超意訳 東海道中膝栗毛 二編 上

超意訳シリーズ第4弾。中の人(@KumanoBonta)のアカウントで編集ができなくなってしまったので、こちらから再度お届けします。 他の超意訳シリーズ(旅行用心集、東海道中膝栗毛エピソードゼロ、初篇)はこちらからどうぞ。→http://togetter.com/id/KumanoBonta
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

夜が明け、寺から鐘の音とともに勤行の読経が聴こえ始める。鳥たちも餌を探し求めて飛びながら鳴く。 みな目覚めて起き、朝食の時間になった。 仲居「あら、もうお一人はどちらへ?」 弥次「そうだ、十公はどうした」 喜多「トイレじゃないっすか? じきに来るだろ。先に食べ始めよう」

2013-02-01 19:37:52
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

十吉がいなくなってることにかまわずに朝飯を食べ始めた。しかし十吉はとっくに裏口から逃げだしており、いくら待っても来るはずがない。弥次が辺りを見回し、不思議そうに、 弥次「なあ喜多八、十吉はどうしたんだろ」 喜多「そうだよな」

2013-02-04 19:34:54
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「なんか納得いかんなあ。あいつの風呂敷包も笠もねえぞ。俺達が寝ている間に行っちまったみたいだが」 喜多「ちょっと怪しいぞ。何かなくなってるもんはないか?」 部屋を見渡す。 喜多「うーん、とくに変わったこともなさそうだ」

2013-02-04 19:35:00
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弥次「いや、変わったことがあるみたいだ」 懐から胴巻きを出し振ってみた。ボトッ。紙に包まれた重いものが落ちてきた。開いてみると、みんな石ころだ。 弥次「ああああ…」 喜多「なんだなんだ」 弥次「金が石に化けた…」 喜多「でぇえええーっ!?」

2013-02-04 19:35:12
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弥次「十吉だ。あいつの仕業だ。おい仲居さん、ご主人を呼んでくれ、早く、早くっ!」 弥次の血相を変えた姿に、仲居もただ事ではないとあわてて主人を呼びに行く。主人は様子を聞いて、寝間着姿のまま駆けつけてきた。

2013-02-04 19:35:18
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主人「話は聞きました。いやいや、とんだ災難でした」 弥次「やいやいやい!どうしてくれるんだ。このままじゃ済まないぞ! あんな護摩の灰に宿を貸すんだからお前も上前を取ってるんだろう。なんで俺に知らせずあいつを外に出したんだ!」

2013-02-04 19:35:25
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

主人「なんてことを。私はお連れ様だと思って泊めたのです。今朝いなくなったことも存じません。おそらく裏口から出たのだと…」

2013-02-05 19:39:20
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弥次「言い訳だ!いいからあいつを出せ!俺を誰だと思ってるんだ。お江戸でも神田八丁堀の栃面屋弥次郎兵衛といったら知らない者はいねえんだぞ。この宿の柱を叩き壊して合羽の干場にでもしてやるわ!日が暮れる前にあの護摩の灰を連れてこい!」

2013-02-05 19:39:30
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主人「いやあ、そんなことを申されましても…お気の毒としか…」 弥次「なにがお気の毒の人麻呂だ。柿本四斗樽が聞いて呆れるわ。いいから四斗樽をさっさと連れてこい」 主人「四斗樽…ですか」 弥次「あの四斗樽を知ってて泊めたってことはお前も仲間なんだろ!」

2013-02-05 19:39:38
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主人「いやいや、なんということをおっしゃる。私共が四斗樽を泊めるなんて」 弥次「四斗樽? ちがう、護摩の灰だ!」 弥次があまりにギャーギャーとまくしたてるので、見かねた喜多が止めに入った。

2013-02-05 19:39:44
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喜多「おい弥次、もうやめとけ。ご主人だって被害者なんだよ。元はといえば俺達が連れてきたからだろ? 悪いのはこっちのほうだ。あきらめよう」 主人「こちらのお願いで相宿にしたのなら私共にも責任がございますが、今回の件につきましてはこちらでは注意のしようもありません」

2013-02-05 19:39:51
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喜多「その通りだ。弥次、怒ってもしかたないよ」 言われてみればそうだと弥次もようやく冷静になったが、それでもこの悔しさはおさまりきらず、ふさぎこんで黙ってしまった。 喜多「まあ飯でも食おう」

2013-02-05 19:39:59
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弥次「飯なんて食えるか。なあ喜多八、府中まで行けば少しは金の工面をするあてがある。とりあえずは一文無しで出かけよう」 二人はわずかに残った金を集め、なんとか宿代を払って出ると、あとは小銭だけが頼りになった。

2013-02-06 19:34:58
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あちこちで護摩の灰の行方を尋ねるが、いっこうに手がかりは掴めない。会話もなく、ショボくれながら歩き続ける。 「ことわざの 枯木に花は 咲きもせで 目をこすらせる ごまの灰かな」

2013-02-06 19:35:05
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喜多「弥次ぃ、そんなに落ち込むなよ。世の中なんてこんなもんだ」 「うき沈み ある世は次第 ふどう尊 いのれるかいも なき護摩の灰」 弥次「俺もう坊主にでもなりたい…」 喜多「何を言い出すんだ。元気出せ」 弥次「もう江戸に帰ろっか」

2013-02-06 19:35:11
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喜多「帰ることなんてあるもんか。抜け参りみたいに、柄杓を持って金を集めてでもお伊勢さまに行かなきゃ、世間体が悪いぞ」 弥次「でももう腹が減って歩けねえ」 喜多「そうだ、ここに江戸で言付かってきた代参の150円があるぞ。もう少し行ったら餅でも買って腹を落ち着けよう」

2013-02-06 19:35:17
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杖にすがりながらヨレヨレと歩いていくと、向こうから郵便飛脚が勢いよく走ってきた。 飛脚「えいさっさーえいさっさー」 喜多「韋駄天みたいな勢いだ」 弥次「うらやましい。あんな勢いよく走れるぐらいだから、さぞ昼飯もたんまり食ったんだろう」 http://t.co/cZMP4Fgm

2013-02-06 19:35:29
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喜多「乞食みたいなこと言うなよ」 飛脚「えいさっさーえいさっさー」 喜多「わ、あぶない」 すれ違いざまに書状箱の角が弥次の頭に当たってしまった。 弥次「いててて…」 しかし飛脚は気づかず行ってしまう。 弥次「うわあああん、何で俺ばっかりこんな目に遭うんだよー」

2013-02-06 19:35:36
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喜多「おい、大丈夫か? あ、こんどは馬が来たぞ」 弥次「馬方さん、次の宿場まではまだしばらくかかりますか?」 馬士「いや、すぐそこだよ」 弥次「あとどれぐらいですかね」 馬士「ほんの14~5㎞だよ。なんちゃってウッソー」

2013-02-07 19:35:18
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「こんなときにそういう冗談キツイぜ…」 やがて釜ヶ淵というところにいたり、ここでひとつ口ずさむが、腹が減っているせいか心が表れる。 弥次「名をきいて ほしやこがねの 釜ヶ淵 くちに孝行 したきゆへには」 喜多「口に孝行するために、小金の釜が欲しいってことか」

2013-02-07 19:35:24
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

ようやく店で餅を手に入れ、少しは腹の虫がおさまった。そして沼津宿にたどり着き、宿のはずれの茶屋へ入った。 店員「いらっしゃいませ。お食事になさいますか」 喜多「いや、さっきたくさん食べてきたところだ。茶だけたのむよ」

2013-02-07 19:35:30
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少しすると店に侍が入ってきた。田舎風の大きな髷に小紋の羽織姿、荷物を人足に担がせている。 店員「いらっしゃいませ」 侍「今何時かね」 店員「もう2時をまわりましたよ」 侍「何かいい酒があったら出してもらえないか」 店員「一杯400円のものでよろしいですか」

2013-02-07 19:35:36
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侍「もっと安いのもあるか」 店員「300円のものもございます」 侍「ふむ。それでは400円のと300円のを半分ずつたのむ」 店員「はい」 魚の煮付けとともに酒が出てきた。 侍「この煮付けはいくらだ」 店員「400円でございます」

2013-02-07 19:35:43
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侍「こっちは」 店員「150円です」 侍「そうか。おい伝助、おまえも一緒に飲もう」 伝助「はい」 侍「伝助、向こうで料理している女、奥田さんとこの奥様に似てないか」 伝助「似てますね。あっちで笑ってる女の人もきれいです」

2013-02-07 19:35:49
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侍「どれだ、あの柱によりかかってる女か。おぉ、きれいだ。さあ飲んでしまおう。そろそろ行くぞ」 伝助「はい」 侍「おーい、お勘定を頼む。こっちの肴は手をつけてないぞー」 店員「はーい。500円になりますちゃ」

2013-02-08 19:48:50
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