トータス重突撃戦車の試案(と、モリンズ57mm砲)のお話

何かとゲテモノ扱いされて不憫なトータス重突撃戦車について、AT-1案~AT-10案まで試案に触れつつ AT-6で計画されたモリンズ57mm砲についてもちょっとだけ
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

先日、トータス重突撃戦車の搭載砲ついてのお話をしました。togetterまとめも意外や伸びていますから、潜在的英軍戦車クラスタの存在可能性が箱入り猫めいて観測されたような気がします

2013-01-09 21:03:58
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さてそのトータスですが、最近はMENG-MODELから模型が出たり、グランパに続いてPANZER誌でもトータスの特集が組まれたりもしています。どうやら英軍AFV界隈で空前のトータスブーム(独自調べ)が巻き起こっているようです

2013-01-09 21:07:18
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そもそも「英軍AFV界隈」が本当に存在するのかどうかには議論の余地がありますが、それはさておき、今日は先日割愛したトータスの初期計画案、とりあえずAT-1~AT-7くらいまでについて話してみようかと思います。AT-8以降は気が向いたら #SW42

2013-01-09 21:10:46
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さて、そもそものトータスの始まりですが、ここではまず英軍における「突撃戦車」というカテゴリそのものの成立背景に少し触れておきたいと思います。よく言われる通りに、このカテゴリが考えれた背景には、近い将来に予想される北西部ヨーロッパでの反攻作戦がありました

2013-01-09 21:19:38
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

連合軍は1942年当時、北西部ヨーロッパには強固な要塞線が存在するものと想定していました。後にこれは誤りだったことが判るのですが、その時点の彼らには知る由もありません。そこで、この要塞線への対策として、機動性を犠牲にして代わりに最大限の装甲を備えた突撃戦車が必要だとされたのです

2013-01-09 21:23:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

この新型突撃戦車の目標としては「前面装甲厚は少なくとも6インチ、側面と後面はそれぞれ前面の60%、40%。上面と底面は最低25mm」といった数字が挙げられています。後のトータスよりはチャーチルの後期型に近い数字ですが、あるいはこれがチャーチルの装甲厚にも影響を与えたかも知れません

2013-01-09 21:34:42
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

特筆事項として「この種の車両は地雷と対戦車障害物に支配された地域での任務を要求される」ことから「走行装置と床面構造の防御には特別な注意が払われるべきである」とされています。トータス完成車にはサイドスカートや地雷処理アタッチメント取り付け具が着いていますが、その源流はここにあります

2013-01-09 21:45:05
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

またこの他に、より大きな榴弾の効果を狙った「17ポンド砲とほぼ同様な外形寸法を持つ3.7インチ砲」の研究も提案されています。3.7インチ砲で砲身長が17ポンド砲と同じならば44口径程度ですから、カノンよりはむしろ野砲級で、装甲貫通力にさほど重点を置いていなさそうなのがわかります

2013-01-09 21:57:01
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

この野砲級3.7インチ砲は後にどこかで立ち消えてしまいますが、このような砲の要求からもわかるように、新型突撃戦車の用途はあくまで要塞攻撃です。対戦車戦闘は当初は主目的ではなく、実際トータスに装甲貫通力が要求されるようになるのは開発のかなり後の段階になってからなのです

2013-01-09 22:00:45
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

要塞攻撃のために新型突撃戦車は具体的に何をするかというと、実に様々な活動が想定されています。例としては榴弾での攻撃や発煙弾での煙幕展開といった普通の戦車的な任務の他、火炎放射、爆薬運搬、超壕用の粗朶束の運搬、装甲ソリを牽引しての歩兵輸送(!)等、装甲工兵車的活躍も期待されたのです

2013-01-09 22:14:50
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

これらはチャーチルAVREでも可能に思えますが、英軍は「ただの増加装甲つき車両では耐えられない程の地雷と対戦車障害」を想定しています。速度と火力は劣っても重装甲で、かつ特殊任務も可能な専用設計の車両を英軍は欲したのです。この裏にはディエップ上陸のトラウマの影響もあるかも知れません

2013-01-09 22:20:14
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

これらを踏まえ43年5月13日、AT-1~AT-3の三つの試案が提出されました。AT-1は前面/側面/背面に各150mm/90mm/60mmの装甲を持ち、75mm砲か95mm榴弾砲を旋回砲塔に備える45tの車両とされました。これは多少重装甲ではありますが、一般的な戦車の形態です

2013-01-09 22:30:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

AT-1の武装の詳細は不明ですが、恐らくは75mm砲/95mm榴弾砲ともに、クロムウェル巡航戦車に搭載されたものと同じでしょう。この時英軍は既に17ポンド砲を実戦投入していますが、そこであえてこの武装を選んでいることからも、AT-1は対戦車戦闘を主眼としていないことが確認できます

2013-01-09 22:39:18
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

同日提出されたAT-2とAT-3についてはあまり資料を見つけられませんでした。しかし両者とも「大口径砲を持たず、連装機関銃塔を戦闘室の上に備えた」36t級車両であるとされています。銃塔の数は不明ですが、どうやら一基ではなく複数のようです。繰り返しますが砲はありません

2013-01-09 22:48:48
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

AT-2,3は戦車として考えると異様な武装ですが、これはあくまで要塞攻撃用の特殊任務車両であり、戦車ではないことを重点して意識しましょう。他にもいくつか紅茶リアリティショックを引き起こすよう試案がありますので、意識が遠のいた時は「これは戦車ではない」と唱えるように

2013-01-09 22:53:48
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

続くAT-4,5案は5月19日に提出されます。これは前面装甲厚を203mmとし、2段の雛壇状になった戦闘室の下段に単装銃塔1基、上段には銃塔2基と固定装備の6インチ迫撃砲、これに加えて右フェンダー上に火炎放射器を固定装備しています。重量AT-4で38t、AT-5は36tです

2013-01-09 22:59:28
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

この6インチ迫撃砲がどのようなものであったか詳細は不明ですが、車両の性格からすると、戦闘室内から再装填が可能な後装砲であったものと私は考えます。要領図を見る限りでは砲身は相当に短いもので、恐らくは中遠距離を狙う重迫撃砲ではなく、短射程の爆弾投射器的な性格の火砲ではないでしょうか

2013-01-09 23:08:14
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

迫撃砲形式の爆弾砲タイプの火砲としては、ヴァレンタイン歩兵戦車で実験された7.92インチ火炎迫撃砲というものがあります。これはTNTと焼夷剤が充填された25ポンド(11.4kg)の砲弾を発射するもので、有効射程は360mとされていました http://t.co/I27yudZS

2013-01-09 23:10:38
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

次のAT-6はネット上にも図がありました。 http://t.co/ry8I9ck2 見ての通り左右に限定旋回式で6ポンド砲と20mm機関砲を備えていますが、よく見ると"MOLINS AUTO LOADER"とあります。驚くべきことに、知る人ぞ知る“モリンズ”自動砲なのです

2013-01-09 23:19:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

モリンズ57mm自動砲と言えば、英国空軍の傑作高速爆撃機モスキートに搭載されたことで有名でしょうか。この砲は電動式ラックに22発の砲弾を備え、反動利用の自動装填で毎秒一発の連射が可能という恐るべき航空機搭載砲として知られていますが、元を辿れば要塞突破用の突撃戦車の武装なのですね

2013-01-09 23:25:05
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

AT-6は装甲厚が203/102/76へと全体に強化され、火炎放射器は左に移動し、重量43tとなっています。 このような重装甲車両に対して57mmという小口径の砲を装備するのはアンバランスに感じられますが、これは徹甲弾のほうが榴弾よりも要塞の構造物に有効であると考えられた為です

2013-01-09 23:35:11
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さて、火炎放射器は要塞攻撃に向いている印象ですが、実は可燃物が内部に侵入できない限りあまり効果がありません。実際、独軍のルノーB1や赤軍のKV-8のような火炎放射戦車は、戦車や要塞への攻撃では可燃物が中に入りづらいため効果的でなく、むしろ歩兵への心理的効果が目立ったとも聞きます

2013-01-09 23:47:53
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そこにきて、貫通力が高い自動砲と火炎放射器を組み合わせたAT-6の武装は、要塞攻撃という特殊な状況では一応合理的と言えます。重装甲を活かして接近し、自動砲の連射で要塞の銃眼等を削って穴だらけにし、さらに火炎放射器で燃え盛る可燃物を注入する……恐らくそんな事をするつもりだったのです

2013-01-10 00:00:56
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

AT-7も画像がありました http://t.co/Y1MJbVuR  AT-7は銃塔の配置がAT.6異なりますが、これは恐らく装填手の利便を図ったものと思われます。大きな砲尾故の砲の可動範囲の狭さにも注目。他に走行装置に若干の変更を加えたAT-7Aもありますが割愛します

2013-01-10 00:09:58
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

キリがいいのでAT-10まで行きましょう。まずAT-8 http://t.co/C9crgyqe 6ポンド砲が車体中央に移動し、さらに自動装填装置が無くなりました。砲にはマズルブレーキが付き、それに加えて砲身自体若干伸びてるようなので、43口径から50口径に変更されてるかも

2013-01-10 00:16:52