超意訳 東海道中膝栗毛 二編 上

超意訳シリーズ第4弾。中の人(@KumanoBonta)のアカウントで編集ができなくなってしまったので、こちらから再度お届けします。 他の超意訳シリーズ(旅行用心集、東海道中膝栗毛エピソードゼロ、初篇)はこちらからどうぞ。→http://togetter.com/id/KumanoBonta
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

共の者に払わせ、店を出た。ほぼ同時に弥次と喜多も立ち上がり、 喜多「さ、行くとするか」 弥次「ごちそうさーん」 店員「はーい。お気をつけてー」 再び歩き始めた。同じ頃に歩きだした侍の後ろになったり前になったり、やがてならの坂を過ぎ、千本の松原で喜多八が歌を詠んだ。

2013-02-08 19:48:59
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「この景色 見ては休まにゃ ならの坂 いざたばこにや 千本の松」 たまたま近くにいたさっきの侍が、この歌を聞いて感心し、 侍「ほほぉ、うまく詠みましたな。あなた達は江戸の者か」 弥次「さようでございます。実は私共、昨日の宿で護摩の灰にやられてしまい、たいへん困っています」

2013-02-08 19:49:09
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

侍「それはお気の毒に。胡麻の灰は飛ぶから痛かったであろう」 喜多「いえ、ゴマの灰とは泥棒のことでございます」 侍「ドロボーとは何だ?」 喜多「泥棒…えー、盗賊のことでございます」 侍「はあ、何か、ドロボーとは人の物を盗る盗賊のことをいうのか」

2013-02-08 19:49:16
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弥次「さようでございます」 侍「で、そのドロボーのことをゴマの灰というわけか。なるほどわかった」 喜多「私共はその泥棒のせいで無一文になり、とても困っておりまして、府中で都合をつけるまでは飲まず食わずで行かねばなりません」 侍「それはご苦労な」

2013-02-08 19:49:24
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「そこでお侍様にお願いがございます。どうかこれを買ってはいただけないでしょうか」 喜多は腰に提げた革製の巾着を出して見せた。 侍「そうだなあ…旅の道すがらで売り買いは好ましくないが、そういう事情ならば仕方ないだろう。いくらだ」 http://t.co/IpNYkY0s

2013-02-12 19:31:43
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喜多「ありがとうございます。4000円でいかがでしょう」 侍「いやそれは高いな」 喜多「おいくらでしたら買っていただけますか」 侍「800円てところだろう」 喜多「もう少し高くとってもらえませんか」 侍「じゃあ810円」 喜多「いやもっと」

2013-02-12 19:31:49
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侍「820円」 喜多「いやいやいや」 侍「よーし、思い切って830円」 喜多「いや、そんな10円ずつでは話がつきません。では、ちょうどでいかがでしょうか」 侍「ちょうど? いくらのことだ」 喜多「ちょうどというのは1000円のことです」

2013-02-12 19:31:56
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侍「わかった、じゃあそのちょうどでいいぞ」 喜多「ありがとうございます。助かります」 巾着を渡し、1000円を受け取った。 喜多「これは新品なら根付も入れて5000円はする良いものですよ」 侍「そうか。わしには息子が2人おるが、これはよい土産になるな」

2013-02-12 19:32:03
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喜多「ご子息がお二人もいらっしゃるのですか。ずいぶんお若く見えます。失礼ですが、あなた様はおいくつですか」 侍「当ててごらん」 喜多「そうですねえ、37~8といったところでしょうか」 侍「私は巳年で42歳だ」 喜多「ずいぶんお若いですねえ」

2013-02-12 21:24:41
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侍「ありがとう。私の同僚に園原作野衛門と米津甚太夫という同い年の者がいるが、その中でも私は若く見えると言われている」 喜多「そうでございましょう」 侍「うちで働く女中たちは、私のことを歌舞伎役者の沢村宗十郎に似ていると言ってくれるぞ」 http://t.co/OKHIi8UL

2013-02-13 19:05:55
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喜多「ははあ、なるほどなるほど」 侍「ところでお前はいくつだ」 喜多「どうぞお当てになってください」 侍「ふーむ、そうだなあ、27~8ってところか」 喜多「いえ、ちょうどでございます」 侍「なに、ちょうど? 100歳か」 喜多「いや、これでございます」 指を3本出して見せた。

2013-02-13 19:06:01
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侍「はぁー、300歳にしては若いなあ」 全員「あはははは」 そんな話をしながら小諏訪、大諏訪を過ぎ、ほどなく原の宿へ着く。ここで侍と別れた。 喜多「ありがとうございましたー」 弥次「…まだ飯も 沼津食わずで うち過ぎて ひもじき原の 宿につきたり…」

2013-02-13 19:06:08
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「おまえまだそんなみっともないこと言ってるのか。さぁ、お侍さんにもらった銭で飯を食うぞ」 弥次「おお」 蕎麦屋へ入った。 喜多「蕎麦を二つ頼む」 蕎麦屋「いらっしゃーい」 ようやく食事らしい食事にありつき、2人ともバクバクと食べ始めた。

2013-02-13 19:06:15
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弥次「こりゃずいぶん太い蕎麦だな。たくさん食えるような気がしてちょうどいいや。なぁ、もう一杯食べようぜ」 喜多「ダメだ、そんな一度に使ったらもったいない。残りはまたあとで使おう。蕎麦湯をたらふく飲んで満腹にしようぜ」

2013-02-14 19:17:32
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弥次「そうだな。おーい、湯を持ってきてくれ」 蕎麦屋「はーいただ今」 喜多「薬を飲むのでもっとくれないか」 蕎麦屋「はい」 喜多「たくさん頼むよ。私の薬は出汁が入った湯でないと効かないから少し足してきてくれ」 蕎麦屋「はあ…」 2人でさんざん水分を摂り、店を出て再び歩き始める。

2013-02-14 19:17:38
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弥次「やっと気分が落ち着いてきたな。今食いし そばはふじほど 山もりに すこしこころも うきしまがはら」 ようやく少しはまともに歩けるようになり、やがて新田の立場へ来た。ここはうなぎが名物で、あちこちから蒲焼きの香ばしい匂いが漂ってくる。

2013-02-14 19:17:43
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

2人は鼻先をクンクンさせながら、 弥次「蒲焼の においを嗅ぐのも うとましや こちらふたりは うなんぎの旅」 喜多「まったくだ。食えないのに匂いが勝手に入ってくるなんてよ」

2013-02-14 19:17:48
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元吉原を過ぎて、かしわ橋にいたる。かしわ橋とは河合橋の当時の呼び名で、ここから正面に見える富士山は、裾野いちばんの絶景だ。 弥次「餅の名の かしわ橋とて 旅人の あしをさすりて 休みやすらん」 http://t.co/pvdFgYHq

2013-02-15 19:24:51
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中ぼんウラ話】かしわ橋についてはグーグル先生も知らなかったので、東海道専門家の岡本さんに問い合わせたところ、2分で解決しました。ご協力ありがとうございました。

2013-02-15 19:25:24
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

そして吉原宿に来た。宿場の入り口では茶屋の娘たちが、ここでもみな黄色い声で客を呼んでいる。 店員「いらっしゃいませー。お酒はいかがですかー。米の飯に、蒟蒻と葱のお吸い物もございまーす。どうぞお入りくださーい」

2013-02-15 19:24:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

馬方や駕籠かきも客を取ろうと一生懸命だ。 駕籠かき「どうぞー駕籠が空いておりまーす。今ならすぐに乗れますよー」 馬方「戻り馬だよー安いよー。お、旦那、乗って行きませんか」 弥次「いやぁ、ここまでずっと馬や駕籠に乗りっぱなしだったから、少しは歩いて行くことにするよ」

2013-02-15 19:25:04
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喜多「ずっと転びっぱなしだったけどな」 少し行くと、破れた編笠に扇子を持った老人が唄いながら近づいてきた。 老人「さぁさぁ酒だ♪ 肴はなんぞ~♪ そこの旦那さんがた、どうぞ少しばかりお恵みを」

2013-02-15 19:25:10
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喜多「俺たち護摩の灰にやられて、今金がないんだよ。どうぞ少しばかりお恵みください」 老人「なんだ、じゃあ寄るな。しっしっ」 さっさと行ってしまった。

2013-02-15 19:25:17
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

また少し行くと、今度は道端で居眠りをしている貧乏そうな僧に出会う。2人が近づいてきたのに気づき、急にお経を唱え始めた。

2013-02-18 19:00:42
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

僧「みょーほーれんげーきょ、経普門品第始終ごった闇、世間子息大分遊興毎晩三味線、音曲滅多無正、夜前大食翌日頭痛八百、羅和古灰、笑止千万、近辺医者早速御見舞、調合煎薬飲んだら食ったら腹張った心経~」チーン。 弥次「ぷぷっ」 喜多「ひゃひゃひゃっ」

2013-02-18 19:00:47
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