ギリシア語で読むギリシア神話 『イリアス』第2歌 ゼウスはアガメムノーンを唆した
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一日目-アガメムノーンを煽れと命じるゼウス
【『イリアス』-開戦をけしかけたゼウス】アキレウスがアガメムノーンから受けた恥辱に意趣返しさせるため、アカイア勢を被害甚大な戦争に駆り立てようとするゼウス。そのゼウスの台詞が、第2巻冒頭に綴られています。
2013-08-05 13:25:156行-「オネイロス(夢)にやらせるか」と決めるゼウス
【第6行】"πέμψαι ἐπ᾽ Ἀτρεΐδῃ Ἀγαμέμνονι οὖλον ὄνειρον:" (続きます)
2013-08-05 13:30:14(承前)"πέμψαι"は"πέμπω"(送る)の不定法アオリスト能動態、"ἐπ"は"ἐπι"のエリジオン型で" Ἀτρεΐδῃ Ἀγαμέμνονι"は「アトレウスの子アガメムノーン」の与格型です。(続きます)
2013-08-05 13:35:14(承前)"οὖλον"は「狂った」といった意味で、通常アレスの添え名として用いられますが、ここでは続く"ὄνειρον"(夢を)にかかって「惑わす夢」といった意味になります。その"ὄνειρος"を「送る」といっているので、相手は神格化された夢の神でしょう。(続きます)
2013-08-05 13:40:15(承前)以上から、全体で「アトレウスの子アガメムノーンの下へ惑わすオネイロス(夢)を送ること」となります。
2013-08-05 13:45:137行-早速呼び出して命令
【第7行】"καί μιν φωνήσας ἔπεα πτερόεντα προσηύδα:" (続きます)
2013-08-05 14:00:23(承前)"φωνήσας"は"φωνέω"(声を出す)のアオリスト分詞能動態男性形単数主格です。"ἔπεα πτερόεντα"は例の「翼ある言葉」で、"προσηύδα"は"προσαυδάω"(~に話す)の直説法未完了過去三人称単数能動態です。(続きます)
2013-08-05 14:05:148行-アカイア勢のとこに行ってこい
【第8行】"βάσκ᾽ ἴθι οὖλε ὄνειρε θοὰς ἐπὶ νῆας Ἀχαιῶν:" (続きます)
2013-08-05 14:30:14(承前)"βάσκ᾽"は"βάσκω"という動詞の命令法現在二人称単数ですが、この動詞は、続く"ἴθι"("εἶμι"(行く)命令法二人称単数)との組み合わせで"βάσκ᾽ ἴθι"という形の用例しかありません。意味は「急いで行け」です。(続きます)
2013-08-05 14:35:13(承前)"οὖλε ὄνειρε"は"οὖλος ὄνειρος"(惑わす夢)の単数呼格。"ἐπὶ νῆας Ἀχαιῶν"は「アカイア人たちの船に」。全体で「急ぎ行け、惑わすオネイロスよ、アカイア人たちの船団に」となります。
2013-08-05 14:40:148行-陣屋に着いたら
【第9行】"ἐλθὼν ἐς κλισίην Ἀγαμέμνονος Ἀτρεΐδαο" (続きます)
2013-08-05 15:00:37(承前)"ἐλθὼν"は"ἔρχομαι"(来る)のアオリスト分詞能動態男性形単数主格で、"κλισίην"は"κλισία"(滞在場所)の単数対格イオニア方言型です。"Ἀγαμέμνονος Ἀτρεΐδαο"は「アトレウスの子アガメムノーン」の属格です。(続きます)
2013-08-05 15:05:1310行-今から言うことを正確に伝えること
【第10行】"πάντα μάλ᾽ ἀτρεκέως ἀγορευέμεν ὡς ἐπιτέλλω:" (続きます)
2013-08-05 15:30:16(承前)"μάλ᾽"は"μάλα"(とても)のエリジオン型。"ἀτρεκέως"は"ἀτρεκής"(厳密に・正確に)のアッティカ方言以外の形で、"ἀγορευέμεν"が"ἀγορεύω"(アゴラで言う→言う)の不定法現在能動態の詩的表現です。(続きます)
2013-08-05 15:35:13(承前)"ἐπιτέλλω"は「命じる」。全体で「私が命じるとおりに全て正確に語ること」となります。
2013-08-05 15:40:14【第9・10行をまとめると】「アトレウスの子アガメムノーンの陣屋に着いたら、私が命じるとおりに全て正確に語ること」となります。
2013-08-05 15:45:1511行-進撃させよ