東海道中膝栗毛 エピソードゼロ
- KumanoBonta
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「武蔵野の尾花がすゑにかかる白雲」と詠んだのは、むかーし海沿いの家からシギが飛び立つ夕暮れを見るのが好きで、まだ仲の町 (吉原遊里あたり) の夕景色なんて知らなかった頃のことだ。
2012-10-23 22:49:16今は井戸に鮎が紛れこんだ水をくむ毎日、土蔵造りの白壁が立ち並び、漬物の桶、俵、破れた傘の置き場まで、地主はタダでは貸してくれないほどの江戸の繁盛っぷり。よそから見れば江戸はまるで札束でも舞っているようにでも見えるらしく、江戸で一儲けしようとやって来る人間は数限りない。
2012-10-23 22:49:33弥次郎兵衛は親が商人のボンボン。百万二百万の金には困ったことがないという正真正銘のお坊っちゃまだ。ところが弥次郎兵衛は、安倍川町のキャバクラにハマり、その上、舞台俳優 華水多羅四郎の付き人である「鼻之助」という男に打ち込んでしまったのである。
2012-10-24 21:14:07鼻之助を相手に、弥次郎兵衛はすっかり男色に夢中になり、「黄金の釜堀りサイコー!うっひょー (*゚∀゚)=3」と有り金を散々使いまくる。
2012-10-24 21:14:17そうしてついに有り金を使い果たし、自分の身にまで穴を掘るハメになってしまい、鼻之助と2人駆け落ちし、府中を出て行ってしまった。
2012-10-24 21:14:29そうして弥次郎兵衛と鼻之助の2人はやがて江戸に来た。神田 八丁堀の路地裏にある小さな長屋に住み、残り少ないながらもある程度の貯金があるのをいいことに、毎日江戸前の魚を食い、豊嶋屋の剣菱を飲む。そんな毎日を過ごしているうち、ついに金が底をついてしまう。
2012-10-25 20:52:32@osawagase @yajikita_douchu @hrhkgaya 「江戸名所図会」に描かれた豊島屋です。http://t.co/ojO3zWYq
2012-10-27 17:21:002慌てた弥次はこりゃマズイと、まず鼻之助を元服させ「喜多八」と名乗らせる。そしてそこそこ大きな会社に就職させた。喜多八は要領がよく頭もよかったので、会社の上司にうまく気に入られ、わりとすぐに金の融通の利くほどのポジションに着いた。
2012-10-25 20:52:49一方の弥次はというと、ボンボン時代に習った油絵など描きつつ、その日暮らしでしのいでいる。食べる分だけの米や納豆、アサリなどなど、行商が通りかかるたびに何か買っては食べる毎日。そんな暮らしだから、金なんて残るわけがない。
2012-10-25 20:53:05弥次が着ている半纏は田舎に住んでたころから着続けているものだが、ほつれて中から綿が出ているというのに気にする様子もない。こりゃいくらなんでもヒドイと、近所の飲み仲間たちが見兼ねて相談し、彼に嫁を見つけてやろうということになった。
2012-10-25 20:53:26そうして、あるお屋敷に勤務する女性を見つけ、弥次と結婚させたのだ。彼女の名はおふつ。これがとてもよくできた女性で、割れた鍋は直すわ、服のほころびもきれいに繕うわ、家事をカンペキにこなして弥次郎兵衛をとても大切にして暮らした。
2012-10-25 20:53:46そんなよくできた妻に弥次は上機嫌。夜も早く寝るようになり、心を入れ替え暮らすようになった。…かと思いきや、それが10年経っても全く成長せず、貧乏暮らしは変わらなかったのであった。近所のワル仲間が夜な夜な集まってはドンチャン騒ぎの毎日が続く。
2012-10-26 20:47:28弥次郎兵衛が留守のある日、おふつが台所で明日のしたくをしていると、裏の家の奥さんがエプロン姿でやって来た。
2012-10-26 20:47:51おちょま「おふつさん、こんにちわー。ちょっとお醤油切らしちゃったの。貸してくださる? ……ね、そういえばさ、昨晩もおふつさんち、ずいぶん賑やかだったわね。うちのダンナもさぁ、いっつも全然帰ってこないのヨォ。
2012-10-26 20:48:18こないだなんかさ、夜中に帰ってきて、木戸をガンガン叩いて『あけろーっ』って大騒ぎしてんのよ。もう、大家の奥さんに文句言われちゃったわー。うちのダンナもアレだけど、あの大家もちょっとうるさすぎるのよね。
2012-10-26 20:48:35別に家賃を1年や2年ためたってたいしたことないのに、それをぎゃあぎゃあうるさいのよ。あそこにあるドブ板の腐ったところでも直しとけっての。あの大家、犬のフンだって自分ちの前しか片付けないのよ? 長屋の人たちをいったいなんだと思ってんのよ、ねえ。」
2012-10-26 20:48:55おちょまが大家の家をチラチラ見ながら悪口を話していると、今度ははす向かいの家の玄関口で赤ん坊に乳を飲ませていたおくんがやって来た。おくん「ちょっとちょっと、あんまり大きな声でそんなこと話しちゃダメよっ。奥の家のすました奥さんが、いま井戸のほうへ行ったわよ。
2012-10-27 19:45:01あのおしゃべり、大家の奥さんにいつもベタベタして、長屋の人たちのことあーだこーだってしゃべりまくってるみたいよー。そういえばさ、こないだからあそこの家に女の人が来てるの知ってる? 大家の奥さんの妹なんだって。どこかのお屋敷に勤めてたって言ってたけど、あきれるわよ。
2012-10-27 19:45:28ちょっと見たらわかるけど、すごくケバいのよ。おとといもどっか下谷のお屋敷へ面接に行くとか言って、ジャラジャラ着飾って出てったみたいだけど、あれ、どこかのご隠居の愛人になるらしいわよ~。なんでも、支度金が20万も出たんですって!
2012-10-27 19:45:52私たちだってさ、イケ面紳士だったら愛人になって支度金もらってあげてもいいんだけどねー。」「キャハハハ!(o^^)o 」「…あら、そういえばおふつさん、弥次さんはまだ帰ってこないの? 」
2012-10-27 19:46:25そこへ弥次郎兵衛がヨレヨレと戻ってきた。弥次「どけよこのクソ犬!人ん家の前でひっくり返って寝てんじゃねえ (#`Д´)σ 」おくん「あら、噂をすれば帰ってきたみたいよ。」おちょま「それじゃね、醤油ありがと(^^)」おちょまとおくんは、それぞれ自分の家へ帰っていった。
2012-10-27 19:46:53おふつ「弥次さん、お帰りなさい」弥次「ただいま。お茶を入れてくれるか」 おふつ「あら、あなた酒ばっかりでご飯はまだなの?」 弥次「当たり前だろが。居酒屋には行きましたけど、居飯屋には行ってませーん」
2012-10-28 20:16:42