ヨウカイスレイヤー「スプリング・スプリングス・ユーレイ・アンド・ロスト・ソウルズ」#2

YOUKAISLAYER @YKSLYR

「スプリング・スプリングス・ユーレイ・アンド・ロスト・ソウルズ」#2

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タカギ・マリサはジメジメとした洞窟内を進んでいた。その隣には、カスタムパーツが埋め込まれ地上との交信が可能とされたオーエド人形。百メートルおきに設置されている松明のほとんどは火が消えており役に立たない。薄明かりの中、タケノコめいた鍾乳石から垂れる水音が静かに反響していた。1

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この洞窟はスペルカード・ルールが制定されるよりも前に一度通った道だ。マリサは懐古する。「今度は地底世界か。どんな奴がいるだろうかな、火星人とかか？」(火星人？)人形が、正確には人形を通じてハクレイ・シュラインのコタツを囲むアリスがオウム返しにした。「いや、カートゥーンの話さ」2

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(地底のヨウカイなんかどんな奴だって出会い頭に倒すべきだ！)ニトリが声を荒げる。(元とはいえ仲間を悪く言われるのは心外だねぇ)(貴方も山では悪く思われてるのですがね)スイカの言葉に被せるようにアヤが言った。「オイオイ、そっちはもう仲間割れか？」(日常の風景です)とアヤ。3

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マリサの状況はオーエド人形内臓の小型カメラアイを通じてサポートメンバーたちに届けられている。「今のところは順調だな」マリサはハッケ・コンバーターを胸元で構えた。最大出力であれば並のヨウカイであれどネギトロになることは必然の火力を持つマスタースパークだが、撃てる数は限られる。4

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マリサが意気込んだその時である！「イヤーッ！」上空から反響したシャウトと共に何かが飛来！「ウオオーッ！」マリサはすんでの所で側転回避！人工的に洞窟の上部がくり抜かれており、そこからダンマクが飛来したのだ！予想外の攻撃にマリサは動転、ハッケ・コンバーターを取り落す！5

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「イヤーッ！」さらに上空からシャウト！「イヤーッ！」マリサは得物を拾うと、頭上にぽっかりと空いた穴から逃げるように飛んだ！KADOOM！舞い上げられた瓦礫と共に姿を現したのは、ロープで繋がれた風呂桶の中で顔を出す……ヨウカイ！「ワタシのアンブッシュを破るとは。腕が立つと見える」6

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「褒めても何も出ないぜ？」マリサが言った。「あいにく、もっとアンブッシュがうまい奴が友人にいるからな」「何？」「イヤーッ！」「グワーッ！」マリサの背後から円弧を描くように飛来したザ・フートンが狙い違わずアンブッシュ者を直撃！「イヤーッ！」さらに追撃のザ・フートン！「サヨナラ！」7

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ヨウカイを守護する結界が風呂桶ごと爆発四散！「こうすべきと言ったな」ハクレイ・レイム＝ヨウカイスレイヤーは先に進みだした。「あっけない奴だったぜ」マリサは後ろを窺う。結界が破壊されるとヨウカイは一定期間全ての力を失う。これは不老長寿の彼女らにとって死の疑似体験のようなものだ。8

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(今のは……アンブッシュだけに特化したヨウカイね。ツルベ落としの類だと思うわ)パチュリーが冷静に分析した。(あれはアンブッシュなの？)「アイサツ前の攻撃は全てアンブッシュだ」アリスのつぶやきにヨウカイスレイヤーが答えた。(貴女がそう言うならそうなのでしょうね)　9

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無慈悲な地底殺戮部隊はマリサを先頭にオーエド、陰陽玉そしてレイムの順に続く。「今どのくらいの地点だ？」(位置が分かる機能はついてないんだ)ニトリがうつむく。(次はその機能も付けておくよ)「次だって！二度とゴメンだぜ」「そもそもそんな機能が作れるのか？」「どうだかな」10

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「……」ヨウカイスレイヤーは会話をやめ、集中し別の敵ヨウカイが発するソウルを探知しようとする。だが彼女のニューロンの同居者、ゲンジイはエンマ・ヨウカイとの勝負を境に力を失い、未だその存在を再認知できずにいる。人間の彼女だけではソウル探知は不可能なのだ。11

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(そんなことしなくても、さっきみたいに即スレイする方がアナタらしいわ)「そうか」レイムは集中を解いた。ユカリに言われたからではない。前方、緑色に光る二つの眼を認識したからだ。「その身なりは地上で噂のヨウカイスレイヤー＝サンとタカギ・マリサ＝サンだな。ドーモ、パルスィです」12

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パルスィは構えをとった。明らかな敵意。「ドーモ、パルスィ＝サン。タカギ・マリサです」「ヨウカイスレイヤーです」二人はアイサツを返し、自らの体を守護する結界を張った。敵との距離はタタミ20枚分くらいか。パルスィの声は洞窟内で反響しその距離を感じさせない。13

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緑眼は動かない。まばたき一つせずマリサたちを見据えている。(あんたは橋姫だな。嫉妬心を操るサンシタめが)「その人形が言うとおりだ。確かに我が能力は貴様らを嫉妬に狂わせる、それだけのちっぽけな能力だ」頭上で消えていた松明に超自然の火が付き、彼女の輪郭を映し出す。14

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「だが貴様らはそのちっぽけで下賎な能力の前に破れるのだ」「地底のヨウカイは攻撃せず自己紹介を長くやるルールでもあるのか？」ヨウカイスレイヤーはジュー・ジツを構え、静かに挑発した。いつの間にか口元にはメンポが装着されている。「来い！」パルスィが目を瞑った。その時！15

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轟音と共に地面が爆ぜ割れ、雑魚ヨウセイやダンマクの残骸などを巻き込んだ！振動でツララが砕け割れ、文字通りダンマクの雨となり二人を襲う！「イヤーッ！」ヨウカイスレイヤーはマリサを抱えバックステップでこれらを回避！ガレキを一通り飲み込んだ地面から、黒塗りの二本の脚が現れる！16

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機械！クモ脚を思わせる脚がさらに四本、ヨウカイの体とともに這い上がってきたではないか！崩れた地面をならすように蠢く脚はヨウカイ自身の脚を合わせて八本！そのシルエットは巨大なタカアシグモを思わせる！コワイ！奇怪！17

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「ドーモ、クロダニ・ヤマメです」サイバネ脚をアタッチメントした生身のヨウカイが両掌を合わせアイサツした。「上からの次は下からか、忙しい奴らだな」本日二度目のアンブッシュ攻撃を受けたマリサが悪態をついた。「イヤーッ！」パルスィがヨウカイスレイヤーめがけダンマクを射出する！18

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(土蜘蛛がサイバネティクスを……！我々の極秘最新技術が何故地底に！？)ニトリはオーエドから送られている映像を見ると、激昂した雰囲気でコタツを叩いた。ユカリもいつになく真剣な表情で映像を睨み、チャを飲んでいる。スクープ、と呟き立ち上がろうとするアヤをアリスがとどめる。19

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大混乱のシュライン戦略コタツをよそにヨウカイスレイヤーは大量のタタミ針ショットを放つ！ダンマクと相殺！「イヤーッ！」マリサがマホウ・ミサイルを放ち、体に似合わぬサイバネ脚を破壊しにかかる！「イヤーッ！」バランスを崩しながらもヤマメはテクノダンスめいたステップを踏み何とか躱す！20

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「随分と動きにくそうだな、ええ？全てもいでやるぜ、すっきりするぞ」「……慣れてないだけだ！イヤーッ！」ヤマメはクモ脚をぎこちなく操作し、体を突き刺すようなケリ・キックを放つ！「イヤーッ！」マリサはバク転で回避、着地と同時にレーザーダンマクを照射！「グワーッ！」脚の一本が破壊！21

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ヨウカイスレイヤーも奇襲をかける！パルスィが放つ巨大緑色ダンマクをグレイズ回避しながらヤマメの真下に着地、スライディングからのサマーソルトキックで強固な金属製サイバネ脚を破壊！(イヤーッ！)さらに陰陽玉の支援攻撃！質量のある霧めいたダンマクがサイバネ脚を貫通破壊！残る脚は三！22

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「まるでボーナスステージだぜ。見かけ倒しかよ」マリサは残った三本の脚による攻撃とダンマクを巧みに回避してゆく。「イヤーッ！」KABOOM！出力を極限まで下げられた、しかし破壊力は十分なマスタースパークが反対側のサイバネ脚関節部に直撃、破壊！「グワーッ！」残り二本！23

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「随分と脆いオモチャだ」ヨウカイスレイヤーはクモ脚の処分をマリサに任せ、パルスィの方へと走った。仕掛けてこなかったのは土蜘蛛のアンブッシュを成功させるためだけだ、というユカリからの通信を信じ、自称サンシタであるこのヨウカイを抹殺せしめようという算段である。「ヨウカイ殺すべし」24