#8 「ライトニング・マイ・パワー・トゥー・ビー・ボールド」(下)

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そんな彼に想像が出来よう筈も無い。 人間の仇を魔術師が討とうとする可能性も そもそも一般人と魔術師に交流があろうことも まともに考えて等来なかったのだから。

2013-07-06 21:38:20
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そんな彼に想像が出来よう筈も無い。 被害者にして目撃者が今この時を生きていることも ホワイトが その恐怖と悲しみを受け止め、 その怒りと憎悪を引き受け、 その全てをただ、自分のモノとして吐きだし、今ぶつけていることも。

2013-07-06 21:38:31
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――――――――――――――

2013-07-06 21:38:40
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19:49。観覧車。 裕岐と梢。 頂点近くまで上昇した籠。 最小限の明かりだけの籠内を月光が照らす。

2013-07-07 00:15:44
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裕岐の『解答』は正解だった。 ごくごく限られた情報からよくぞ導けたものだ。 それが正答である、そのことを咄嗟に誤魔化せ無かった。 沈黙するので精一杯だった。 その沈黙がそのまま答えになっていることには気付いていた。 気付いていながらどうにも出来なかった。

2013-07-07 00:21:53
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二人が黙り込んでから既に五分近く。 裕岐が先に口を開いた。 「梢、俺じゃ力になれな「ダメですっ!!」 思わずビクリ、と椅子の背に後ずさる。 隣の籠まで届いたかも知れない程の声。 目付きも初めて見せるものだった。 涙を浮かべながらも何かを必死に訴える目。

2013-07-07 23:46:37
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「ダメなんです!何も…しないで下さい!しなくていいんです!」 「こず「なにもしないでいてくれるならわたしがなんでもしますから!裕岐さんの、望むことならなんでも!」 「だから全部・・任せて下さい」 「そうすればうまくいくんです」 「これが・・の・・・ですから」

2013-07-07 23:53:46
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「待ってくれ!俺は」 必死の表情で取り乱し訴える少女の肩を抱きしめる。 その外側に腕を回され、 一瞬の躊躇の後に 抱き返された。 華奢な体の何処に、と思わせる程の力で抱きしめてくる。 あくまで少女の力の範疇ではあったが、痛みすら感じた。 体よりも心に。

2013-07-07 23:58:09
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『~♪』 一分程経った頃に音楽が流れた。頂点の前後三分だけ流れるものである。 均衡状態が破れ、裕岐は改めて口を開いた。 「…分かった。言う通りにする…そういうことなら、な」 「裕岐さん…!」 梢が安堵の溜息を漏らす。 込める力も弱まる。 「ただし」

2013-07-08 00:06:32
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「…ギリギリまでだ。ギリギリまでは何もしない。それは絶対約束する。でも」 「裕岐さん!」 「そこまでだ。その先は約束出来ない」 遮ろうとする梢を更に遮り裕岐は言い切った。 「何もせずに何かあったら後悔するから、な。それは絶対出来ない。梢を泣かすことになっても」

2013-07-08 00:10:16
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「これ以上の妥協はしない。出来ない。分かって…くれるか?」 梢は、震え、俯き、涙を零した。 裕岐の胸に顔を埋め、そのままゆっくりと頷いた。

2013-07-08 00:15:09
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――――――――――19:53。ネスト内。

2013-07-08 00:20:12
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ホワイトは殴る。殴る。殴る。殴る。 蝙蝠型召喚獣による抵抗は既に無い。 既にビーストコーラーを一度殺した。 ライブアクセルでそれを生き返した。 そして殴って殴って殴り続けている。 左腕に組み付く腕を払い折って殴る。 右腕を抑える腕を曲げ潰し捻り殴る。

2013-07-08 00:20:23
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片手間に横の二人を退け殴り続ける。 死んだ。 『ライブアクセル』 一見人の顔に見えぬ肉塊から無数の目が沸き立つ 巨大な螺子の如く曲がった腕に無数の指が芽吹く 骨が残らず粉となった胸と腹から臓腑が根を出す 複雑骨折と筋繊維断裂以外無傷の脚も引き裂ける

2013-07-08 00:22:59
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殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

2013-07-08 00:26:32
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蘇生させて殴る…前に横の頭二つを掴み頭蓋に罅を入れる。 「ぐおああ」 「放しやぐぅああ」 『黙れすっこんでろお前らは後でちゃんと殺すから順番を守れ』 痛覚強化で死亡寸前の激痛を与えつつ脅す。 解放すると怯え泣きながら後退していった。 更に殴り始める。

2013-07-08 00:48:34
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―――――――――観覧車。 音楽が止まる。 「裕岐さん」 抱きついたままの梢が上目使いで話しかける。 「何だ?」 「キス…して下さい」 「今まで…したこと…あるのか?」 「いえ…ないです……まで取っておこうって」 上を向いたまま目を閉じる。

2013-07-08 01:18:47
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躊躇しながらも裕岐は梢の肩に手を当て、一度距離を取る。 顔の高さを合わせ近付けると、梢が目を開けた。 「おねがい、します」 「…分かった」 手の力を軽く触れるだけに抑え、更に顔を寄せていく。 梢が震えていた。 泣いていた。 怯えていた。

2013-07-08 01:25:25
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――――――― ホワイトは殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殺し 蘇生させてはまた殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殺す 魔術師だったものは最早生物とすら覚束ない赤と黒の塊と化していた。 それでもなお強引に意識は保たされていた。

2013-07-08 01:30:24
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仲間が傍観する中、ようやくホワイトは殴るのを止める。 神経系を過剰再生され全体が神経か脳と等価の肉塊に触れる。 両手でライブアクセルとペインアクセルを両方、同時に流し込まれる。 瞬時に十回は死ねる究極の苦痛を与えられながらもしかし、命も強められて死ねない。

2013-07-08 01:34:18
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――――― 「ゴメンなさい…」 「やっぱり早かったか?それとも」 「違い、ます…私のほうの問題で」 「怖かったのは…俺がか?」 「裕岐さんを……た…うのは怖いです…でも…他にも…ごめんなさい。言えません」 ―――――

2013-07-08 01:50:55
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――――― 激痛、苦痛、恐怖…人格を破壊し、過去を消し、未来を奪い、今を汚し、誇りを犯す。 まだだ。 まだ足りない。 あの子の痛みを購うにはこの程度百年千年続けても何の足しにもならない。 ホワイトは殺害を続ける。 自分の身への痛みですら塵ほどの価値も意味も無い。

2013-07-08 01:56:09
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――――― //「嫌…!いやぁ…!」 //■の前に■■の■体… //■を組み■せる魔術師…男 ////////////// //見慣れた自分の部屋 /////■■との■会…あるいは/// ―――――

2013-07-08 01:59:22
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――――― 塊を潰して潰して潰し、激痛を与えて与えて与える。 かろうじて残る自我の残滓を苦痛のみを受けるのに特化した神経と掌大の肉が覆う。 それを踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏みにじり続ける。

2013-07-08 02:03:40
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―――――――――― 「梢。良いよ」 裕岐は少女を抱きしめた。 男としてでなく一人の人間として。 兄の様に父の様に優しく。 「裕岐…さん…」 「今は…こうしていよう」 「はい……」 ―――――――――― ――――――――――

2013-07-08 02:06:24