10~20mSvの胎内被曝で相対リスクが1.47になることを示した「オックスフォード小児癌調査」

オックスフォード小児癌調査は、アリス・スチュワート博士が1956年にLancetに投稿して以来様々な追従調査を経て価値を確立してきた研究であり、低線量放射線の発癌リスクを考える上で大変重要な知見と考えます。 「100mSvまでなら胎児には影響が出ない」あるいは「子供には放射線をはね返す力がある」といった発言は、全く信用できない事がわかります。
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スカルライド @skull_ride

(21)スチュワート博士が胎内被曝として取り上げたのはX線撮影を用いて骨盤の大きさを測る骨盤計測法であった。その診察で被曝する線量は1~2ラドの範囲であり、その他いくつかのX線撮影や蛍光透視法を用いた診察の被曝線量に比べて小さいものだった。

2012-10-15 12:53:17
スカルライド @skull_ride

(22)スチュワートの研究に対して数多くの批判が浴びせられた。しかしスチュワートの研究結果を追認した大規模な研究も発表され、疑ってかかっていた研究者の多くも着実に小さな放射線被曝によって幼児期のガンや白血病が高率で増加することを認めるようになった。

2012-10-15 12:53:29
スカルライド @skull_ride

(23)スチュワート博士のやり方の基本は、幼児期にガン・白血病で死亡した子供と、その子供と年齢・性別・地域が一致するような健康な子供との間で、胎内被曝歴を比較することであった。

2012-10-15 12:53:43
スカルライド @skull_ride

(24)スチュワート研究に対する初期の批判は主として次の二つであった。 ①白血病の子供を持つ母親は、健康な子供を持つ母親に比べて放射線被曝の経験を過剰記憶しやすい。 ②被曝した母親の中には元々何らかの体質で病気をもった者がおり、彼女らの子供がガン・白血病になる高い危険度をもつ。

2012-10-15 12:54:00
スカルライド @skull_ride

(25)上記の批判は十分な注意を払って検討され、そして現在では批判に妥当性のないことが広く認められている。スチュワートの研究が、妊娠中の医療被曝によるガン・白血病を立証したことを疑う科学者はほとんどいない。

2012-10-15 12:54:13
スカルライド @skull_ride

(26)スチュワート博士自身、そしてマクマホン(MacMahon, 1962)は母親の放射線被曝の「過剰記憶」の問題について研究している。そして得られた結論が、そのような過剰記憶によって説明されるものではない事を明らかにした。

2012-10-15 12:54:27
スカルライド @skull_ride

(27)「体質的」なことが原因ではないかとする疑問は、後のスチュワートとニール(Kneal, 1970)の研究によって一掃されることになる。彼らの研究では、子供のガン・白血病危険度は、妊娠中のX線撮影のフィルムの枚数で調べられている。

2012-10-15 12:54:42
スカルライド @skull_ride

(28)スチュワートとニールの指摘によれば、撮られた枚数で母親をグループに分けたところ、子供のガン・白血病危険度は枚数が増えると大きくなるという結果が得られた。体質原因説にどんな立派な論理があったとしても、この研究結果一つで完全に粉砕されるだろう。

2012-10-15 12:54:54

広島長崎の疫学データとの解離をどう解釈するのか

スカルライド @skull_ride

(29)スチュワートの成果を受け入れない人々は、広島長崎の胎内被曝データをいつも引き合いに出す。加藤(Kato, 1971)によるこのデータ(乳児死亡の1ラド当り過剰率0.54%)について検討してみよう。

2012-10-15 12:55:07
スカルライド @skull_ride

(30)他の条件がみな同じであれば、加藤の研究のような発症追跡調査の方が、スチュワート研究のような履歴比較調査よりも信頼できると私は考えている。しかしながらこれから見ていくように、他の条件がはっきり違うのである。

2012-10-15 12:55:18
スカルライド @skull_ride

(31)スチュワートの成果は何百という小児ガンに基づいていた。これに対し加藤の場合は8件のガンだけであるというだけでなく、科学的に十分検討しておかなければならない、混乱を招くような重要な要因が含まれている。

2012-10-15 12:55:30
スカルライド @skull_ride

(32)広島長崎における、1ラド当り50%というスチュワートの値に基づく小児ガン死の期待値は6.014件となる。胚芽腫でない大人型のガン死では期待値は1.925件となる。よって広島長崎の胎内被曝者集団に期待されるガン死の総数は6.014+1.925=7.94件である。

2012-10-15 12:55:43
スカルライド @skull_ride

(33)加藤の報告によれば、被曝線量がわかっている胎内被曝者から2件のガン死があった。胎内被曝により小児ガン死の危険度が1ラド当り50%増加するというスチュワートの評価に従えば、約6件のガン死が「見落とされている」ことになる。

2012-10-15 12:55:55
スカルライド @skull_ride

(34)加藤の研究対象とした集団に期待されるガン死数7.94件のうち、高被曝線量群(吸収線量146ラド)の寄与分は3.361件であった。次に大きな被曝線量群(36ラド)の寄与分は2.574件であった。従って期待される全ガン死のうちこの二つの高線量群の寄与分は5.935件である。

2012-10-15 12:56:06
スカルライド @skull_ride

(35)胎内で高線量を受けた人々では、小頭症と重度の知恵遅れの発生が深刻な問題である。このことは加藤もよく知っており、彼の論文中にもはっきりと記載されている。それでもなおこのような条件下ではガンの診断が偏ってしまうかもしれない点について彼は一言もふれていない。

2012-10-15 12:56:18
スカルライド @skull_ride

(36)T65空間線量200ラド以上で、すべての妊娠齢を合わせた場合、広島長崎の25人中8例も重度の知恵遅れが観察されている。彼らは身の周りのことが自分でできず、会話が交わせず、自分で食事ができないのである。

2012-10-15 12:56:31
スカルライド @skull_ride

(37)加藤の生後1年以内に死亡した104人のデータを見ると、被曝していない群では原因の分かっている死亡は、不明のそれの37/23=1.61倍である。しかし被曝した群になるとこれが12/31=0.39倍にしかならない。この違いは決して小さなものではない。

2012-10-15 12:56:43
スカルライド @skull_ride

(38)死亡の2×2分割表を作って検定を行ってみる。イェーツの連続性補正をしたカイ2乗検定によると、χ2値は10.1(自由度1)となり、危険度0.1%以下で有意となる。 http://t.co/TkmSUlPF

2012-10-15 12:57:13
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スカルライド @skull_ride

(39)従ってこの広島長崎の胎内被曝者集団に見られる奇怪な分布が、偶然起きるということは到底ありえないということになる。となるとこういうことだ。被曝線量が大きい場合は、小さい場合と比べて医師の死亡診断が極端に難しくなる。

2012-10-15 12:57:25
スカルライド @skull_ride

(40)胎内被曝に関するこうした奇怪な死亡診断の問題(統計学的なバラツキではなく、実在する問題)の説明がなされないかぎり、加藤の結果をもとにスチュワートの結果を棄却するなどということは、はっきり言って科学的なやり方とは言えない。

2012-10-15 12:57:37

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