超意訳 東海道中膝栗毛 二編 上
- yajikita_douchu
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僧「旅のお方、どうぞお志をお頼み申します」 喜多「ははっ、お経が面白いから寄進して差し上げよう」 僧「お礼にお名を記しましょう」 弥次「では弥次郎兵衛とつけなさい」 僧「はい。俗名 弥次郎兵衛…と」 弥次「お、おい、まだ死んでねえぞ」
2013-02-18 19:00:53僧「あら、さようでございますか。いえここへは、お志の戒名を書き入れますのよ」 喜多「じゃあこう書いてくれ。『釈の急難困り果てて仏果菩提』はい、20円」 そそくさと行きすぎる。
2013-02-18 19:00:58松原の中ほどでは14~5歳の小僧が、茶を用意し菓子を並べて、半分遊びながら店番をしていた。 小僧「ちぃす。菓子買っていかねえっスか」
2013-02-19 19:36:32喜多「ちょうどいい、菓子でも食って休もう」 弥次「そうしよう」 椅子に腰掛け、菓子を食べる。 喜多「小僧、この菓子はいくらだ」 小僧「30円ずつっス」 弥次「5つ食ったからいくらだ」 小僧「自分、よくわかんねっス」 喜多「30×5で50円だ。ここに置くぞ」
2013-02-19 19:36:39弥次「安いな。じゃ、もひとつ食うか。これはいくらだ」 小僧「50円っス」 喜多「これもうまい。4つ食ったから50×4で100円だ」 弥次「餅も食うか」 喜多「おお、これもうまいぞ。これはいくらだ」 小僧「一個60円っス」
2013-02-19 19:36:45弥次「2人で6つ食ったから、60×6で180円だな」 小僧「あの…自分、九九とかよくわかんないんでー、60円を6回出してもらえませんか」 喜多「いや、えっ、そんなに銭があったかな…」 小僧「いち、に、さん、し、ご、ろく」 60円ずつ6回数えて金をとられた。
2013-02-19 19:36:51喜多「金があと少ししかねえ…」 小僧「ありぁたしたー」 店をあとにし、しばらく行って喜多が気づいた。 喜多「あれ?あの餅が一個60円もするわけないよな。せいぜい30円てとこだ。あああいつ、餅を高く売って、最初の菓子で損した分を穴埋めしやがった!」
2013-02-19 19:36:57弥次「はっ。そういうことか! んげっげっ、さっきの餅が喉に詰まった」 相手が子供だからと侮ってバチが当たったようだ。 やがて久沢の福善寺にたどり着き、曽我兄弟の石碑を拝む。 喜多「今曽我に 機縁を結ぶ われわれは 外に一家も 一もんもなし」
2013-02-19 19:37:03さらに進んで富士川の渡し場に着く。 弥次「ゆく水は 矢をいるごとく 岩角に あたるをいとう ふじ川の舟」 渡しを超える頃、日が西の山にかかり始めた。少し急ぎ足で歩き、雀も竹に止まるころ、ようやく蒲原宿へ到着した。
2013-02-19 19:37:08