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就業構造基本調査のデータから海老原(2011)の記述を検証する
↓ ★訂正★ (誤)安部由紀子 → (正)安部由起子。
失礼しました。大石先生、ご指摘ありがとうございます。
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1:千葉大学の大石亜希子先生から関連する重要な分析があることを教えていただきました。Yukiko, Abe(安部由紀子)”A cohort analysis of male labor supply in Japan” という論文。
2013-02-03 22:49:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
2:Journal of the Japanese and International Economies, 27(1):23-43. Date:2012-03.以下、Abe(2012)と略記。
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3:これは、就業構造基本調査の個票データ(個々人の回答データ)を用いて、コーホート(同世代集団)ごとの男性の正規雇用率、非正規雇用率がどう変化しているかを見たものです。まさに、ここのテーマにぴったりの論文です。大石先生(@Kikoao)、ご教示ありがとうございます。
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4:ここでは、1953-1957年生まれ、1963-1967年生まれ、1968-1972 年生まれ、1973-1977年生まれ、1978-1982年生まれ、の5つの同世代集団(コーホート)について、1982年-2007年の5年ごとの就業構造基本調査の結果が示されています。
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5:注目するのは、こちらhttp://t.co/efOKb4mNにあるFig. 1(Regular employment ratio of men, by education)(図1:男性・学歴別の正規雇用率)のUniversity(大学・大学院卒) のグラフ。最初の右端。
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6:なんと、加齢によって正規雇用率は上がるどころか、1つの例外を除き、下がっています!海老原(2011)とはずいぶん異なる結果です。なぜこういうことになるのか、以下に見ていきたいと思います。 http://t.co/U7ftMPLG
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7:なお、この論文の全文はこちらhttp://t.co/9jI338uu …からアクセスして「フルテキスト」のPDFボタンを押すと、入手することができます。
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9:テキストのp.10を読むと、university graduates (this includes those who have graduate-level education)とあり、Fig.1のUniversityとは、大学・大学院卒であることがわかります。
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10:また、テキストのp.9を読むと、ここでいう正規雇用率(Regular employment ratio)の分母は人口(Population)であり、分子は正規雇用者数(Number of regular employees)であることがわかります。
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11:さらに、ここでいう分子の正規雇用者とは、就業構造基本調査における「正規の職員・従業員(regular emplyees)」と「会社などの役員(executives)」の合計であり、自営業主(self-employed)は含んでいないことがp.9に書かれています。
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12:会社役員は、正規の職員・従業員から昇進してなっていく場合が多いので、分子には「役員」を加えてあるとp.9に書かれています。妥当な判断であると考えます。
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13:また分母は、雇用者数(Number of employed)ではなく、人口(Population)となっています。P.9の注13には、分母に雇用者数を置くこともありうるが、あえて分母は人口としたことが書かれています。
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14:雇用者数を分母に置いてしまうと、雇用者、自営、無業、というところで人の出入りが出てしまうために、人口を分母に置いた、ということではないかと思います(理解不足な用語が含まれているので、推測まじり)。分母には無業の者も含んでいることに注意せよ、と書かれています。
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15:また、分母からも分子からも、在学中の者は除かれており、学校を卒業した者だけの数値から正規雇用率を算出してあることがp.9に書かれてあります。
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16:このFig.1では、大学・大学院卒は25-29歳層からプロットが始まっています。海老原(2012)では20-24歳層からプロットが始まっているのに対し、Abe(2012)は、大学・大学院卒について、20-24歳層のデータを除外しています。
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17:20-24歳層の中には、いずれ「大学・大学院卒」となるが、まだ在学中で「大学・大学院卒」ではない者が含まれているために考察から除いた、ということのようです(p.10の注14)。他の学歴の者については20-24歳層からプロットが始まっています。
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18:このまとめの(5)にある「雇用者数」の実数を見ればわかるように、20-24歳層と25-29歳層では、大学・大学院卒の雇用者数の数が大きく異なります。20-24歳層では、大学・大学院に在学中の者が多数いるため、同じ5歳分のボリュームの比較ができないわけです。
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19:大学・大学院卒直後の正規雇用率から20歳代後半の正規雇用率への変化を見ることができない、という難点がありますが、同世代集団の正規雇用率の推移を見る、という上では、妥当な判断だと考えます。
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20:さて、そうやって個票データから算出されたものがFig.1の正規雇用率です。従って、この値の分母と分子は、海老原(2011)p.157のグラフとは正規雇用率の算出方法が異なることに注意が必要です。しかし、このAbe(2012)の計算式は妥当なものと考えられます。
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21:そうやって個票データから算出された、各同世代集団の大学・大学院卒の男子の正規雇用率の推移が、Fig.1の右端の折れ線グラフです。 http://t.co/FyTsAUVK
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22:これを見ると、1973-1977年生まれが25-29歳時(2002年)から30-34歳時(2007)にかけて正規雇用率を上昇させていることがわかりますが、それより前の世代では、加齢につれて正規雇用率は上昇せず、むしろ緩やかに低下していることがわかります。
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23:海老原 (2011)p.156-158を読むと、加齢によって正規雇用率が上昇するのは当たり前のように思えます。しかしこのAbe(2012)の結果を見ると、加齢による正規雇用率の上昇は当然想定されることではなく、むしろ例外的な事例ではないか、という疑問がわきます。
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24:ここで注意しなければならないのが、大石先生が指摘する「加齢の効果とコーホート効果の区別」です。それぞれの世代がどういう時代を生きてきたのかを考える必要がある、ということだろうと思います。
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25:では、例外的な動きを見せている1973-1977年生まれとはどういう世代でしょう。ここからはAbe(2012)を離れた、私の独自の考察です。おかしなところがあればご指摘いただけるとありがたいです。
2013-02-03 23:04:33