状腺検査の意味は大きいですね。3カ所で4500人規模だそうですが、検査する場所にどこを選ぶのか気になっています。

2012-08-28 20:30:11
nao @parasite2006

@chiba_donguri 対照地域の選定は重要ですね。一日も早く開始してほしいという意見はもっともですが、比較の結果が真に意義のあるものになるかどうかのカギを握るのが妥当な対照地域を設定できるかどうかです。福島県のヨウ素摂取状況が日本の中どころというのはその意味でも好都合。

2012-08-28 20:44:08
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 福島から遠い地域を選ぶと言うことなので、北海道と沖縄は堅いと思うんですが、北海道は昆布摂取量が少ないのが気になりますね。続報を待ちたいと思います。

2012-08-28 20:50:44
nao @parasite2006

@chiba_donguri 沖縄は色分けも同じだし地理的条件でも確定、北海道も昆布消費量の違いの補正を入れればおそらく使えるでしょうから参考としてとっておく(生物統計家は対策をもっているはず)。色分けとしては広島と長崎がたまたま福島と同程度なので、もう1カ所はここから取るとか。

2012-08-28 21:01:56
nao @parasite2006

@chiba_donguri すみません、ちょっとこれから手が離せなくなるのであとはまたあした。

2012-08-28 21:05:14
千葉どんぐり@休眠中 @chiba_donguri

@parasite2006 広島長崎にしてしまうと、福島と同様の結果が出ても、(原爆の)被ばくの影響で遺伝子に悪影響が出ている証拠だと言い出す人が絶対に出てくるので、あまり比較対象としてはよくないような気がします。 今日はいろいろありがとうございました。

2012-08-28 21:08:04

韓国での甲状腺超音波検査事情とその背景がよくわかるまとめ。上でご紹介したこの論文 http://t.co/PtB3vtkh を初めて読んだとき、一体どうして乳癌の検査と一緒にわざわざ甲状腺まで検査するのか、医師がそんな検査を本当に指示しているのかと思ってすっかり面食らっていたのですが、韓国では乳房と甲状腺をワンセットでチェックする超音波検査が民間の検診として盛んに行われていることをこのまとめを読んで初めて知りました。
特に厚生労働省の「第12回がん対策推進協議会議事次第」(2010/3/11開催)http://bit.ly/Ok3KJ2 に提出された「韓国のがん検診の現状調査報告」http://bit.ly/Ok4gGM という資料は上の論文の背景情報として必読。

まとめ 韓国の甲状腺癌罹患率が、ガン保険と検診のセットで上がった件 見つかったら保険料が降りた。←今は保険会社がストップかけた。 21862 pv 222 13 users 16

第2部