第一回大罪大戦虚陣営【交流フェーズ03】

虚(ゼロ)は色欲、ヴォルプターモ[ @reclew_sin ] 虚(ゼロ)は暴食、イストリーブ[ @gomokumame_sin ]
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【暴食の雛】 @gomokumame_sin

喰らわれては治る『色欲』を思う存分貪って、一時の満足感を得た。そして、『色欲』の丸みを帯びた肩にぽすん、と額を乗せる。花の香り。女の香り。エダクスの声は聞こえない。 「なあ……俺たち、まだ戦うのか……?」 すり寄るその仕草は、小さな子供のよう。→

2013-07-06 22:55:46
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

『黒』と『紅』の『暴食』の罪の座と統合されて、彼らが持っていた知識の一部が俺の中にある。知識を得るということは、考えることができるようになるということ。 「俺たちは、どうして戦ってる?」→

2013-07-06 22:55:56
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

考える。「戦って殺し合ってそれからどうするんだ?」考える。「ひとつになるのか?」考える。「俺は二人を殺して『暴食』になった」考える。「少なくとも俺に、もう戦う理由は、ないんだ」 それは問いというより、独白に近かった。

2013-07-06 22:56:07
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…そうね…」 肩に頭をすり寄せてきた『暴食』の体を抱きしめる。 「『イストリーブ』  (”   ”)  泣いてもいいのよ  (泣いてもいいのよ)」 それは、かつて女が子ども達に向かって言っていた言葉と似ているものだった。→

2013-07-06 23:40:31
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「私達は『大罪』…『罪を背負いし者』…けれども、泣いていいのよ。」 ゆっくり、『暴食』の頭を撫でる。 「辛いことがあったら、泣いてもいいの…人は、そうして感情や精神をコントロールするのだから…それは『大罪』でも変わらないわ」 自分は『化け物』であるから泣けないけれども。→

2013-07-06 23:43:26
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

けれども、この『暴食』には自分の前で思い切り泣いてほしかった。 かつての青年が私に感情をぶつけてこなかった分、私はこの『暴食』の感情を受け止めたかった。 この『暴食』はあの子とは違う、それはわかっていたけれど、そうしたかった。

2013-07-06 23:55:51
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

「敵だったら喰ってやるさ、でも、敵味方の区別なんて、どこに」 紡ぐ言葉が途切れる。抱きしめられ、それから頭を撫でられる。やわらかな温もり。 この温もりは、もっと昔に欲しかった。 再び膨れ上がった涙は、『色欲』の肩に。抱きしめ返すことはせず、ただ、抱きしめられながら静かに泣く。→

2013-07-07 00:21:55
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

どうして戦わなければならなかった。 どうして殺し合わなければならなかった。 罪の座はひとつなど、誰が決めた。 人の罪に際限など、ありはしないというのに。             お れ た ち 限界などないからこそ、「虚の罪の座」は生まれたのに。

2013-07-07 00:22:52
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…そうね…ごめんなさい…」 何故自分の口から謝罪の言葉が出てきたのか、それは女にもわからなかった。 しかし、女の中の『何か』がそうさせた。 「屋敷の主様も、カラクリも…狐の坊やもお坊様も粗野な方も、皆で何事もなく過ごせていたら…どれほどよかったのかしら…」→

2013-07-07 00:30:54
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

皆、皆いなくなった。 しかもそのうちの一人は自分が『殺して』しまった。 あのカラクリは人間になりたいと言っていた。 もうしかしたら、何か方法があったかもしれないのに、話し合えれば何かが変わったかもしれないのに。→

2013-07-07 00:32:39
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

あぁ、『色欲《大罪》』に更なる『罪』を重ねさせるなんて…『世界』はどれほど『大罪《自分たち》』が憎いのだろうか。 私達が何をしたというのか。 私達をここまで追い込んだのは『世界《お前》』であるというのに。→

2013-07-07 00:33:42
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

女の中には、一つの決意が芽生えていた。 しかしこれはその時まで口に出すことはしないでおこう。 そう決めて心に閉ざし、女はただ『暴食』の涙をもっとあふれさせるよう、優しく背中を叩いた。

2013-07-07 00:35:08
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

優しい手が背を叩く。母親とはこういうものなのだろうか。涙は止まらず、声は上げずとも一定の間隔で肩が跳ねる。 顔は肩に埋めたまま。所在なく下ろしていた腕を、ついに『色欲』の背に回した。力任せに抱きしめる。魔力の強化がない今の俺の腕力なんて大したものではないが、それでも、力いっぱい。

2013-07-07 01:27:40
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

『暴食』の腕が女の背に回る。 そのまま力任せに抱きしめてくるが、骨まで折れてしまうような力強さはなく、ただただ身体を圧迫するだけだった。 女に子どもは居なかったが子を持った親とはこういう気持ちになるのだろうか…この子を、『守りたい』…そう思った。

2013-07-07 01:35:59
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

慣れない深い思考なんてものをしたせいで、整理のつかなくなっていた心が幾分か落ち着いた。 『色欲』から離れて、自分の足で立つ。右腕は復元され、右肩は大きな傷跡に。『色欲』を食べたおかげで、魔力も回復した。 『なあー、いすとりーぶー』 瞼を下ろす。エダクスの幻影を意識から閉め出す。→

2013-07-07 02:12:22
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

振り返ると、消えたはずの扉が再び現れていた。俺たちはふたり。けれど現れた扉はひとつ。 そこに描かれているのは今までのように数字ではない。 罪。今までとは、違う。きっとこれが最後。→

2013-07-07 02:12:34
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

けれど、まだ早い。傷は癒えても身体にショックは残る。何より心が、疲れ果てていた。 休息がほしい。俺にも、『色欲』にも。

2013-07-07 02:12:46
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「………」 扉が、現れた。 数は一つ…それは『世界』が決めたことなのか、それとも色欲の胸に秘めた決意に沿ったのか…その真意はわからなかったが、まだ扉を潜るときではない、それだけはわかった。→

2013-07-07 02:17:51
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「少し、待っていてもらえるかしら?」 『暴食』にそういって女は部屋に向かった。 そこから取り出すのは女の調合した特製の香…眠れない時に良く使う、安眠香であった。→

2013-07-07 02:19:34
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

香を焚き、部屋からでる。 広間に戻ると立ったままでいる『暴食』に声を掛ける。 「寝所の用意が出来たわ。 途中で使用人に声も掛けて湯浴みの準備もしてもらった…今日は休みましょう?」 いつのまにか、女の声には『母性』が宿っていた。

2013-07-07 02:21:43
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

ぼんやりと『色欲』を待ち、戻ってきた彼女の言葉に素直に頷く。この先何があるとしても、力がなければ何も成すことはできないのだから。 「……そうだな、休もう。ちょっと疲れすぎたんだ、俺たち」 きちんとした場所で眠れば、休める。俺は、心に棘となって残るエダクスの夢を見るかもしれないが。

2013-07-07 02:37:24
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「休む前に湯浴みしてらっしゃい、お湯にも薬草をつけこんでもらっているから」 タオルを『暴食』に手渡し、手を引く。 「…いきましょう?」 その顔は、妖艶に見えるものではなく、ただただ素朴な笑顔であった。

2013-07-07 02:46:17
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

渡されるままにタオルを受け取り、手を引かれる。ゴミ溜めで生きてきた俺には、湯に浸かるという発想がまずなかった。休息といったら、眠ることだ。 けれど『色欲』には逆らわない。引かれるままに風呂に連れて行かれる。

2013-07-07 03:03:29
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「ほら、服脱いで…」 湯浴みは初めてなのだろうか、何をどうすればいいのかわかっていない様子の『暴食』の服を脱がせて、女も服を脱ぐ。 湯浴み場を覗けば薬湯がたっぷりと張られた浴槽が見える。 「ほら、入りましょう?」 再び『暴食』の手を引き、共に湯船に浸かる。→

2013-07-07 03:26:41
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

女は『暴食』を後ろから抱きしめるようにして湯船につかった。 薬草の香りが満ちているこの場所にいると精神的な疲れもとれそうな気がしてくる。 これで『暴食』の疲れが取れてくれればいいのだが。 女はそう思いながらゆっくりと身体を温める薬湯に身を任せていた。

2013-07-07 03:28:37