- MaricaYM_zs
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@MaricaYM_zs 十三さんとの話を終え、小屋に戻ると紫苑はソファーに座っていた。「起きてたんだ。置いといたおにぎりは食べた?紫苑が良ければもう行ってしまおうと思うけど。昨日渡したスカーフ忘れないでね」
2013-08-22 20:27:16@ononono_zs 「うん、食べたよ。ごちそうさま」帰って来た冬海を見て笑って。如月が一昨日病院から持って来てくれたコルセットをつけてからは、だいぶ痛みを感じずに日常生活を送れるようになっていた。つけてると暑いのはもう仕方が無い。(続)
2013-08-22 21:28:34@ononono_zs 言われた通り、首の痣を隠すために冬海が調達してきてくれた紫色の夏物のスカーフをざっくりと首にまいた。「どう、似合う?」
2013-08-22 21:29:12@MaricaYM_zs 「うん、似合う。ちゃんと痣も隠れてるし。そうそう、ゆかりちゃんが涼しい格好で来て下さいね、って言ってたよ。とはいえ、その下が既に暑いか…」苦笑しながら返した。
2013-08-22 21:45:25@ononono_zs 「さすがにコルセットなしではちょっとね」とこちらも苦笑して。「じゃ、そろそろ出ようか?」久しぶりに小屋の外に出たら、夏の太陽が目にとても眩しかった。
2013-08-22 21:50:54@MaricaYM_zs @zs_327 「大丈夫かな、気を付けて歩いてね」そう言いつつ彼女の手を取り、太陽が照りつける中を歩いていくとやがて昨日見たのと同じ、太陽を見ている向日葵たちの畑が目に入る。姿は見えないが、ゆかりちゃんたちは今日もここで作業しているだろう。
2013-08-22 21:56:40@ononono_zs @zs_327 その黄金色の畑を見て思わず立ち止まり、冬海の手を握り返して息をのむ。「綺麗だね。見事だ」ゆかりちゃんたちが丹誠こめて、毎日作業した結果だ。近寄って、ひとつひとつの向日葵を眺める。
2013-08-22 22:02:00@MaricaYM_zs @ononono_zs 向日葵畑を見渡すと、そのうちのひとつにリボンがかけられているのが見える。つやつやと反射する、紫色のリボン。時折花びらの代わりに風に揺れている。「ようこそいらっしゃいませ」迎えるように、気取った声が向日葵の陰から聞こえた。
2013-08-22 22:06:04@zs_327 @ononono_zs 駆け寄りたい気持ちを抑えて、ゆっくりとそのリボンのかけられた向日葵の方向へ向かう。やがて向日葵の影に立つ見慣れた少女の姿が目に入った。「ゆかりちゃん、こんにちわ。すごく綺麗に咲いたね。本当に綺麗だ」
2013-08-22 22:09:37@MaricaYM_zs @ononono_zs 「こんにちは紫苑さん」向日葵の陰からでて、紫苑さんの傍に立つ。「ありがとう、紫苑さんにそう言ってもらえて、私すごく嬉しいわ」そろそろと、こっそり紫苑さんの手を繋ぐ。「あのね、このリボンがかけてあるのは紫苑さんの向日葵なの。
2013-08-22 22:19:28@MaricaYM_zs この子だったら多分紫苑さんとおんなじ身長だと思って」しかし実際のところは並んでみると僅かに誤差があった。向き合ってみると、紫苑さんが少女を抱き上げた際に向き合うお互いの顔の高さと、丁度同じくらいの差だ。
2013-08-22 22:19:37@zs_327 「ふふふ、ありがとう」誤差の理由に気づいて、思わず微笑んでしまう。「せっかくだから、上からのぞいてみる?」ほんの少し躊躇したが、抱き上げようかと少しかがんで両手を彼女に差し出した。
2013-08-22 22:26:00@MaricaYM_zs 差し出された紫苑さんの両腕に「でも……」と躊躇って。「私、紫苑さんが結婚してからはもうそうやっては甘えないようにって思って、私だってもう十六歳だし、でも、その、えっと……」もじもじと言い訳をしてこらえている。
2013-08-22 22:31:52@zs_327 「そうか、ゆかりちゃんももう16歳か。」ついいつも子供扱いをしてしまうのだけれど。「でも、3日後にはこの街を出るからね。その後にゆかりちゃんに会えるのは、きっとゆかりちゃんが立派なレディになってからだと思うから、その時はもう抱っこはできないよ」
2013-08-22 22:36:46@MaricaYM_zs 「うう」それを言われては我慢できない。「それじゃあ、お願いしてもいい?」変わらず差し出された腕の中へと進み行って、紫苑さんにそっと自分の両手を添えた。
2013-08-22 22:44:26@zs_327 しゃがんでいつもより慎重に彼女を抱き上げた。一瞬だけぴりりと痛みが走ったけれど、抱っこして完全に立ち上がった後は痛みはないことに内心ほっとする。「ほら、ちょうど良い高さだ」リボンのかけられた向日葵とゆかりちゃん、そして私。まるで3人で内緒話しているかのような距離。
2013-08-22 22:52:39@MaricaYM_zs 「ほんとう」紫苑さんと向日葵を見くらべて微笑む。だけど「でも、少し紫苑さんと高さが違っちゃったみたいね」と、残念そうにも。ゆかりとしては本当に『この高さだ!』と選んだつもりだったのだけど。「ね」とゆかりが語りかけると、向日葵は首を傾げるみたいに揺れた。
2013-08-22 22:59:43@zs_327 「本当にこの向日葵を見られてよかった。脱出する日がなかなか決まらなくて、今まで延びちゃったのだけれどね。元々この向日葵の種はどうしたの?ホームセンターとかから、もらってきたの?」腕の中のゆかりちゃんの温もりと重みを堪能しながら。
2013-08-22 23:05:23@MaricaYM_zs にこりと紫苑さんに笑ってから答える。「これはね、焔煬さんに貰ったの。私がまだ焔煬さんを知らなかった頃に、お手紙に添えて」
2013-08-22 23:11:28@zs_327「そうか、焔煬にか」思わずくすりと笑ってしまう。あまりにも彼がしそうなことだったからだ。しかし 焔煬を知らなかった頃、という言葉に少し首を傾げた。それは彼女が記憶を取り戻したばかりの頃だろうか。「その手紙にはなんて書いてあったの?それはもしかして内緒の話?」
2013-08-22 23:17:59@zs_tl (今更だけど冬海はゆかりちゃんと紫苑さんが対面した時点で一旦断って向日葵畑をぼんやり眺めておりますなう)
2013-08-22 23:20:05@MaricaYM_zs 「手紙はね、ほとんどラブレターだったわ。どきどきしちゃった」冗談めかして、くすくすと口元を隠して笑った。「なかには内緒の話も……。あっ、でもね。そのお手紙を直に紫苑さんが読んだら怒ると思う。『なんだ、あいつこんなこと言ってたのか!』って、きっと言うわ」
2013-08-22 23:27:52@zs_327 「そう?」ゆかりちゃんにまで、私が焔煬の手紙を読んで怒ると言われ、少々複雑な気持ちになる。「焔煬に向日葵を育ててくれと頼まれた、というわけではないのでしょう?」
2013-08-22 23:33:11@MaricaYM_zs 「ええ、違うわ。種は手紙に添えてあっただけ、葵花に宛ててね。育てようと思ったのは私。私ったら、今まで人の為に何かをしたことなんて、なんにもなかったの。紫苑さんのことだって私の我儘で沢山振り回しちゃって、私、沢山迷惑かけてしまったわ。……ごめんなさい」
2013-08-22 23:50:37@MaricaYM_zs じ、と見つめて真摯に謝った。思い返せば返すほど、紫苑さんには甘えきって全てをぶつけしまった記憶ばかり蘇る。悲しくて、涙がこぼれそうなのを必死に我慢した。
2013-08-22 23:50:48