【初級者向け】四式中戦車「チト」のお話

猪鼻湖のチト車捜索作業で、とうとう潜水調査が始まったのでついでに解説しました。 今回は初心者向けと言うより、初級者向けの内容となりますのでご注意ください。
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這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

あ、装甲の重要なところについて触ってませんでしたね。チト車の装甲厚は車台・砲塔前面で75mm、砲塔側面で最大50mm、砲塔後面50mmあり、車台側面で35~25mm、後面で50mmあったと言われています。傾斜がかけられているとはいえ、車台側面はやや薄い方でしょうか。

2013-01-06 18:40:37
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

装甲についてはこんなところでしょうかね。次は走、エンジンや懸架装置についての話をしましょう。

2013-01-06 18:42:23
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チト車のエンジンは旧来の旧軍戦車と同じ空冷ディーゼルエンジンであり、昭和十八年に三菱重工にて制作された、社内名称AL、通称「統制型一〇〇式エンジン」を搭載しており、最高出力は412hp/1800rpm、最大トルクは200mkg/1100回転を出したものです。

2013-01-06 18:46:39
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

エンジン構造はV型12気筒の吸気バルブ2、排気バルブ1の3バルブ方式を採用して吸入効率の向上を図り、油圧式自動噴射時期調整器を取り付け、エンジン冷却に2シリンダーに対し1個の両側吸い込み軸流ファンを使用して均一冷却を図っていること等が特徴として挙げられるそうです。

2013-01-06 18:50:16
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そんなチト車の発動機は昭和十九年五月十六日からの第四陸軍技術研究所及び相模試験場などでの基礎試験に於いて、最大速度46km/hを叩きだし、良好な道路での装甲では平均31km/hの速度を記録しています。

2013-01-06 18:54:42
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変速装置は長らく開発していたM3軽戦車と同形式の同期噛合式を使用し、操縦操作にて「従来のものより容易」という判定を貰っています。操行操作でも「油圧操縦装置の機能良好にして操行極めて容易なり。長時間の連続運行を行うも疲労することなし」という良質な結果であったようです。

2013-01-06 19:00:28
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操向装置は今までチハ車などで使っていた遊星歯車式のクラッチ・ブレーキ方式では無く、新しく油圧サーボを導入しており、それの結果がこのような機能試験での結果と繋がったのでしょうね。ちなみに懸架装置はチハ車と同様のバネ方式が使用されています。

2013-01-06 19:03:12
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本来は従来の巻バネ式とは違い、トーションバー方式も考慮に入れた研究もしていたのですが……この方面の権威である東北帝大の市原教授がトーションバー改造ロケ車の事故によって殉職してしまい、以後の研究が途絶してしまったことが悔やまれます。

2013-01-06 19:06:02
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しかし、従来の巻バネ方式でも供覧試験において良好な結果を出し、そのまま採用されたことを踏まえると、チト車の走に関する部分はなかなかに優秀だったのかもしれません。

2013-01-06 19:07:28
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さて、エンジンと走行装置についての話はここまででいいだろうか。最後はやはり攻、主砲についてのお話ですね。

2013-01-06 19:08:17
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チト車の主砲は「試製七糎半戦車砲(長)Ⅱ型」を装備しており、これは本来五式チリ車に搭載を予定されていた「試製七糎半戦車砲(長)」に付けられていた自動装填装置を取り外し、変わりにカウンターウェイトを配置したものとなっています。

2013-01-06 19:13:34
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この砲自体は元々中国戦線で鹵獲されたボッホース社製七糎半高射砲を国産化した「四式七糎半高射砲」を利用したもので、昭和十九年七月に竣工し、いくらかの修正を実行した後、試験結果としても不良続きだった装弾機を除き「概ね良好」とされています。

2013-01-06 19:20:42
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そしてチト車にこの砲を搭載するにあたり、装弾機付きのものをⅠ型、装弾機を外しカウンターウェイトを載せたものをⅡ型とし、Ⅰ型はチリ車、Ⅱ型はチト車に搭載する事が決定しています。試製七糎半戦車砲(長)Ⅱ型の制作は、不良続きだった装弾機を搭載していない分、Ⅰ型より順調に進んだようです。

2013-01-06 19:25:04
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昭和二十年三月十六日から行われた、試製五式七糎半戦車砲(長)Ⅱ型の機能弾道性試験では、チト車に搭載されたⅡ型砲にて徹甲弾(6.6kg)榴弾(6.2kg)を使用し「Ⅱ型の総合機能は良好」「Ⅱ型の精度は良好」という試験結果を出したようです。

2013-01-06 19:28:44
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そのついでに同年度三月十九日午後から三式チヌ車にチト砲塔を搭載しての射撃試験を行い、これも良好と判断されています。この試験結果が後に三式チヌ車の七糎半戦車砲(長)Ⅱ型の搭載計画と繋がってくるのでしょう。

2013-01-06 19:31:36
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試製五式七糎半戦車砲(長)Ⅰ型・Ⅱ型の搭載砲弾は、同時期に開発されていた試製五式七糎半対戦車砲での射撃試験に使用された「一式徹甲弾(弾丸重量:6640kg/装薬共通2030kg)」と(続く

2013-01-06 19:36:37
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(続き 「一式徹甲弾改修(弾丸重量:6640kg)」「四式榴弾(弾丸重量:6600kg)」を使用されたであろうと旧軍戦車研究の権威である国本博文氏は予想しており、一式徹甲弾改修の内容によっては以前より良好な貫徹力を記録したかもしれませんね。

2013-01-06 19:38:56
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

そこで気になる貫徹力ですが、それらの資料、記録は現在もはっきりしたものが見つかっておらず、試製七糎半戦車砲の竣工時の初速が885m/sであるらしい事を鑑みると(続く

2013-01-06 19:44:40
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

M4中戦車に使われたM1 76mm戦車砲の792m/sの初速を辛うじて勝っており、そして大戦末期に辛うじて参加したイギリスの17ポンド砲の884m/sに迫る初速を持った高初速の砲として製造される予定であり、これらと同性能、或いはそれより上の貫徹力を持っていたかもしれませんね。

2013-01-06 19:47:06
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

そんな四式中戦車ことチト車は、現在確認されるだけでも2輌が試作され、そのうち1輌が豊橋の戦車第二十四連隊に配備、終戦後に秘密保持の為に猪鼻湖に沈められ、残りの1輌は千葉で終戦を迎えた後、戦後米軍によってアバティーン試験場に他の戦車と共に送られたのでした。

2013-01-06 19:49:58
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ここまでチト車のことについて話して来ましたが、チト車は全体的な性能としては概ね良好なものであり、大戦末期の中で試作とはいえ、実際に配備された戦車では最大火力・最大装甲を有した戦車でありました。

2013-01-06 19:52:24
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

しかし実際の量産に関して言えば、戦車砲を担当する大阪陸軍造兵廠でわずか月産2門、チト車製造に中止しても昭和二十年三月の時点で年度内11輌分しか確保されておらず、蓋を開けてみれば実戦どころか国内に配備するのも夢とまた夢とならざるを得なかった、悲劇の戦車とも言えるものだったのです。

2013-01-06 19:56:49
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

……といったところで、今回の私の旧軍小話突発編はここらへんで終わりにしておきましょう。大戦末期の日本戦車の中で、中核をなし得ると言われたチト車はまだまだ魅力が満載してるので、気になる方は自分で本を読んで調べてみるのもいいかもしれませんね。

2013-01-06 19:58:53

~ここから質問タイム~

這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

さて、毎度恒例質問タイムです。何かチト車について質問がある方は、今のうちにどうぞー。どんな些細なことでも構いませんよ?

2013-01-06 19:59:39