#twnovel 『無惨歳時記―春夏禾―』

花のやうな少年乃慾望の歳時記 『無惨歳時記―火冬―』 http://togetter.com/li/574314
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♍≠様♍ @XavierCohen

ずぶ濡れの人夫達の手で橋脚に縛り付けられている間も、ずっと中洲先輩は祈り続けていた。「蒔子さんも、美律さんも、此の町の誰一人とて決して貴方には渡さない。私の身体一つで満足召されよ」―嵐の後、私達はまん丸な月を観ながら御団子を食べた。芒を揺らす風は少し冷たかった。 #twnovel

2013-09-18 17:40:00
♍≠様♍ @XavierCohen

餓へてゐた。老いたけだものにはもう獲物を追ふ事すら儘為らぬので在つた。幾日も闇を彷徨ひとうとう森から抜けると空には煌煌と満月!其れが村人には禍で在つた。半ば盲ひだけだものの目にさへ獲物の姿は明瞭に見て取れた。 殺戮せるけだものは謡ふ。―うさぎうさぎなにみてはねる #twnovel

2013-09-20 17:53:47
♍≠様♍ @XavierCohen

雨滴の銀の針に縢られて、畦道に額を擦り、災厄の元凶たる王の御練りを、崇拝と憂懼と無関心を装い乍ら遣り過ごす、膚は裂け、身は削落ち、赤く染まる畑で枯れる麦の穂を転がり落ちた虚ろな眼球が眺める、或る満月の夜に跪拝する骸骨が青白く曝される。―凡そ農民は此様に死にゆく。 #twnovel

2013-03-13 14:08:11
♍≠様♍ @XavierCohen

稲刈りもすつかりと終はり農夫達が夕餉に向かふ頃、案山子は傘を脱ぎごろりと田んぼに寝そべつた。ホォと吐く溜息の甘ひ香りに誘はれて虫や鳥や鼠等の小動物が集まる。体中を啄み齧られじくじく赤ひ液体を滲ませ乍ら、案山子はへの字口をにんまり歪めた。今年も佳い年であつたなと。 #twnovel

2013-09-30 17:33:49