実数とは?

数学の専門家である@yon_ichiroさんが、「実数」とはなにかについて連続ツィート。それを数学素人の私がまとめました。 ポイントは「有理数だけだと不便だよね」「じゃあ、有理数じゃない数もあることにしようよ、そしてその決め方はこうだよ」「でも、実数って名前の割に怪しいよね」というところでしょうか。 追記:私より先に、@yon_ichiro さんの将棋仲間の@hirarikkuma さんが、「実数とは何か」連続ツィートをまとめてくださってました。文字強調などない方が読みやすいという方はこちらがオススメ。| よんさまの数学講座・実数編(仮題) http://bit.ly/US84Pb 続きを読む
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四一郎 @yon_ichiro

(0)みなさんこんばんは。それでは(何が「それ」だ?)@melting___point さんからいただきました「実数とは?」の話をさせていただきたいと思います。当初は、実数を語るにはまず自然数、整数、有理数からかな、と構想したのですが、それでは大長編になってしまうので断念。

2012-12-19 22:28:29
四一郎 @yon_ichiro

(1)ところで世の中で『実数』っていったら、普通は『実際の数』って意味ですよね? 入場者数は発表では5万人、ただし実数は48253人、とか。ここでは数学用語としての『実数 real numbers』の話です。高校の数学で出てくる言葉ですが、意味はそのときはたぶんよくわからない。

2012-12-19 22:32:51
四一郎 @yon_ichiro

(2)小学校までで習う数は、すべて有理数です(円周率も 3.14 で近似する、などなので)。有理数 rational numbers は、おそらく誤訳というべきでした。rational には確かに「理性的な」という意味もありますが、ここでは「ratio的な」が正しかった。

2012-12-19 22:35:36
四一郎 @yon_ichiro

(3)ratio とは比、割合、のこと。2/3 という分数は、2:3 という比と同一視されることがあります(というか、昔のギリシャでは分数はなく比しかありませんでした)。それで、整数どうしの比で表される数のことを rational だといったのです。「有比数」とか訳したかった。

2012-12-19 22:38:44
四一郎 @yon_ichiro

(4)で、有理数ってのはわかりにくい術語なんですが、とにかく意味は「整数÷整数で表される数」です。これだけでも加減乗除はできます(あ、0で割っちゃいけないけど)し、ものの長さや重さを量るには結局誤差を覚悟して有限桁の小数でやりますから十分ですね(有限桁小数は有理数です)。

2012-12-19 22:42:55
四一郎 @yon_ichiro

(5)しかし、数学では有理数だけでは十分と思わずに、さらに数を作って考える場面が非常に多いのです(いつもじゃないですよ! 有理数だけ見ることもある)。なんでそんなことをするのか。本格的な理由はあとでにして、とりあえず、「線分の長さが有理数ではないときがある」ということがあります。

2012-12-19 22:47:48
四一郎 @yon_ichiro

(6)有名な話ですが、たとえば、一辺の長さが1の正方形を作ると、その対角線の長さが有理数になりません。その証明は中学の数学の教科書に載っていますが、それが m/n (m,nはとある整数)と等しいと仮定して矛盾を導きます。まあともかく、非常に簡単に長さが非有理数である線分が作れる

2012-12-19 22:50:54
四一郎 @yon_ichiro

(6番外)ピタゴラスは「万物は数である」と言っていますが、その心は、世の中には最小単位となる粒子があり、すべての長さはそれが何個分かで表せる、ということだったようです。非有理数の長さが存在するということはそれを正面から否定します。そしてその証明に使われるのが『ピタゴラスの定理』。

2012-12-19 22:55:00
四一郎 @yon_ichiro

(7)で、普通はこの程度しか説明されないんですが、本当はこれだけで「だから実数がいるよね?」っていうのは不十分なんです。一辺の長さが1の正方形の対角線の長さは√2ですが、これは非有理数の中でもとても素性がはっきりしたもの。しかし「実数」にはもっと得体の知れないものもいっぱいある

2012-12-19 22:59:23
四一郎 @yon_ichiro

(8)たとえば「定規とコンパスだけで作図できるような線分の長さだけはっきりさせたい」くらいの目的のためには、実数全体なんてぜんぜんいりません。え、「円周の長さもほしい」? それなら π とそこから加減乗除と平方根で得られる数も全部つけましょう。それでも、実数全体は不要です。

2012-12-19 23:02:45
@yuki_migo

ピタゴラス学派は√2発見した人を処刑してたんでしたっけ

2012-12-19 23:02:03
四一郎 @yon_ichiro

@yuki_migo 伝説でしょうけど、そういう話はありますね。『ピタゴラスの定理』をピタゴラス学派が発見したのかどうかはよくわからないんですが、とりあえずピタゴラス学派はペンタグラムをあしらった紋章をつけていたらしく、思いっきり無理数を使ってます……。

2012-12-19 23:04:31
四一郎 @yon_ichiro

(9)というわけで、やっと本題です。実数ってなんでしょう。数学者は、実数を作らないと不便でしょうがないから作ったんですが、その事情を今から説明します。まずこのへんから:数がa1,a2,a3…と小さい順に無限個並んでいて、全部2以下だとします。これ、先に行くと、どうなるでしょうか。

2012-12-19 23:13:41
四一郎 @yon_ichiro

(10)a1<a2<a3<... でしかも全部 2 以下なんだから、なにかしらの数にどんどん際限なく近づいていきそうですよね。数学っぽくいうと、「ある数mが存在し、数列a1,a2,a3,…はmに収束する」または「a1,a2,a3,…の極限はmである」ことが期待されます。

2012-12-19 23:16:35
四一郎 @yon_ichiro

(10番外)ところでこの「ある○○が存在し、△△である。」っていう言い方が、なかなかわかりにくいんですね。There exists (some) ○○ so that △△. ってことなんですが。なお、つなぎのところを such that っていうのが数学方言ですたぶん。

2012-12-19 23:20:13
四一郎 @yon_ichiro

(11)しかしですね、有理数しか知らないと、果たしてそんな極限値mがあるかどうかわからないんです。a1,a2,a3,…が全部有理数だとしても、です。たとえば a1=1.7、a2=1.73、a3=1.732、a4=1.73205、と√3=1.7320508…を参考に作ると、

2012-12-19 23:23:09
四一郎 @yon_ichiro

(12)a1,a2,a3,…の極限はあるとすれば√3しかありえないんですが、√3は有理数じゃないんです。a1, a2, a3 …は有限小数ですから当然有理数なんですが。だから、この数列a1,a2,a3…には、有理数だけしか知らないならば、極限はありません。

2012-12-19 23:25:03
四一郎 @yon_ichiro

(13)別の例では、a1=1.1、a2=1.101、a3=1.101001、a4=1.1010010001、a5=1.101001000100001、…なんてのもあります。これも有理数の列で、a1<a2<a3<…≦2 を満たしていますが、有理数の世界には極限はありません。

2012-12-19 23:27:18
四一郎 @yon_ichiro

(14)別に極限なんかなくったっていいんじゃない? という意見もありえますよね。しかし数学者は困るのです。その辺の事情をきちんと説明するには本当は例を見ていただかないといけないんですが、話が難しくなってしまう。数学プロパーでなくても微分方程式を使う人などは実感できるでしょうが…。

2012-12-19 23:31:22
四一郎 @yon_ichiro

(15)正体を知りたいがなかなかそのものズバリがわからない、というときに「近似」という手法は自然科学でとても大切です。ある数値を知りたいとき、それに対して近似数列を作って研究するのはよくあることです。で、そういう手法をいつでも使えるようにするためには、数学は近似数列について

2012-12-19 23:34:22
四一郎 @yon_ichiro

(16)一般論をもっていたい。そのときどきで現れる数列の個性に振り回されることなく、一般的に数列とその極限について言えることはいっておきたい。「a1<a2<a3<…≦2ならばこの数列には極限はある」、そのくらい直観に訴えることは、「そりゃそうだ」といえるようにしておきたい。

2012-12-19 23:37:23
四一郎 @yon_ichiro

(17)ここで、〈どんな数列でも〉ということが大切です。a1<a2<a3<…≦2 であるような数列なんていくらでもある。そのどれについても、極限があるはず、と言い切りたいのです。場合によってあったりなかったり、では困る。実際、この極限値を使って議論を先に進めたいことは頻出します。

2012-12-19 23:39:31
四一郎 @yon_ichiro

(17番外)あ、忘れないうちにいっておこう。本当は、この話は「ある数Mに対して a1≦a2≦a3≦...≦Mであるような数列は」っていいたいところです。話の勢いで、直感的にわかりやすいように書いてしまいました。

2012-12-19 23:41:11
四一郎 @yon_ichiro

(18)やっと本題の本題。数学では、このような要請を満足させるべく、有理数を包含するような新しい数の世界〈実数〉を作りました。それは、従来の有理数たちに新しい数、無理数 (irrational numbers) を付け加えるという作業で実行されました。その流儀が、二通りある。

2012-12-19 23:44:07
獅子 @shishi_koma

複素数さん仲間にして欲しそうにこちらを見ています。  ⇨ たたかう    逃げる

2012-12-19 23:48:13