さよならアーティチョーク

夏と先輩と僕と虚構の世界
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橘 颯 @so__w

偽装:第二図書館と云う形態はパブリックイメェジに起因しているに過ぎない。機密が管理塔に集約しているかに見える様に。情報の集積に対し、人が理解し易い可視化形態を取るなら、本が最も効率が良いとの結果に拠る。例え表紙の先が開く迄は存在せずとも。尤も、其れは現実も等しい。 #twbngk

2013-07-26 23:13:57
橘 颯 @so__w

在所:In a wordと問う男に、婦は肩を竦めるに留めた。つまりも何もありはしない。彼等は純粋なテクストだと云うだけだ。そして我々も。精々が用いる言語の違い程度のモノ。此処ではヒトもヒトで無いモノも、押し並べて等しい。正しくIn wordsと云う、其れだけの事。 #twbngk

2013-07-27 21:28:40
橘 颯 @so__w

依拠:主観と他感。其の違いは何処なのか。何方にも私、は存在する。双方に貴方、も存在する。――君は私を内在させる器であり、私は君を通じて世界に顕現するのだ。少女の玲瓏たる音吐は天声となりて降り、少年の脳裏で霓色の幻影を散らした。僕は巫覡であり、同時に神其の物と化す。 #twbngk

2013-07-27 21:39:23
橘 颯 @so__w

惻隠:君が学生生活で得た物は何だと問う先輩に、貴女との出会いでしょうと僕は淀み無く応じる。――多くの者が知識だのと云うが、君の答えは良いね。其の場に自分として在る事、在った事こそが貴重。其れだけは他の誰にも出来ない。故に己から自分を捨てた原型の弱さを少女は憐れむ。 #twbngk

2013-07-29 23:01:41
橘 颯 @so__w

解答:魔女の定義とは何か。ダスクとドーンは婦より与えられた題に逡巡無く解を返す。曰く自動する因果律。十と二十二及び二つの三と一つの四。ディスプレイに流れる文字は狂人の戯言に等しく、故に花車なる指が消去を促したのも当然とも見得る。其れが真実を看過したと誰も知得ぬ儘。 #twbngk

2013-07-29 23:11:46
橘 颯 @so__w

界層:世界は層を成す。古くは限られた者のみが視る霊界。昨今では端末を介して誰でも見得る拡張現実。脳内と脳外は拡大し、だが完全には重ならない。却説、仮にレイヤーを一枚だけ挿まれたとして、其れを認識出来るだろうか。答えは否。自身が視認する世界は、現実でしか有り得ない。 #twbngk

2013-07-30 23:02:16
橘 颯 @so__w

彫刻:学生寮[ハイヴ]は今や、すっかりと死に態だった。生徒達に与えられるのは、広い個室を丸々一つ。自分だけの空間を得られる僥倖に皆浮かれている。誰にも憚る事無き、自由の王国。如何なる奇行も見咎められぬ其処で、僕は一心に刻み込む。自らの身に痛みと記憶を、忘れぬ為に。 #twbngk

2013-07-30 23:12:25
橘 颯 @so__w

戯言:何故烏と云う字に横棒が一つ足りないのか識っているかい。形をして恰度目が無いとも見えるだろう。古く神主の中には『神を見る為に』目を潰す者も居たそうだよ。盲目こそが真実を見る条件なのだ。烏が時に神の御使いであるのは此れが為さ。と、まあ今のは唯の与太だけれどもね。 #twbngk

2013-07-31 23:00:32
橘 颯 @so__w

盲目:私達は、他認識と自認識の間には隔たりが存在している事を識っている。其れは時に壁であり、河であり、奈落である。不可侵の領域であるからこそ、人々は往々にして己が視認に口を閉ざす。視ている物を見えないと云い。見えてない者は視えない儘。何れにせよ、其れは其処に在る。 #twbngk

2013-07-31 23:10:54
橘 颯 @so__w

式典:ハレの日を迎えたにも係らず、講堂は閑散としている。親の数も。生徒の数も。何れも空間を埋めるに十分では無い。教師陣にも欠けが見受けられ、淡い失望の溜息が空白を撫でて行く。淘汰の結果と云えば其れ迄。此れより先とて確かな保証は無い。だが僕の眸は炯々と前を見据える。 #twbngk

2013-08-02 21:29:22
橘 颯 @so__w

神性:神とは元来、唯其処に在りて寄り添う者だ。何者も裁きはせず、救いもしない。有益な助言をするでも無く、況や姿を顕しもせぬ。だが確かに其処に居る。何時でも決して離れる事無く、最期迄。宛ら影の様に。他の全てが失せようとも。其れこそが神の本質。だから僕は生きて行ける。 #twbngk

2013-08-02 21:39:27
橘 颯 @so__w

根茎:しゃらしゃらと波打つ碧。展開された映像資料内に戦ぐ、一面の竹林。彼等はリゾームによって繋がっている。各々独立している様に見えて、其の実は一つの個体であるのだと。――君達とて、そうで無いとは言えないかもね。背面より抱締める聲に、僕は冷笑する。私達では無いのだ。 #twbngk

2013-08-04 23:30:25
橘 颯 @so__w

警鐘:眠りの中の眠り。其れは乃ち死である。夢見人の心が真の眠りを欲した時、心臓は鼓動を止め、脳は思考を凍らせるだろう。死と生の境界線を揺籃とし、彼等は未だ辛うじて留まっているに過ぎない。揺籃は絶えず揺れ、古びた糸は解れる。堅琴の音が鳴り止む前に船は落ちねばならぬ。 #twbngk

2013-08-04 23:40:31
橘 颯 @so__w

独立:彼は果してアルコーン足り得ただろうか。統治者と云うならば、名ばかりに。偽神としてならば、其の端には手を掛けられたやも知れぬ。尤も其れは手引きを受けてではあったが。されど彼はアルコーンではあった。暗闇の王国で、光に焦がれて身を焼く。其れをして魔女は祝福と呼ぶ。 #twbngk

2013-08-06 23:01:04
橘 颯 @so__w

喚起:医務室は何時訪おうと、他人に出会いはしない。寝台とて常に他者を拒む整然さを保っている。だが僕は、鼻腔を擽るクレゾォルの匂いに息を緩めた。埃と洋墨が醸す其れとは対極を成す、滅菌された清浄な空気。其の冷たい芳香に終ぞ触れ得なかった婦の香を重ね、劣情に身を委ねる。 #twbngk

2013-08-06 23:11:17
橘 颯 @so__w

未定:カフェテリアに呼び出され、僕は少女と向き合う。――私達、セットですよね。無意味にクリィムソォダを泡立て乍ら彼女は云う。形骸化した役割に拘泥するのは不安からなのだろう。震える眼球と卑屈な笑みに、沼色に濁ったグラスへ目を落とす。今は肯定。続く言葉は終わった後に。 #twbngk

2013-08-07 23:15:13
橘 颯 @so__w

彼女:別に瞞された訳では無いだろうと、婦は云った。強がりからでは無い。其れを少年も判っているからか、頤を引くだけで応えとした。そも嘘偽とするなら何処から、或いは誰迄だろうか。先代と当代の僕は揃って首を捻る。○○○○は疾うに『人』だったわ。早速愛称で呼び、婦は笑う。 #twbngk

2013-08-07 23:25:18
橘 颯 @so__w

遺志:残すべき名は一つで無い。『母』として少女の名も又遺されねばならなかった。何故ならば、彼女が存在しなければ生誕も無い。図らずしも、母と子の名は音こそ違えど、意味を同じくした。恐らく某こそが遺志と、読み解くが妥当か否かは知れぬ。だが、確かに意図だと彼女は解した。 #twbngk

2013-08-09 23:00:18
橘 颯 @so__w

帰着:意識は最後迄、保たれていた。其れが祝福か、残酷かを判断する心を彼等は有たない。だが、耐熱観測装置[め]が視認した降下地点に、双生児は其々に聲を上げた。まるで出来過ぎている、と。恰も物語の正しき帰結の様に。『彼女』の名が其処には在った。皆を待っていたかの如く。 #twbngk

2013-08-09 23:10:32
橘 颯 @so__w

帰郷:翼を失くした鳥が喙を地面へ突き立てる。濛々と立ち込める砂埃。カシャラカシャラと悲鳴を上げ続ける満身創痍の鳥は、其れでも尚生きていた。其の内に幾つもの種を抱えて。――却説、其れでは皆様、御早う御座います。双生児は四つの眼を閉ざし、沈黙す。人々の目覚めと引替に。 #twbngk

2013-08-13 23:30:25
橘 颯 @so__w

再誕:ぞるぞると躯の内外を問わず、虫の如き『何か』が這い回る。其れ等がすっかりと身を引いて漸く、其の人は眸を開いた。何一つ纏う事無き裸身に羞恥を覚えるも、見る者は誰一人として居らず。膚伝う人工の羊水と胞衣とを払い落とし、怖々と硝子の殻より出で来。産声も上げぬ儘に。 #twbngk

2013-08-13 23:40:34
橘 颯 @so__w

自覚:『僕』は独りで覚醒めた。周辺には幾らかの空となったシリンダァが存在するも、中身は何処へ行ったのか、未だ閉ざされた儘の殻で眠る者の他に人影は無い。ガイダンスすら止んだ静寂の中。彼は、シリンダァに写る、見慣れぬ『僕』の顔を見乍ら悟る。故郷から追放されたのだ、と。 #twbngk

2013-08-16 23:03:59
橘 颯 @so__w

目的:『話をしよう。夜は長く、人生は短い』そう促す少女と少年が交わした会話。其れは学舎の一幕であったり。或いは、形而上の猿についてだったろうか。多くは無意味。寄せた砂状の対話は崩れ、後に残るは歪な単語の塊ばかり。其の内、一つを取り上げて彼は歩む。約束と云う言葉を。 #twbngk

2013-08-16 23:14:12
橘 颯 @so__w

進行:惧れが無いと云えば虚言になる。恐れが無いと云えば鈍感と云える。だが、『僕』は進むより無かった。既知を逐われた今、未知へと踏み出す以外に道があろうか。修道服めく産着を纏い、赤子の様な歩みで傾いだ足元を踏み締める。眩い光の扉を潜ると、一面の薄紫が『僕』を迎えた。 #twbngk

2013-08-20 23:26:17
橘 颯 @so__w

鋼碑:ハローアゲインワールド。『街』の外には世界があった。曾て望んでいた海は、何処にも無い。四方位に広がる大地。其の一角に臥す異質な存在。まるで滑稽な戯画の様だが、先程迄『僕』は其処に居たのだ。花園の中へ墜ちた鳥[ヒルンド]を仰ぐ『僕』は、視界の端に動く影を見た。 #twbngk

2013-08-20 23:36:27
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