超意訳 東海道中膝栗毛 二編 上

超意訳シリーズ第4弾。中の人(@KumanoBonta)のアカウントで編集ができなくなってしまったので、こちらから再度お届けします。 他の超意訳シリーズ(旅行用心集、東海道中膝栗毛エピソードゼロ、初篇)はこちらからどうぞ。→http://togetter.com/id/KumanoBonta
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中ぼん】中山道の追分宿からやってきた、おつめちゃんとおたけちゃん (´∀`) ※個人のイメージです。 http://t.co/boBKrDCx

2013-01-25 19:13:55
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一人は紺の木綿に剣かたばみの紋が入った着物で、太い縞の帯。もう一人は紅い色の入った着物に藍色の帯、裾から赤い腰巻きがチラリと見える。まだ仕事が慣れていないと見えて、おずおずと恥ずかしそうに入ってきた。

2013-01-28 18:52:37
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喜多「さ、こっちへどうぞ。膳は下げて酒にしましょう」 仲居「はい、ではご用意いたします」 膳が片付けられ酒と肴が出てきた。 仲居「さ、おひとつどうぞ」 弥次「おう、ありがと」 弥次がひとくち飲んで盃を置くと、仲居は次におたけに差し出した。

2013-01-28 18:52:43
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おたけ「え、私も?」 飲むマネだけして喜多へ差し出すと、喜多がそれを飲み、今度はおつめに勧める。 喜多「次はおつめさんだよ」 おつめ「私達そんなに飲めないんです。あんまりすすめないで」

2013-01-28 18:52:49
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仲居「あらおたけちゃん、そのかんざしかわいいわね。あなた達のところではみんなそれを差してるの?」 仲居は、おたけが髪にさしている簪を指さした。おたけがそれを抜いて見せる。銀色の五菩薩が彫られている。

2013-01-28 18:52:55
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おたけ「これはきっとお江戸でも流行るでげの。私の田舎に金弥さんて人がいてね、野尻に住む彦十さんにこれと同じものを買ってもらったげで、すごく自慢してたの。私悔しかったから、大枚はたいてこれを買ったのよぉ。五万円もしたんだもし」

2013-01-28 18:53:01
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仲居「おつめちゃん、あなたが差してる櫛も見せて」 おつめ「これはダメっ」 嫌がって顔をそむけたが、仲居がサッと手を伸ばして取ってしまった。 仲居「あらっ? あらあらまあっ! この家紋、札の辻のとこの太郎左衛門さんのじゃない!」

2013-01-29 19:13:27
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おつめ「てへっ、バレちゃったかやあ」 おつめはひったくるように櫛を取り返し、髪に差し直した。おつめとおたけ、さすがに追分から出てきたばかりだけあって、二人で話しているときの会話は訛りが激しい。皆ときどき聞き取れず苦笑いになりながら宴会の時間を過ごした。

2013-01-29 19:13:33
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仲居「ではそろそろお開きにいたしましょう。お布団の準備をしますね」 十吉「じゃあ私は少し離れたところで休みますので」 弥次「まあまあ、こっちへ」 十吉「私が近くにいてはご迷惑でしょう」 仲居「さ、あなたたちも着替えてらっしゃい」 おつめ/おたけ「はーい」

2013-01-29 19:13:39
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布団が敷かれ、小さな屏風で間を仕切る。 おたけが弥次の床へやってきた。 おたけ「今日は冷えますね」 弥次「もっとこっちへどうぞ。遠慮はいらないから少し話でもしよう」 おたけ「私らのようなもんなぁお江戸の人には小っ恥ずかしくて何も話すことはござんなぇもし」

2013-01-29 19:13:45
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弥次「そんな恥ずかしがることなんてねえよ。おたけちゃんはいくつ?」 おたけ「お月様の歳」 弥次「ん、十三、七つで二十歳ってことか」 おたけ「そう」 弥次「おたけちゃんはおしゃれだな」

2013-01-30 18:52:49
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

おたけ「うふふ、私達、追分さから来て、ここのお客さん達さぁあじょしたらよかんべえか悩むわあ。なおかしお江戸の人達には気苦労が多くてなりましまい」 弥次「そのうち慣れるさ」 おたけ「どうぞ帯を解きなさろ。足を私の上へ乗っけなさろ」 弥次「おう、こうか?」

2013-01-30 18:52:55
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おたけ「それじゃ寝づらいこんだよ。もう少し下がって」 弥次「わかったわかった」 布団をすっぽりかぶり、しばらく無言。そのうち喜多の相手のおつめもやってきた。 夜も更け、助郷馬の鈴も聞こえなくなり、犬の遠吠えや猪除けの鳴子の音が寒さを一層引き立てる。

2013-01-30 18:53:00
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中ぼん】正直なところ、どこからどこまでが方言で江戸時代の言葉なのか理解しがたく、実際の方言と違うニュアンスになってるかもしれません (>Д< ;) ご容赦ください

2013-01-29 19:13:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

行灯の油も尽きて、真っ暗闇になった。シーン…。 …ガサ…ガサガサ…ゴソゴソゴソ… 十吉「ん…なんの音だ?」 喜多「うっうわあああー」 スッポンだ。床の間に置きっ放しのまま忘れられていたスッポンが、藁を食いちぎって外に出、喜多の布団に潜り込んだのだ。

2013-01-30 18:53:05
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多が驚いて飛び起きたので、スッポンもビックリしたのか慌てて喜多の胸に這い上がってきた。 喜多「うぎぁあああ!」 反射的に咄嗟に掴んで放り投げると、今度は弥次の顔にベッタリ命中。 弥次「うぎぁあああ!」 あわてて掴んだら、スッポンが弥次の指に食いついてしまった。

2013-01-31 19:36:10
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「いてえーっ!」 となりで寝ていたおたけも目を覚まし、 おたけ「きゃあっ!なに?あじょうしたえ?」 弥次「行灯に火をつけてくれえー。いてえよお」 おたけ「暗いからわかんない…どこー?」 手で探るうち、手がスッポンに触り、おたけも驚いて飛び上がった。

2013-01-31 19:36:18
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

おたけ「きゃあっ!」 その拍子に襖にぶつかり、襖ごとバタリと倒れてしまう。 喜多「おーい、だれかー早く来てくれえー」 おたけ「おたつさーん、灯りを持ってきなさろー」 弥次「早く頼むよぉ、ふえええ…」

2013-01-31 19:36:28
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寝床はみな大パニック。それを少し離れて見ていた十吉の素振りが何だかおかしい。弥次を助けるふりをして近づいたかと思うと、布団の下においていた胴巻きの財布を取り出した。そして、あらかじめ用意していた、紙に包んだ石ころと金をすり替え、また布団に戻す。

2013-01-31 19:36:34
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

十吉は「護摩の灰」と言われる旅人専門のドロボウだったのだ。弥次が金を持っているとみて近づき、旅の仲間に加わったのだった。 宿の女将が灯りを持ってくると、弥次の指にスッポンが食いついていてビックリ。 女将「あらまあ、どうしてこんなところにスッポンが?」

2013-01-31 19:36:42
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中ぼん】弱り目に祟り目的なダブルピンチ~。「護摩の灰」の護摩は仏教用語で、「ごまかす」の語源でもあります。くわしくはこちらをどうぞ。 http://t.co/H7yZODTO

2013-01-31 19:36:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

女将がペチペチとスッポンをたたいてみるが、いっこうに離れない。 喜多「ここに持ち込んだのを忘れて置いたままにしてたのが逃げだしちゃって…。スッポンだけにすぽんと抜けそうなものなのに」 弥次「バカヤロこんな時にイラッとくる冗談を言うな。わああ、血がでてきたよう」

2013-02-01 19:37:27
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

おたけ「あんだと思ったらガサだぁもし。その指をガサごと水に入れれば、じきに離してつん逃げもうすわ」 女将「あら、それもそうね」 女将が雨戸を開けると、弥次はあわてて駆けだし、手水鉢の中に指をつける。スッポンはすぐに離れて泳ぎだした。

2013-02-01 19:37:33
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「はああ、とんだ目に遭った」 喜多「いやー、こりゃなかなか経験できねえぞ。布団でスッポンに噛まれるとはなあ」 ドタバタで散らかった周辺を片づけ、まだ夜明けまで時間もあるので再び布団に戻った。うつらうつらとしながら、

2013-02-01 19:37:39
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「夜寝たちと 寝たる側には泥亀も はづかしいやら 指をくわえた」 同じく弥次も痛さを堪えて 「すっぽんに くわえられたる 苦しさに こちや石亀の じだんだをふむ」

2013-02-01 19:37:45
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