茂木さんの朝の連続ツイート2010年8月
国境(5)任意の二国関係をとった時に、そこに何らかの領土問題が存在している確率は高い。世界の領土問題の所在を客観的、統計的に見れば、それはつまり、そもそも国家というものが土地を領有するという慣習に内在した「脆弱性」であることが見えてくる。
2010-08-11 09:00:05国境(6)たとえば、ヨーロッパにおける領土問題の分布マップ(http://bit.ly/9IBvM6)を見ると、領土問題というものが、特定の国家の悪意や怠慢によるものというよりは、ある統計的プロセスを通して生まれてくるということがよくわかる。
2010-08-11 09:03:38国境(7)数学では、ある問題に取り組む時に、それをより一般化した問題にいったん拡張しておいて、その上で解を見つけ、特定の問題に戻すということがよく行われる。国境問題にも、同じようなアプローチが必要だと考える。
2010-08-11 09:05:41国境(8)国境問題の本質は、二国間の境界を定める「ゲーム」を定式化し、そこに生じる偶有性の構造についての何らかの「モデル」を立てることによって、はじめて見えてくるだろう。そのような理論的、実証的仕事が持つ意義は大きい。
2010-08-11 09:07:52独学(1)私が学部学生の頃は、大学に関係しないと得られない学術情報があった。物理で言えば、Physical reviewやPhysical review lettersなどの雑誌は、大学図書館に行かなければ読めなかった。
2010-08-12 07:23:03独学(2)今や、ネット上で、論文や古典的文献など、多くの学術情報を簡単に(多くの場合無料で)得ることができる。独学者の時代となった。大学の唯一の役割は、「もったいぶること」と言われても仕方がない時代である。
2010-08-12 07:24:00独学(3)独学者の系譜。トマス・エディソン、マイケル・ファラデー、アンリ・ファーブル。科学哲学者のトーマス・クーンは、哲学を独学で学んだ。論壇デビューした時、彼は高校の教師であった。
2010-08-12 07:24:56独学(4)インドのラマヌジャンは、数学を独学で学び、イギリスのケンブリッジ大学の数学者たちを驚かせる独自の成果を挙げた。大学などの高等教育機関に行くことが、達成の「必要条件」ではないことは明かである。
2010-08-12 07:26:16独学(5)独学者が注意しなければならないことは、独善的になったり、へんな癖がついてしまうことである。各分野における標準的な体系は何なのか、その知識は身につけておいた方がよい。その点で大学のカリキュラムは参考になる。
2010-08-12 07:27:26独学(6)安藤忠雄さんは、十代の一年間一日16時間独学して建築の知識を身につけた。その際、京都大学に進学した友人に、どんなことを勉強しているのか、どんな教科書を使っているのかを教えてもらったのだという。大学のカリキュラムの情報が、スタンダードを押さえるために役立った。
2010-08-12 07:29:25独学(7)カリキュラム情報と、独善的にならないための討論の仲間がいれば、ネット上で独学することは今では容易である。そのうち、ウェブ独学者からノーベル賞受賞者が出てきてもおかしくない。アメリカでは、ホームスクリーリングが普及している。
2010-08-12 07:31:08独学(8)フェルマーの最終定理、ポアンカレ予想は、それぞれ、ワイルズ、ペレルマンが数年間籠もることで解決された。その分野のスタンダードな素養を身につけ、問題を見きわめたら、独学こそが最も生産的であるという実証である。
2010-08-12 07:33:04独学(9)独学の精神は、意味のない学歴信仰、大学ブランド化の病理に対する爽やかな一服の清涼剤となる。自分の中に、「いざとなったら独学すればいい」という覚悟を一つ秘めておくことをオススメする。
2010-08-12 07:34:19独学(10)ドストエフスキー、ソルジェニーツィンなどの多くの名作の翻訳で知られる江川卓さんのロシア語は、独学で習得された。
2010-08-12 07:36:00独学(11)独学についての英語の情報を検索する上で役に立つキーワード。autodidact, autodidacticism, self-taught, homeschooling
2010-08-12 07:39:09美人(1)人間の性選択においては、顔の特徴が重要な意味を持ってきた。とりわけ、歴史的には、男性による女性の選択において、顔が重要であった。いわゆる「美人」である。
2010-08-13 05:22:47美人(2)すべての女性の顔のデータを取り込んで、その「平均」を計算すると「美人」になることがわかっている。すなわち、「美人」とは「平均顔」のことである。
2010-08-13 05:23:23美人(3)美人の顔の「黄金比」があり、瞳の間の距離が、顔の幅の46%、瞳を結ぶ線と口との間の距離が顔の長さの36%が理想的な比率とされる。そして、この比率は、「平均顔」の数値と一致する。
2010-08-13 05:24:25美人(4)脳は、どのようにして「美人」=「平均顔」を認識するのか? 生まれてから、さまざまな女性の顔を見て、それらのデータを蓄積し、一つの「テンプレート」として平均顔の情報表現が形成されるのかもしれない。
2010-08-13 05:26:22美人(5)生まれ落ちてから出会う女性の顔の「平均」が美人になるのだとすると、時代とともに「美人」の基準が変化することが説明できるかもしれない。いわゆる「平安美人」は、「平安時代」の女性の顔の平均顔だった可能性がある。
2010-08-13 05:30:41美人(6)「美人」が男性による性選択において重要な意味を持って背景には、男性の社会的地位という視点からの「ステータス・シンボル」という側面があった。すなわち、男性間の競争の結果、上位に立った男性が、美人を獲得するという現象(英語で言うtrophy wife)が見られた。
2010-08-13 05:33:56美人(7)「美人」基準が男性間の競争を拝見としていることの一つの結果として、いわゆる「美人コンテスト」効果がある。すなわち、自分が美人だと思う人でなく、みんなが美人だと思うであろう人を欲するという傾向である。
2010-08-13 05:35:12美人(8)自分の基準で「美人」だと思う女性を選んでも、もし、それが大多数の男性の「美人」基準と異なる場合、ステータス・シンボルになりにくい。このことから、「美人」基準は一つの型に収束する圧力を受ける。
2010-08-13 05:36:31美人(9)逆に、女性は、男性の見かけはもちろんのこと、その性格、生命力、生活力、コミュニケーション力などを総合的に見る傾向がある。男性に比べると、女性の側からの性選択は、より内面、実質重視である。
2010-08-13 05:37:45