超意訳 東海道中膝栗毛 二編 上

超意訳シリーズ第4弾。中の人(@KumanoBonta)のアカウントで編集ができなくなってしまったので、こちらから再度お届けします。 他の超意訳シリーズ(旅行用心集、東海道中膝栗毛エピソードゼロ、初篇)はこちらからどうぞ。→http://togetter.com/id/KumanoBonta
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

さらに進み、長坂、大時雨にさしかかった頃のこと。紺の木綿の合羽に風呂敷包みと柳行李を背負った旅人が、弥次喜多の周りをまとわりつくように歩きだした。 旅人「あのー、あなたがたはどちらからいらっしゃいましたか」

2013-01-21 19:19:39
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「江戸だよ」 旅人「私も江戸からまいりました。江戸のどちらから?」 弥次「神田だ」 旅人「ほう、私も神田に住んでいたことがありますよ。どうやらどこかでお見かけしたことがありそうだ。私は十吉と申します」

2013-01-21 19:19:47
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弥次「俺は神田の八丁堀から来た栃面屋弥次郎兵衛だ。八丁堀の家は、間口45m、奥行72mの角屋敷で土蔵造りだ」 十吉「はぁ、その裏に住んでいらっしゃったんですか」 弥次「何だと?裏じゃない、その屋敷に俺が住んでいた」 十吉「ご立派な御宅ですなあ」

2013-01-21 19:19:53
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「いやいや、たかだか三億程度の屋敷ですよ」 十吉「それはすごい」 弥次「おかげで普段は、ちょっと外に出るだけでもボディーガードが5人もついてくるんだがな、いつも気が詰まっておかしくなりそうだよ。今回はこの男だけ連れて歩いてるが、いやあ、不自由もたまにはいいもんだねー」

2013-01-21 19:20:00
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十吉「いやいや、そうでございますか。あなたのお母様はよく存じ上げております。以前、浅草の門前でお目にかかったことがありますが、杖をついてずいぶんお年を召されていらっしゃいました」 弥次「ああ、おおかた寺参りにでも行っていたのでしょう。何かお声をかけてくださったのですか」

2013-01-21 19:20:07
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十吉「はい、お母様のほうから声をかけていただきました。『10円めぐんでください』と」 喜多「ひゃははははっ」 弥次「なんだ、お前おもしろいやつだな」 喜多「あぁおかしい。どうだ、今日は俺たちと一緒に泊まろう」 十吉「ありがとうございます。よろしくお願いします」

2013-01-21 19:20:14
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道すがら3人が笑いあい、やがて玉沢の法華寺に着く。ここには足利氏が建立した七面堂がある。少し離れた所から皆で拝みつつ、 弥次「足利の ぶしょうの建し 名にめでて 七面堂と いうべかりける」 喜多「武将?」 弥次「不精。だから七面倒っていうんだ」

2013-01-22 19:35:07
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そして市の山にいたる。子供達が数人、大きなスッポンを捕まえたらしく、抱えるように持ち歩いている。 弥次「ほぉ、でかいスッポンだ」 喜多「なあ、あいつをもらって宿で酒の肴にしてもらおう」 弥次「そうしよう。おい小僧、そのでかいスッポンを俺たちにくれないか」

2013-01-22 19:35:14
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子供「いいよ。代わりにお小遣いをくれるか」 喜多「おう、大金をやるぜ」 300円を渡しスッポンを引き取った。そして辺りに落ちている藁を拾い集め、スッポンを包みくくりつけて持ち歩く。 喜多「うはっおもしろい」 十吉「これはいいですね。日も落ちてきたようですし、少し急ぎましょうか」

2013-01-22 19:35:25
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3人は足早に先を急いだ。日暮れも近づき、日の入を知らせる鐘が遠くから聞こえる。鳥も馬を追いかけ回すように巣へ戻る。 ようやく三島の宿場へ着くと、またいつものように留め女たちが旅人の客引きにやっきになっていた。 留女「お泊りくださいませー。どうぞー」

2013-01-22 19:35:32
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喜多「うわあ、ここでも客引き合戦が激しいなあ」 留女「お客さんどうぞこちらへ」 弥次「やめろぉ引っ張るなよ」 留女「お宿はこちらでーす」 弥次「わかったよ、泊まるからその手を離せ」 留女「はーい」 手を離した。 弥次「うそぴょ~ん。ははっ、じゃーなっ」

2013-01-23 19:35:07
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

逃げようと走り出す。 ドンッ! 弥次「いてっ」 盲目の按摩師にぶつかってしまった。 按摩師「あいたたたっ」 弥次「あぁ、すまない」 按摩師「バカヤロー!てめえ、目が見えねえのかっ」 弥次「す、すみません…」 喜多「なあ、あの宿にしよう」

2013-01-23 19:35:14
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旅籠屋「いらっしゃいませ。おさんちゃーん、お泊りのお客様ですよー」 宿の主人「お連れ様は何名ですか」 弥次「あー、影法師を入れて6人だ」 主人「承知しました。おーい、三太郎はいるか。足洗いの湯を持ってきてくれ。茶は炊けたか? お風呂を3つお出ししろ。ご飯は沸いてるかー?」

2013-01-23 19:35:20
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喜多「忙しいんだな。テンパってる」 部屋に通され、すぐに仲居が風呂の案内に来た。 仲居「お風呂の準備ができております。どうぞお入りください」 弥次「じゃ、お先に失礼するよ」 ささっと服を脱いで駆け出した。

2013-01-23 19:35:26
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仲居「お客様、そちらはトイレですよ。お風呂はこちらへ」 弥次「へへっ」 十吉「そういやさっきのスッポンはどうしました?」 喜多「床の間に置きました。あとで肴にさばいてもらいましょう」 やがて弥次が風呂からあがり、次に十吉が風呂へ行った。

2013-01-23 19:35:32
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十吉が風呂へ行くとほぼ同時に、宿の主人が宿場事務所の人とともにやって来た。事務所で管理している宿泊名簿の記入のためだ。 主人「失礼いたします。あ、お一人は風呂ですか。お手数ですが宿帳名簿の記入にお時間をください。お客様はどちらから?」

2013-01-24 19:32:28
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喜多「私は和泉国です」 主人「和泉国のどちらですか」 喜多「和泉国堺の天川屋義平と申します」 主人「えっと、こちらは」 弥次「私は山城国、山崎村の与市兵衛です」 天川屋も与市兵衛も、忠臣蔵に出てくる登場人物だ。

2013-01-24 19:32:34
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主人「ああっ、与市兵衛様とはあなたのことでしたか。いやいやいや、あなたの娘さんのご主人でいらっしゃる勘平様はどうしておいでですか」 弥次「勘平は30になるかならないかで亡くなりました」 主人「おぉ…それはお気の毒でした。おかる様はお元気ですか」 弥次「娘は元気にしております」

2013-01-24 19:32:46
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主人「狸の角兵衛さんや滅法弥八さんはたしかあなたのご近所でしたね」 弥次「そうですそうです」 主人「あなたを追いかけて来た猪はどこにいますか」 弥次「うーん、あの猪はどこへ行ったもんだか」 主人「猪が出てくるときの太鼓のお囃子はどうしていらっしゃいますかな」

2013-01-24 19:32:54
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全員「わはははは」 宿の主人のほうが一枚上手だった。 主人「はい、おじゃましました。お料理をもってまいりますから、お名前とご住所をこちらにお願いしますね」 弥次「くそう、からかったつもりがもてあそばれちまった」

2013-01-24 19:33:02
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【中ぼん薀蓄】江戸時代、人々の旅行が増えるにつれ悪質な旅籠屋が目立ち、安心で信頼できる旅籠屋が望まれてきました。文化元年(1804)旅籠屋組合「浪花講」が成立しました。優良な旅籠屋を指定し、加盟旅籠には看板を交付、諸国の加盟旅籠を収録した「浪花講諸国定宿帳」も出版されました。

2013-01-25 19:14:05
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

やがて仲居が料理を運び、並べ始める。 仲居「お待たせしました。どうぞお召し上がりください。おたつちゃーん、飯櫃を持ってきてちょうだーい」 喜多「仲居さん、こちらには相手をしてくれる女の人はいますか?」

2013-01-25 19:13:22
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仲居「はい、この間木曽海道の追分宿から来た子が2人おりますよ。よろしければ呼んでまいります」 弥次「お、いいねえ。かわいいの?」 仲居「まあー特別に美しいわけではありませんけど、十人並みってところでしょうか」

2013-01-25 19:13:29
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喜多「ははは、10人前の飯盛か。面白いな、呼んでください」 仲居「はい。ではのちほど」 仲居が出ていくとちょうど十吉が戻ってきた。 「お二人は女の子を呼んだのですか? いいですねえ~」 弥次「十吉さんもどうですか」 十吉「いえ、私は遠慮しておきます。ハハ」

2013-01-25 19:13:36
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

夕飯が終わるころ、再び仲居がやってきた。 「失礼いたします。女の子を連れてまいりました。さ、2人とも入って。おたけとおつめです」 おたけ「こんばんわ」 おつめ「よろしくお願いします」

2013-01-25 19:13:44
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