ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード #9

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BOOM!タイヤがパンクし、トレーラーがグリップを失う!「ジ・エンドだ!」ブラックオニキスは加速した。グリップを失ったトレーラーがガードレールに衝突し爆発炎上!KRAAASH!KABOOOOM!「アバーッ!」飛び石消失!だが、「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回転跳躍! 48

2012-11-27 23:55:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

着地点には忠実なるアイアンオトメの自走!ニンジャスレイヤー、再び人車一体!「なんとしぶとい」ブラックオニキスは顔をしかめた。そして前方には左へのバンクカーブ!ブラックオニキスはドリフトをかけた。ニンジャスレイヤーは殆ど減速せず内角へ切り込む!ゴアアアア!唸るアイアンオトメ!49

2012-11-28 00:04:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この状況は先程のリフレインだ。そして先程とは内外の乗り手が逆!ドリフトするブラックオニキスは遠心力でカーブ外側へ振られて行く。そう、先程のニンジャスレイヤーのように決断的に内角へ切り込む事無くば、そのようになる……そして内側の者に、遠心力を利用した攻撃機会を与えてしまうのだ!50

2012-11-28 00:09:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しまッ」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが外側のブラックオニキスめがけ急激に幅寄せした!「グワーッ!」側面衝突!右へ押し出される!遠心力!その先にガードレール!挟まれる!火花!「グワーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの裏拳がブラックオニキスの顔面を直撃!「グワーッ!」51

2012-11-28 00:11:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

抜け出せぬ!右側のガードレールに削り取られ、ブラックオニキスの右腿から先が吹き飛んだ!「グワーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはさらに裏拳!反撃が間に合わぬ!「グワーッ!」裏拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」裏拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」……「イヤーッ!」 52

2012-11-28 00:14:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」……ニンジャスレイヤーはカーブを抜けた!その背後、無惨に転倒するバイクと、空中へ回転しながら投げ出される……ブラックオニキス!「サヨナラ!」爆発四散する強敵をニンジャスレイヤーは振り返らなかった。彼は前方に、ついにクロームドルフィンの背中を捉えていたのだ。 53

2012-11-28 00:17:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クローム&シルバーのメタリック装束。青いLEDライト。鋭角流線型の車体……不意に彼が振り返り、ニンジャスレイヤーを見据えた。彼は微かにであるがスピードを落とした。誘っている?だがニンジャスレイヤーはそれに乗った。アイアンオトメが唸り、二者は直線上で横並びになった。 54

2012-11-28 00:21:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。クロームドルフィン=サン。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはアイサツを繰り出した。「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。クロームドルフィンです」スピードフリークはアイサツを返した。「意外な入門者か……くくく……見えるか。風の道」青い眼光がチカチカと点滅した。55

2012-11-28 00:24:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この世はスピードの影だ、ニンジャスレイヤー=サン」クロームドルフィンは言った。「肉体の檻を捨て、スピードとなれ」「……」ニンジャスレイヤーは並走を続けた。「スピードとやらに還った先に、オヌシのマカナ=サンがいるのか」「マカナ」思いがけぬ名前に、クロームドルフィンが震えた。 56

2012-11-28 00:29:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「『死んだら終わり』。アノヨは無い」ニンジャスレイヤーは厳かに言った。「戻れ、ケンザ・キシオミ=サン。彼女の家族のもとへ。そしてマカナ=サンを弔え!」「やめろ!」クロームドルフィンが拒絶した。「くだらぬ事を」「くだらぬ事?」ニンジャスレイヤーは続けた。「私はこの話をしに来た」57

2012-11-28 00:36:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やめてくれ」「私は話をしに来た」ニンジャスレイヤーは繰り返した。「戻れ。そして弔え。ケリをつけろ、ケンザ=サン」「スピードを汚すな!」クロームドルフィンは叫んだ。「マカナ!」「その先にマカナ=サンはおらん!」ニンジャスレイヤーは言った「既にそこにいる!己の中の彼女と対せ!」58

2012-11-28 00:53:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」クロームドルフィンは黙った。そして自嘲的に笑った「それが出来れば、良かった。……だが無理だ。俺の罪はあまりに重い」「……」「俺はクロームドルフィン。戻れはしない。知っているのだろう、お前」彼の口調は穏やかだった。「……だが、ありがとう。ニンジャスレイヤー=サン」59

2012-11-28 01:05:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカめ」ニンジャスレイヤーは低く言った。クロームドルフィンは並走するニンジャスレイヤーに何かを放った。ニンジャスレイヤーは受け止めた。それは飾りの無い指輪だった。クロームドルフィンの青いLEDが明滅した。手振りをしたのち、推進剤を放出、一気にニンジャスレイヤーを引き離した。60

2012-11-28 01:08:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もはや追いつけはしない。ニンジャスレイヤーは徐々に速度を落とす。空が白み始めている。……ゴウ!そのとき、ニンジャスレイヤーの横を、風のかたまりのような質量が駆け抜けた。金色の粉塵を放ち、それは更に加速した。小さくなるクロームドルフィンを、随伴者めいて、追っていった。 61

2012-11-28 01:15:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、二つの光はニンジャスレイヤーのニンジャ視力を持ってしても捉えられぬほどに遠ざかり、見えなくなった。唸る風音が遅れて聴こえた。 62

2012-11-28 01:17:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドはコタツ・テーブルを立ち、ハンチング帽を目深に被り直した。石のように沈黙し、俯く夫婦は、じっとテーブルの指輪を見つめていた。母親が涙を拭った。金属ドアを開け、フジキドは退出した。老夫婦は住宅の外まで彼を送った。そして、彼が見えなくなるまで、無言でずっとオジギしていた。64

2012-11-28 01:26:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

IRCアラートがフジキドの端末を光らせる。彼は報せを確認した。ケンザ・キシオミのUNIXに残っていたデータの解析結果……ナンシーから。なにかしらの進展があったという。「タイサ・ルニヨシ」フジキドは呟いた。「モーターカナタ」 65

2012-11-28 01:28:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ケンザとカケル、そして彼らのマシーンの行方は知れず、残骸や死体が発見される事も無かった。やがてセクトも捜索を打ち切った。ルート808の死神の目撃情報は、いっときの加熱が嘘のように終息したが、それでも信仰めいたフォークロアは残った。 66

2012-11-28 01:39:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード」終わり (67

2012-11-28 01:39:46