あざらしさん( @azarashidayou )による叙述トリック犯罪学教程
- moritapodesu
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第二の目標はスピンオフの依頼がくること。「この作中作に出てくる騎士のラインハルト、美形で優しくて男気があってめちゃくちゃ強いっていうことで、女性人気も男性人気も凄いんですよ。だからラインハルトを主人公にした外伝を書いてみませんか?」
2013-01-05 23:38:27この二つの目標がクリアできるほどの作品を書けたなら、本格ミステリ読者だけでなくファンタジー読者もファンとして巻き込んでいるでしょうから、先に挙げた御三方より多くの読者が獲得できているはず。「ゴッド・オブ・ミステリー」を超える秘策がここにあるわけです。
2013-01-05 23:38:58と、ここまで読んで気付いた方もいらっしゃるでしょう。そのゴッド・オブ・ミステリーこと島田荘司御大が中断している大河ノベル、『クラシカル・ファンタジー・ウィズイン』はまさに今私が言ったような小説として完成するのでは…本格ミステリとして終わることは既に予告済みですけどね。
2013-01-05 23:39:37オマケコラム6:「システムと刀城言耶シリーズ」システムを語るなら外せないのが三津田信三さんの刀城言耶シリーズでしょう。探偵である刀城言耶は「合理的論理的に考えて答えが出なかったら怪異の仕業とみなしましょう」というようなことを言います。
2013-01-05 23:40:42これは「合理的に考えて答えが出たらこの小説が最終的に採用するのは無界システムです。しかし答えが出なかったら最終的に採用するのはホラーシステムです」という宣言に等しいと言えます。
2013-01-05 23:41:16普通なら無有小説や有無小説にするところを、あえてこのように「ジャンルの境界上にいますよ、さあ今回はどっちのシステムかな」というメタな揺さぶりをするのは珍しい試みですね。「システム選択型小説」とでも名付けましょうか。
2013-01-05 23:41:47オマコラ6例題-SF:「合理的・地球科学的に考えて答えが出なかった時は、地球人類をの科学力を越えた、超科学が使われていると考えた方がいいでしょう」「それはつまり、科学レベルSクラスの異星人が犯人だということになるのか?」
2013-01-05 23:43:13オマコラ6例題-ファンタジー:「合理的魔法学的に考えて答えが出なかった時は、魔法界干渉により、新たな魔法が局地的に生み出されたのだと考えた方がいいでしょう」「バカな、この件に七大魔道士が関わっていると言うのか!?」
2013-01-05 23:43:42さて実はこの後に一つ、異端編というのがあります。この異端編に関しては、何が凄いのかを感じてもらうのは難しいかも知れません。例題と解説で何とか伝えられればいいのですが、このトリックの例題は本当に難しいので、他の例題以上に、至らぬ点が多々あると思います。
2013-01-05 23:45:31異端編例題-1:「そうか、由美も親が嫌いなのか。実は俺も親は嫌いなんだよ、本当の親はっていうことだけど。お前だから言うけど、俺の本当の親父は、自分勝手な理由で人を殺したんだ。それでお袋は心労がたたって、頭がおかしくなっちまった。それで俺はお袋の姉に預けられたんだ。
2013-01-05 23:45:58異端編例題-2:(1の続き)それからお袋には病院で何回か会ったことがあるけど、人を殺したのは自分だ、あの人は悪くないんだ、って親父をかばうんだよ。旦那が人殺しになっても、まだ好きなんだなあ。ああ、親父は出所後に、どこかに消えたよ。無理に探そうとする人はいなかった。
2013-01-05 23:46:47異端編例題-4:闇のなか真田が見たその男の、眼鏡、あごヒゲ、そして顔の輪郭…見覚えのある顔だ。「如月さん、あんた何してるんだ! あ、おい!」人らしきものを抱え、如月と呼ばれた男は逃げる。足の悪い真田に、追い付ける速さではなかった。
2013-01-05 23:48:03異端編例題-5:次の日、館の大広間で、日出臣伸吾が死体で発見された。真田は「昨夜に怪しい人物を見かけたが、それは絶対に如月だった」と警察に証言する。
2013-01-05 23:48:33異端編例題-6:その更に二日後、真田と如月の死体が発見される。検証の結果、如月が真田を殺した後、自殺を図ったと判明。
2013-01-05 23:49:10異端編例題-7:名探偵アルーア師父は由美と昌樹の二人を前に推理を披露する。「第一の被害者を殺したのは由美さん、あなたですね」昌樹は「バカな!犯人は如月のはずだ!」と反論。「いえ、由美さんをかばうために死体を抱えて逃げたのは、変装したあなたでしょう、東雲昌樹さん」
2013-01-05 23:49:31異端編例題-8:昌樹は認めず、「真田や如月を殺したのも俺たちだって言うのか」と反論。「いいえ、真田さんを殺したのは如月さんです。自殺したのも如月さんの意志でしょう」「なら日出臣のやつだって」
2013-01-05 23:50:03異端編例題-9:「如月さんは腰痛を患っていました。運ぶ最中にぎっくり腰になる可能性を考慮に入れた上で、それでも死体を抱えて運びますかね? そもそも死体を抱えた状態で走って逃げられるほどの体力は、如月さんにはなかったでしょう。彼は六十手前でしたよ」
2013-01-05 23:50:28異端編例題-10:昌樹は焦って反論の糸口が掴めない。「そんな……二つの事件はたまたま起こった別々の事件だとでも言うのか?」「いえ、ある意味では一つの事件です。あなたたち二人が起こした事件を、如月さんがかばったのですから」「え?」
2013-01-05 23:51:00異端編例題-11:「真田さんが『夜中に見た男』について証言する前に殺すならまだしも、証言した後に殺したというのは、証言が変わる前に始末しておきたかったということでしょう。後になって東雲だったかも知れないと証言されて、あなたが容疑者として浮上してしまうのを阻止したのですよ。
2013-01-05 23:51:32異端編例題-12:(11の続き)また、日出臣さんを運んだのが如月さんでないという証拠はありません。如月さんは日出臣さんの部屋の中に、不自然なくらい指紋を残していますし、警察は如月さん単独犯説で落とすつもりでしょうね」
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