「技術史」講義のまとめ(電通大・佐藤)

担当している講義科目「技術史」について、毎週その準備状況を呟いていましたが、一学期の半分も過ぎ、このまま闇に葬るのは勿体ないのでまとめました。こんな形で大学教員が自分の講義をまとめて公開するのも面白いのではないかと思い、とりあえずやってみました。
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

今日の「技術史」は江戸時代のからくり。単純な起き上がりこぼしのような人形から、歯車・ゼンマイを備えたからくりまで、多種多様なタイプを紹介する。

2013-05-29 08:38:40
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

現代のからくり職人、玉屋さんによる弓引き童子  http://t.co/9eYAQMkUgx

2013-05-29 08:48:16
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

弓引き童子の台座部分を横から見た所  http://t.co/4aXasZifnS

2013-05-29 08:55:11
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

からくりの服を取ると、内部はこんな感じ  http://t.co/MJ6z4Mwmgk

2013-05-29 08:56:28
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

ひととおりからくりの説明を終えた後は、讃岐出身の鉄砲・からくり職人、久米通賢の話をする。この久米さんという人、スーパーマルチな職人さんで、伊能忠敬と大体同時代。何を作ったり、どんなプロジェクトを動かしたかというと、空気銃の製造、扇風機(江戸時代風)の開発、火打ち石式拳銃開発、→

2013-05-29 09:01:37
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

→ 讃岐沿岸の測量地図作成(伊能忠敬より以前)、測量道具の設計作成、讃岐にサトウキビ栽培のきっかけを作る、坂出塩田を一から立ち上げて高松藩のドル箱に仕立てたこと、等々。とんでもない職人がいたものです、というお話し。

2013-05-29 09:03:51

この回のポイント

○からくりの東西比較。プログラム内蔵型の西欧のオートマタ。時計機構から展開したワンパターン動作のにほんのからくり人形。

○からくり人形の素材、機構、形態について

○讃岐の鉄砲、からくり職人、久米通賢について。彼の発明品や手がけたプロジェクトについて。

第7回 日本の時刻制度と和時計

佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

今日の1時間目の講義「技術史」は、江戸時代の時計である「和時計」について。特に田中久重が作った「万年時計」を中心に話す。万年時計のレプリカは、こんな感じ。05年の愛知万博に出展したモノです。  http://t.co/fL12fhHGxQ

2013-06-05 07:35:10
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

今、日本で最古と言われている機械式時計は徳川家康が持っていたもので静岡の東照宮にあり、国宝。例えばこんな記事 http://t.co/tdEARPz9gq

2013-06-05 07:48:01
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

徳川家康所持の時計は日本では珍しがられるが、ヨーロッパではたまにオークション市場に出回るタイプ。内部構造はこんな感じ。私が持ってるオランダの時計史の本から  http://t.co/xrHBhctl7O

2013-06-05 07:52:50
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

和時計は、フレームとなる技術はもちろん西洋伝来だが、その後の運用法は、世界的に見ても特異な展開を示した。西欧文化圏では機械式時計が導入されると、社会は「時計に合わせて」運行されるようになったが、日本だけは不定時法という時刻法に無理矢理あわせるために社会ではなく時計の方を改変したw

2013-06-05 07:58:50
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

不定時法というのは、現在の24時間制と全く異なった時刻法。基本は一日12刻とするが、昼を6刻、夜を6刻に配分する。となると、季節に応じて昼夜の長さに長短が出てしまう。(夏の昼間の1刻は長く、冬の夜の1刻は長くなる。)これが不定時法。和時計はこちらの時刻法にあわせる改善wがなされた

2013-06-05 08:01:43
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

和時計の不定時法への合せ方には、幾つかパターン。簡単なモノは24節気毎に文字盤を交換。(15日ごとの作業が必要w)もう一つは、調速機の回転速度をこれまた15日ごとに変更するパターン。そして、江戸時代最後の到達点は、文字盤の文字歯車に連動させて自動的に動くようにした「割駒式」。

2013-06-05 08:09:32
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

それで田中久重の万年時計に至るのだが、この時計、強力な真鍮製のゼンマイを備え、当時としては驚異的な半年以上の継続駆動時間を達成。1動力源から、5面の時計と日月の運行を示したプラネタリウムへ駆動力が伝達される。これはプラネタリウム部分  http://t.co/Q1IMVnhVKn

2013-06-05 08:15:41
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佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

田中久重は後の東芝の創業者(の一人)となる。久留米出身のからくり職人、発明家。そういう縁で、05年の愛知万博に東芝さんの肝いりでこの万年時計を復元して展示しようということになり、その制作過程はNHKスペシャルでも放映された。復元費用は大雑把に、機械部分1億円、装飾部分1億円かな。

2013-06-05 08:25:58

この回のポイント

○人類と時間の認識、時間の測定法の多様性について。

○機械時計の変遷について。

○近世日本の不定時法と、それに合わせて改造された和時計について。和時計の形式、不定時報に合わせるメカニズムについて。

○田中久重の万年時計について。

第8回 田中久重と万年時計(続)

佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

今日の「技術史」の講義は、前回に引き続き田中久重と万年時計。05年の愛知万博に展示した万年時計のレプリカを作るプロジェクトを密着取材したNHKスペシャル「万年時計の謎に挑む」(ニコ動だとこちら http://t.co/7NSpCIi9H1) を見てもらう。裏話も交えてw

2013-06-12 03:43:33
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

どうでもいいことですが、このNHKスペシャル(万年時計の謎に挑む)の冒頭と真ん中あたりで、エキストラ役のような格好で私も出ていますw それはともかく、このNHKスペシャル、関係者の間には不満がありまして、それは時計の機械仕掛けの製作しか取り上げなかったことでした。実は。。。

2013-06-12 03:45:48
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

機械部分の複製作業と同じような苦労話、ドラマが時計の装飾部分の作製(木工、メッキ、青貝細工、七宝焼き、etc.)にもありまして。そういう日本の職人さんたちの作業が一切カットされていたことには、大ブーイングだったわけです。どんな苦労や議論があったのか。。。

2013-06-12 03:49:37
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

(1)複製に際して「現状の古い姿を再現するか」それとも「田中が作った当時の新品仕様で作るか」で大激論。結局ピカピカの万年時計を作ろう、ということに。(2)現在では分からない装飾プロセスがあったこと。例えば、七宝焼きの中にある赤系の色の原料が分からず、専門の研究所に持ち込んだとか→

2013-06-12 03:52:59
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

(3)金箔のメッキも、江戸時代のやり方でやると水銀蒸気を使うことになるので今の環境基準では無理、ということになり、職人さんのご自宅で作業。(4)職人さんの作業作品の精度は1mmが基準。ところが電子制御で作られた歯車の精度はミクロン単位。それで、完成時点でかみ合わなかった箇所も発生

2013-06-12 03:56:33
佐藤賢一の中の人 @ke_1sato

というように、他にも色々ありましたが、久重の機械時計だけに注目したNHKスペシャルの編集方針は、日本の他の職人技を無視しているので、これは一体どうなのよ、ということでした。せめて上・下編に分けて両方取り上げればよかったのになあ、とは思いましたね。それくらい話題がありましたので。

2013-06-12 04:01:17
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