金明秀さんによるピエール・テヴァニアン講演報告

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金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

それはこの間の論争の中でも常々確認してきたこと。とくに教育現場はこの問題にどう対処するのかということで激しい論争が繰り広げられた。そこで出てくる発言の中には、ムスリム系住民に対するかなり露骨な差別発言が目立った。

2013-05-06 23:45:55
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

それは私にとって驚きでもあった。なぜなら教員の世界というのは相対的に上品な世界で、差別がタブー視される世界だったから。その世界で、さまざまな露骨な発言がこの論争で聞かれたのである。

2013-05-06 23:46:31
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

それまでは外国人とかアラブ系の人々とか言ったつつましい表現が使われていたが、この論争では語彙がどんどん露骨になっていった。イスラーム、原理主義者、テロリストがいっしょくたになっていった。あたかもそれまで潜在していた差別意識が噴出したかのように。

2013-05-06 23:47:06
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

文脈のまったく異なる諸外国の状況とが混同されて議論されていった。イラン、アルジェリア、等々。ベールを着用することはアラブの人間に多いレイプに加担することだとか、ベールはセクシズムに加担しているといった議論も。voileとvioleを引っかけた揶揄表現などが用いられた。

2013-05-06 23:48:42
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

こうした偏見が出てくる背景を探っていくと、植民地期の偏見というものが浮かび上がってくると思う。植民地期にムスリム系の男性は性的に暴力的だという偏見があった。それがある意味でスカーフ論争を通じてよみがえってきた。

2013-05-06 23:48:58
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

こういう加熱した文脈の中で、同僚の口から、ベールの女の子たちは「売女」だという発言が出てきたり、ムスリムに洗脳されたくないという発言もあった。

2013-05-06 23:49:16
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

かつて社会学者のピエール・ブルデューが的確に分析したことが当てはまる。「スカーフを受け入れるべきか」という問いの背景には「アラブ人を受け入れるべきか」という問いが潜んでいる。問いを言い換えることでいやしい問いを正直に書けるようになる。問いを言い換えることで隠れた本音が噴出する。

2013-05-06 23:50:25
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

もう一つ強調しておきたいことは、教育現場における権威の喪失。教員たちの権威が危機に瀕しているという問題。

2013-05-06 23:51:04
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

教員はフランスでは一般に叩かれる傾向にあるが、スカーフ論争が起きたことで、同情の目で見られるようになった。学校では大変ですね、と。

2013-05-06 23:51:33
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

いま権威の失墜といったが、その背景には教員たちが「いかに教えるか」ということに自信を失っているかということがある。どの高校にもスカーフの生徒たちは10人程度。それに「脅威を感じる」と主張する教員がいるのはなぜかというと、教員たちが一般に自信を失っているから。

2013-05-06 23:53:38
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

教員たちの自信喪失の背景に何があるかというと、規律が失われつつあるという問題。具体的には、教育の大衆化。進学率の上昇には非常にポジティブな側面もあるが、今まで高校まで進学しなかったような生徒たちが高校に来るようになった。それが自信喪失に結びついている。

2013-05-06 23:54:17
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

今まで高校に来なかった労働階級の子どもたちが高校に進学するようになると、ホガードが反学校文化という言葉で述べていることだが、子どもたちがおしゃべりしたり言うことを聞かないという現象が目立つようになった。

2013-05-06 23:55:01
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

ホガードはこういった労働階級の若者たちが何ごとに対しても無関心な態度をあえてとることを説明している。かりに知らないことがあってもおじけづいている様子を見せない、マッチョに無関心を装う、そういう特性がある。

2013-05-06 23:55:44
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

こういったいままで高校に来なかった新しい生徒たちに対して、教員は驚いてしまって適応できない。それまで尊敬されて、先生のお言葉を拝聴するという状態になれてきた先生たちが、今までとは違った態度をとる子供たちに怖気づいてしまったということがある。

2013-05-06 23:56:06
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

もう一つの問題として、一連の教育をめぐる改革がちょうど同じ時期に行われていって、公教育への予算が削られていった。また教員の労働条件がどんどん悪くなっていった。このことがスカーフ論争の裏で起きていた。

2013-05-06 23:59:07
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

具体的にいうと20年前から教員たち(大半が公務員)は働かない、なまけものというバッシングが起きてきた。マスコミだけでなく教育大臣もそういう発言をするほど。

2013-05-06 23:59:24
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

教員バッシングをしていたマスコミ、雑誌が、2003~4年にかけて、突如それまでなまけ者扱いしていた教員を「被害者」、「イスラム原理主義と闘っている」と英雄のように取り上げ始めた。被害者から英雄として扱われるようになった。スカーフ論争が起きてホッとしている教員も少なくなかったはず。

2013-05-06 23:59:57
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

だから、スカーフ論争はある種つくりだされた「神話」であるというわけです。一つは、この論争は教員たちのナルシズムを満足するものだった。もう一つは、教員たちが抱えている不安の原因はスカーフをかぶっている子どもたちではなく、予算削減や労働環境悪化。それがすり替えられてしまった。

2013-05-07 00:00:44
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

2004年にスカーフ禁止法が作られて、1年目は115人の生徒が学校から排除された。法律が作られたことで「どうせ排除される」と思って、もう学校に履修登録に行かなかった子どもたちもいる。非公式の数値は200~400ともいわれている。

2013-05-07 00:03:02
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

2004年に法律が作られた後も「スカーフ問題」は続いている。髪全体ではなく一部をバンダナで覆っている学生に先生が外せという問題だとか、スカートが長すぎるから短くしなさいと先生から批判を受ける生徒が今年も出ていることだとか。

2013-05-07 00:04:09
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

2004年の法律はある意味での保守革命。それは2つのレベルでいえる。一つには、ライシテといういままであくまで教員の側、教科書の内容など教える側の中立性を定めた法律だったものが、生徒の中立性を強要するような法律に変わったこと。もう一つには…

2013-05-07 00:05:19
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

法の運用が主観的、恣意的に適用されるようになってしまったこと。2004年の秋、教育省から法を適用するガイドラインの通達が出た。それに従って、多くのムスリムの女の子たちはスカーフをやめたが、宗教を想起させない形でバンダナ、ベレー帽をかぶるなどの戦略をとった少女たちもたくさんいた。

2013-05-07 00:07:20
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

にもかかわらず、それらが「宗教的なものを想像させる」と禁止された。ひどいものになるとスカートの長さが長いだけで「宗教性を喚起させる」ということで禁じられた。このように、現場レベルで主観的、恣意的に法の適用が行われるようになってしまった。

2013-05-07 00:08:11
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

2011年には学校の送り迎えにベールの女性が来るのを禁じるべきだという声。12年には保育ママに応募するのにベールの女性を禁止すべきだという議論。13年には子どもを保護するためにベールの女性が子どもに近づくのを禁止するべきだという議論。ざっとこういう出来事が間断なく起こっている。

2013-05-07 00:12:34
金明秀 Ꮶɨʍ, ʍʏʊռɢֆօօ @han_org

…という感じの講演内容でした。

2013-05-07 00:13:12