#短歌の文語 百人一首篇
【百人一首/86】なげけとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな(西行法師) 「やは」反語 「かこち顔」(自分の物思いを)何かのせいにしているような私の顔 おいこら定家。西行ならほかにもっといい和歌があんだろ。選歌基準がおかしい #短歌の文語
2013-06-28 20:53:21【百人一首/87】村雨の露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕ぐれ(寂蓮法師) 「ひぬ」干ぬ〈乾かない〉 こんなん、一字決まりじゃなかったらぜってー覚えねえ。 #短歌の文語
2013-06-28 20:55:59【百人一首/88】難波江の蘆のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき(皇嘉門院別当) 「刈り根」に「仮寝」を掛け「仮寝の一夜」でこれは遊女 難波名物「澪標」に「身を尽くし」を掛けるのは定番 「や」疑問 「恋ひ渡る」〈恋し続ける〉和歌では大概「渡る」を掛ける #短歌の文語
2013-06-28 21:00:21【百人一首/89】玉の緒よたえなばたえねながらへば忍ぶることの弱りもぞする(式子内親王) 「玉の緒」命 「絶えなば絶えね」→「な」「ね」は完了「ぬ」の未然形と命令形。〈絶えてしまうなら絶えてしまえ〉 「もぞ」→係り結びの強調で〈〜してしまう、〜してはいけないから〉 #短歌の文語
2013-06-28 21:06:01【百人一首/90】見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず(殷富門院大輔) 未然形+「ばや」〈〜したい〉見せたいわ 海士の袖は濡れても色が変わらない(けどわたしの袖は涙に濡れて色が変わってしまったほどよ) #短歌の文語
2013-06-28 21:09:40ところで式子内親王が「玉の緒よたえなばたえね…」と詠んだ激しい片恋の相手は、慈円だったという説があります。皇女が僧侶萌えってのはかなりまずいことだったはず。 #短歌の文語
2013-06-28 21:12:50【百人一首/91】きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む(後京極摂政前太政大臣) 「や」詠嘆ということになっているけど単に語調を整えるために入れてある 「さむしろ」→「筵」に接頭辞「さ」を付け「寒」を掛ける (続 #短歌の文語
2013-06-29 23:04:07承前)「衣かたしき」→当時は男女が寝るときは互いの衣の袖を相手の枕のように敷いたので、「かたしく」(片方だけ敷いている)とはつまり独り寝のこと。 「ひとりかも寝む」=「ひとり寝むかも」=「ひとり寝むかな」 「かも」「かな」はほぼ同じ詠嘆だが前者が古い #短歌の文語
2013-06-29 23:09:52【百人一首/92】わが袖は潮干にみえぬ沖の石の人こそしらねかわくまもなし(二条院讃岐) 「潮干」引き潮 「沖の石の」〈ように〉を補う 「人こそ知らね」→「人知らず」の係り結び。「こそ」…已然形で逆説 引き潮でも水の上に見えない沖の石のようにわたしの袖は濡れたまま #短歌の文語
2013-06-29 23:13:41【百人一首/93】世の中はつねにもがもななぎさこぐあまの小舟の綱手かなしも(鎌倉右大臣) 「つね」永遠 「もがも」〈〜であればいいのに〉という願望 「かなし」古語では〈哀し〉〈悲し〉〈愛し〉など、「あはれ」と同じく多義 「も」詠嘆 #短歌の文語
2013-06-29 23:17:36すいません、「海士の小舟の綱手」に「かなし」という感情を持つ感覚がよく分からないので、詳しい方のご解説をいただきたいところです。 #短歌の文語
2013-06-29 23:18:43【百人一首/94】み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり(参議雅経) 「なり」〈聞こえる〉衣を打つ音が聞こえる 冬が近づくと衣を打って布を柔らかくするというのが風物詩だったみたいです #短歌の文語
2013-06-29 23:22:03【百人一首/95】おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣に墨染の袖(前大僧正慈円) 「おほけなく」身の程知らずにも 「杣」きこりが木を切り出す山=比叡山 「墨染」僧服 だから慈円ならほかにもっといい和歌があんだろ真面目に選歌しろ定家 #短歌の文語
2013-06-29 23:24:26詠嘆の助動詞「けり」は、こういうときに使います。「われは猫なりけり」 #短歌の文語 QT @10fucking_laugh: 吾輩は猫だったんだ http://t.co/dpLRTFvIVu
2013-06-30 18:01:43【百人一首/96】花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり(入道前太政大臣) 「さそふ」〈連れ去る〉ここでは嵐が桜の花を散らし飛ばす様子 「ならで」〈ではなくて〉 「降りゆく」に「旧りゆく」〈年をとる〉を掛ける “ふりゆく”のは雪ではなくわが身だったなぁ #短歌の文語
2013-06-30 23:47:57【百人一首/97】こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ(権中納言定家) 百人一首の選者、藤原定家が終盤に登場! 「待つ」に「松帆の浦」を掛ける 「や」詠嘆だけど語調を整えるために入れてある感じ 浜辺で焼く藻塩に、恋に燃える身を重ねる #短歌の文語
2013-06-30 23:53:43【百人一首/98】風そよぐならの小川の夕ぐれはみそぎぞ夏のしるしなりける(従二位家隆) 「禊ぎぞ…しるしなりける」→「禊ぎは…しるしなりけり」の係り結び 上の句で奈良の秋めいた風景を出しておきながら、下の句で夏の風物詩である禊ぎを出して、まだ夏なんだなぁという歌 #短歌の文語
2013-06-30 23:56:18【百人一首/99】人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は(後鳥羽院) 「人もをし人もうらめし」〈人を惜しく思うこともあるし恨めしく思うこともある〉 語順を入れ替えると分かりやすい 「世をあぢきなく思ふゆゑに、物思ふ(わが)身は、人も惜し人も恨めし」 #短歌の文語
2013-07-01 00:00:37【百人一首/100】ももしきやふるき軒ばのしのぶにもなほあまりある昔なりけり(順徳院) 「百敷」宮中 「しのぶ」シノブグサ。壁にへばりつく草。耐え忍んでいる感じなのでその名。「蓬生」「八重葎」みたいに荒れた家の感。和歌では言うまでもなく「忍ぶ」「偲ぶ」に掛ける (続 #短歌の文語
2013-07-01 00:10:35