帝政ドイツ海軍の機関科将校

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こんぱすろーず @flowerclass

Herwig, “Luxury" Fleet: Imperial German Navy, 1888-1918 読了。帝政ドイツ海軍について、その建艦計画と第1次大戦中の行動を中心に戦略・技術開発・人事政策・社会的立ち位置といった点まで包括的に扱った通史。いい本でした。

2013-02-21 22:32:40

贅沢品艦隊

こんぱすろーず @flowerclass

ただし海軍に特化しているので、背景となる政治・経済状況やドイツの外交政策といった前提知識は必要になるかもしれない。それと註がないので引用・参照元の調べようがないのはちよっと欠点。充実した文献リストがあるのは救いだが、著者による短評でもあるともっとよかった。

2013-02-21 22:33:52
こんぱすろーず @flowerclass

「贅沢品」艦隊というタイトルの通り全般に帝政ドイツ海軍を、その目的に関する現実的な見通しを欠いたまま、国民の大国意識の昂揚と皇帝の寵愛(というか偏愛というか)に乗じて場当たり的に拡大していった、いわば「地に足のついていない」軍事組織として批判的に扱うトーンが強い。

2013-02-21 22:34:38
こんぱすろーず @flowerclass

大艦隊を整備して英国に脅威を与えれば英国は親独政策へ転換せざるを得なくなるはず、というティルピッツの「リスク」理論は、現実には全く機能しなかったばかりかドイツの外交的孤立の端緒になってしまったことや(続く)

2013-02-21 22:35:31
こんぱすろーず @flowerclass

「陽の当たる場所へ」の掛け声のもと、海外進出のために莫大な費用かけて海軍整備したはずが、肝心の植民地への投資やコミットについて海軍はたいして考慮した形跡がないといった海軍の政策決定のちぐはぐさについて、著者の評価はとても辛い。

2013-02-21 22:35:44
こんぱすろーず @flowerclass

とりあえず通読すると実態の良くわからない「海洋戦略」やら「国家のグランドデザイン」やらといった言葉に不信感がもりもり醸成されること請け合いである。

2013-02-21 22:35:58
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@flowerclass 実は、中世史の専門家であると同時にドイツ海軍史家でもあったヴァルター・フーバッチュ(阿部謹也のお師匠さん)の旧蔵書を、名古屋大学が購入しているので、名古屋通いされる気があれば、かなり、きっちりした史資料的基盤ができますがね。

2013-02-21 22:52:02

機関将校の扱い


参考

リンク okigunnji.com 指揮権とその継承とは|軍事知識|軍事情報 帝国陸海軍77年、自衛隊55年の歴史もこの意味で決して長いとは言えません

こんぱすろーず @flowerclass

ほぼ貴族と上層ブルジョア出身者のみによって構成された海軍将校団の閉鎖性と強い差別意識も批判の対象とされているが、その典型例として挙げられている機関科将校(大半がロワーミドルの出身者で占められていた)の扱いがちょっとひどい。

2013-02-21 22:52:21
こんぱすろーず @flowerclass

兵科の指揮権を持たないのは他の海軍でも見られることだが、機関将校は基地の士官クラブに入ることができず、また信じがたいことに兵科将校と個人的に友達づきあいすることすら、公的な譴責の対象となった。要は下士官兵とほとんど同じ扱いを受けていたのである。

2013-02-21 22:55:06
こんぱすろーず @flowerclass

昇進も中佐までに限られており、著しい人手不足に陥った大戦中もその扱いは全く変わらなかったため、海軍中央と兵科に対する反感を募らせたベテラン機関将校たちは、大戦末期には仮病で当直をさぼる、わざと帰艦時刻に遅れるといった消極的抵抗を繰り広げることになる。将校に叛乱起こされる軍隊ェェ…

2013-02-21 22:58:19
ぶんぞ @bunzo2221

@flowerclass 機関科の指揮官がいなくて出港できない帝政ドイツ海軍艦とかムネアツ

2013-02-21 23:00:53
こんぱすろーず @flowerclass

1917年夏の大洋艦隊のストライキの主導者は、多くの場合機関兵たちだったのだが、これは前述のような不満を自らも持っていた機関科将校たちが、その活動を黙認していた、あるいはそこまでいかなくとも厳しく取り締まることをしなかったことが原因の一つであったらしい。

2013-02-21 23:07:16
こんぱすろーず @flowerclass

@akagitsuyoshi 何度も名前が出てきたHubatsch、中世史のフーバッチュとは別人だと思ってました…。

2013-02-21 23:10:20
赤城毅/大木毅 @akagitsuyoshi

@flowerclass いやいや、同一人物(笑)。戦時中はOKWで戦時日誌の担当官をやっていたので、KTB/OKWの編者の一人でもあるのです。

2013-02-21 23:12:00
こんぱすろーず @flowerclass

『僕はドイツ語が読めない』

2013-02-21 23:17:56

解決策

こんぱすろーず @flowerclass

帝政ドイツ海軍の機関科将校の話続き。下層中産階級出身者の多かった機関科将校を、兵科将校は強く蔑視し差別したが、20世紀に入って機関科将校の出身階層が上昇するにつれて、そのような待遇に機関科側から強い不満が生じるようになった。では海軍はその問題をどう解決することにしたか?

2013-02-24 22:04:34
こんぱすろーず @flowerclass

機関科将校の待遇を兵科と同等にしたのか?いや、アッパーミドル以上の社会階層出身者を機関学校の志願者から排除し、機関科将校の出自を低い身分に無理やり抑え込むことによって制度的な差別を正当化することにしたのであった(1907年の措置)……階級社会怖い。

2013-02-24 22:07:57
こんぱすろーず @flowerclass

この措置を主導した海軍内務局長フォン・ミュラー中将自身が、名前からわかるとおり代々の貴族の出身者ではなく、将官昇進と同時に貴族に列せられた人物であるのもなんとも…(父は農業学校の教員)。

2013-02-24 22:10:43
こんぱすろーず @flowerclass

「機関将校候補生が中間層以下の過程から補充されることが望ましい。われわれはそれによって機関将校を自らにふさわしい従属的地位に逆戻りさせることができるであろう。」海軍教育総監フォン・ケルパー大将 1911年

2013-02-24 22:13:40