モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring IX~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「志智。そろそろ起きた方がいいですわよ。志・智。二時限目をそのまま寝て過ごすつもりですか?」 「……なんだ、亞璃須か」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:51:00
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 どうにも慣れない両手が肩を揺さぶっているな、と思いながら。  ヒュプノスの世界から強引に引き戻された志智は、どこか恨みがましいものを瞳へたたえて、日原院亞璃須を見る。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:51:15
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「お前は寝坊して遅刻したんだから、俺も授業を寝過ごしておあいこだろ」 「何を馬鹿なことを言ってますの?  そもそも、わたくしは寝坊したわけではないのですけど」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:51:31
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「じゃあ、なんで遅刻したんだよ」 「家族の付き添いです」 「家族?」  眉をひそめる志智の脳裏には、真っ先に吉脇(よしわき)の顔が浮かんだ。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:51:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

いや、しかし彼ではない。  亞璃須は家族と言った。志智が覚えているかぎり、彼女は自分の執事を家族と表現したことはない。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:52:01
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「なんだ、両親のどっちかが病気にでもなったか? それで朝から病院に付き添ってきたのか。お大事にな。孝行したいときに親はなしって言うぜ」 「一応、お父様もお母様も息災ですわ。  わたくしが付き添ってきたのは弟です。それも病院ではなく、この学校に」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:53:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ふーん」 「……ふーん、じゃないですわよね、志智?  わたくし、弟のことを話したことはありませんよね? しかもこの学校で。興味がありません? 気になりません?」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:53:27
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「別に」 「そんな! わたくしの弟といったら、ゆくゆくはあなたの弟にもなる存在!  まさか、他人への無関心? そんな心の病が!  ああ、わたくしの志智! なんということでしょう!!」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:53:43
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「よく分からんが、大声で意味不明なことを吹聴するのはやめろ。こちとら眠いんだ。頭の中に響く」  こめかみを押さえながら言った志智に、亞璃須はなぜか勝ち誇るように乏しい胸を張った。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:53:58
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「さすが志智。よくぞ、わたくしが既成事実化を着々とすすめていることに気がつきましたわね」 「ウチの制服ってあれだよな。千歳くらい育ちがいいと見ててバランスとれるんだけど、お前みたいなやつがこう、ふんぞり返るとなんか哀れな雰囲気があるよな」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:54:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「チョークを口の中に詰められるのと、椅子の角で殴られるの、どちらが好みです?」 「どっちもお断りする。で、お前の弟が……なんだって?」  志智は思う。どうしてこんなにも彼女は、笑顔のままで内なる怒りを表現するのがうまいのかと。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:54:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(そして、俺が折れてこうなって……結局こいつのペースだ)  ふてぶてしく志智が頬杖をついてみせているのは、せめてもの抵抗だった。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:55:02
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「きょうが転校初日なので、弟の手続きにつきそっていたら授業に遅れたと。  まあ、そういうことですわ」 「転校初日ねえ……ん? ひょっとしてお前の弟って━━」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:55:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「━━クラスは1年F組になったのですけれど、たしか志智の妹さんもF組でしたわよね?」 「……ああ、そうだったな」  なるほど、やたらとただの付き添いに説明をつけるのはそういうことかと、志智は納得しながらうなずいた。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:56:29
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そうか。千歳のやつが言ってた転校生ってのは、お前の弟だったんだな」 「そちらでも話は出ていたみたいですわね」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:56:50
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「別に隠すもんじゃないからな。それにしても偶然だな。  お前の弟っていうと、やっぱり傲岸不遜でやたらと挑発的だったりするのか? 喧嘩とか好きそうだよな。千歳が絡まれたら大変だ」#mor_cy_dar

2013-06-09 15:57:00
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おあいにくと。  何しろわたくしの弟なので、自慢するほどでもないですが、紳士的━━ということもないですが、男らしく━━とも言いがたいですが」 「なんだそれ」 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:57:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……まあ、少なくとも害はありませんわ。その点は保証します。  とりあえず姉としてあなたのことを紹介したいのですが、昼休みの予定は?」 「特にないよ」 「じゃあ、決まりですわね」  にんまりと笑う亞璃須。志智はその表情をどうしても千歳の笑顔と比べてしまう。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:57:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(あいつとは違う……陰謀をめぐらせて世界征服でもしそうな笑い方だ……)  それはそれで亞璃須の個性と分かっていても。  そして、彼女に対して偉そうな口をきけるほど、自らが立派な人間ではないと自覚してはいても。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:57:37
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ふぅ……」 「何か失礼なこと考えてません?」 「べ・つ・に」  呆れまじりのため息までは止められない志智だった。 #mor_cy_dar

2013-06-09 15:57:51
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

~~~~~~Motorcycle Diary~~~~~~ #mor_cy_dar

2013-06-09 15:58:03
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 昼休み。  日原院亞璃須(にっぱらいん ありす)と共に、三鳥栖志智(みとす しち)が廊下へ出ると、そこには弁当の包みを二つぶらさげた千歳が立っていた。 #mor_cy_dar

2013-06-09 16:03:52
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あっ、おにいちゃん」 「なんだ、千歳。どうしたんだ?」 「お弁当。おにいちゃんの分、渡し忘れちゃって」 #mor_cy_dar

2013-06-09 16:04:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ああ……そういえば、お前に持たせたままだったな。悪い。  でも、それなら中に入ってくればよかったのに」 「あはは……で、でも三年生の教室ってやっぱり入りづらくって」 「妹さんは律儀ですわね」 #mor_cy_dar

2013-06-09 16:04:57
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「亞璃須さん、こんにちは。いつもおにいちゃんがお世話になっています」 「ごきげんよう、千歳さん。こちらこそ、いつも志智のことをお世話させて頂いていますわ」  ぺこりと頭を下げる千歳に対して、ゆるやかに流れる河のような亞璃須のお辞儀。 #mor_cy_dar  

2013-06-09 16:05:18