デジタルゲームにおける開発と研究の考察

デジタルゲームにおける開発と研究における個人的考察です。
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

僕がゲーム開発者というのは面白いと思ったのは、シリコンの上の回路上の計算から、人間の心が感動するまでの、広大な空間を仕事場にするという点だ。その広い空間には、科学、人文に渡るたくさんの深い研究領域と、創造の火花があり、まだまだ為すべきことが残されていると思ったからだ。

2010-10-01 05:14:49
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

だから、その領域を、細い線でたどったような仕事もあるが、一方で、その奥深い空間に果敢に挑むような仕事もある。研究としては、後者の構造を明らかにして行くことが、まず急務だろうし面白い。

2010-10-01 05:17:38
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

実際、そういった空間は渡り切ることさえ難しい。多くのゲームデザインが前作を踏襲するのは、そのせいだし、大型ゲームになると、大群を引き連れて大河を渡るようなもので、ますます見知った道を行くしかなくなる。だが、そこは、まだまだフロンティアのある空間であり、探索者を待っている。

2010-10-01 05:19:21
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲーム研究者の役割は、科学者にしろ人文系の研究者にしろ、そういった空間の性質や構造を、開発者に限らず社会に向けて明らかにして行くことだ。ハードウェアの発展とゲームの歴史の積層化の中で、もはや、個人や特定の開発チームだけで、その領域を探索するのはあまりに難しい。ガイドや知識が必要だ

2010-10-01 05:24:18
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

面白いタイトルを作れればいい、というだけの時代は終ったと思う。僕らはもっと、広がったゲーム空間というものを探索して研究する方向の仕事を同時に行わなければならない。また、ゲームというものの方向性をもっと多様に持つべきだと思う。そうすることが、巡って、より面白いゲームを作る糧となる。

2010-10-01 05:27:37
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲーム空間というのは奥深い。そこに足を取られた人間は数知れない。お金をかけても、人をかけても、ゲームデザインがよくても、技術があっても、落とし穴はたくさんある。

2010-10-01 05:30:08
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

だから、成功、失敗にかかわらず、ゲーム開発の一つ一つの経験がとても大切だ。開発経験者はそれを知っている。だから、できるだけ、そういった経験は共有した方がよい。そういった経験を報告することが、ゲーム空間の構造を検証する、唯一の方法なんだ。

2010-10-01 05:31:11
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

出来上がったゲームは結晶のようなものだ。実際、開発者がさ迷う空間は、結晶を生み出すゲーム空間であって、このゲーム空間の研究こそが、今、必要とされている。

2010-10-01 05:32:38
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

出来上がった結晶についてあれこれ言うのは、ゲーム批評家の仕事だ。その結晶の生成の過程を探求するのが研究者の仕事だ。あらゆる創造がそうであるように、過程を制御することは、奥深いことだ。誰も陶器の出来を完全にコントロールすることは出来ない。

2010-10-01 05:37:05
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

開発者は、このゲーム空間を、いろいろな方向から、いろいろな方法で掘り進める。何かを見出すこと人もあれば、何も見つけられないこともあり、別々の方向から掘っていたら、同じ場所に出てしまったということもある。でも、そうやって、いろんな人がいろんな探求をするから、全体像が見えて来る。

2010-10-01 05:39:14
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そういったゲーム空間の探索の結果を語ることは難しい。デザイン、技術、アート、全てを同時に語ることが本来は正しい。それらは分離して話すことは出来ない。しかし、そんなことはできなから、職種ごとに、切り離して話すことになる。

2010-10-01 05:42:20
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

Uncharted 2 の講演が、GDC で6個もあったのは当然と言えば当然だ。あれほど、巨大なゲームで行われた探求は、それこそ膨大なものであったろうから。それでも、聴く者は、それらの講演から全体像と組み立てて解釈することによってしか、ゲーム空間の構造を知ることが出来ない。

2010-10-01 05:43:46
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

GDC を初めとするゲームカンファレンスや、IEEE CIG などの学会、各種書籍の記事で明らかにされて行くゲーム空間の構造は、単なるノウハウを超えて、ゲーム空間の全体像を把握する上で、自身の経験と開発者間の会話を加えて、重要かつ唯一の方法である。

2010-10-01 05:46:51
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

こういったゲーム空間を研究はまだ始まったばかりで、言葉も、手法も、まだまだ足りていない。始まった、という衝撃が続いているだけで、まだまだ成果を引き上げる段階に至っていない。だからこそ、こういった分野を総括しビジョンを見せるということも、現代のゲーム研究者には大切なことである。

2010-10-01 05:48:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームデザイン論や、技術論、ゲーム社会論や、細かい議論は、継続的に行われている。しかし、ゲーム研究者も当然、そういった議論を行っているが、その上で、ゲーム空間全体が今、どのように見えているかというビジョンを見せる仕事が、大きな柱として必要とされている。

2010-10-01 05:53:14
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

開発者だからと言って、そういった全体が見ているわけではない。また、研究者だからと言って、そんな大風呂敷を語ってはいけないということはない。否、むしろ語るべきである。中立なるものだけが見ることができる全体のビジョンというものがある。

2010-10-01 05:54:37
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

所詮人間である。複数の立場の異なる人間の視野を繋ぎ合わせて、全体の構造が見えればいい。そして、その構造は日々、社会や技術の変化と共に変化・発展する。一つの分野を追うだけでもたいへんである。だからこそ、ゲーム空間全体を有機的に見せるという役割は、重要さを増しつつある。

2010-10-01 05:56:03
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

個人の思惑はどうであれ、ゲーム開発、ゲーム研究を通じて、ゲームとゲーム空間は進化・発展する。ますますゲーム空間が広く重くなった今、かつてのようながむしゃら発展の幼年期は過ぎ、冷静に自分を見つめて発展する時期に、デジタルゲームの歴史は入ったのだ。

2010-10-01 05:58:31
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

研究者には、ゲーム空間の自己意識の具現として、自己を見つける目として役割を持つことが求められている。開発者と研究者の葛藤は、ゲームの成長を促すだろう。冷静と情熱の間にこそ、正しい道が存在する。

2010-10-01 06:00:16
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

高度な文明がそうであるように、高度になったゲームも、自分の発展を、ある程度自分でコントロールすることなしに、持続的発展はあり得ない。現代は、デジタルゲームにとって、そういった時代である。

2010-10-01 06:01:31
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

極論として、盲目なる意志と混沌の担い手として開発者がいるとすれば、研究者は、冷静な理性と批判の担い手としての役割を持つだろう。開発と開発者自身を研究の対象として持つということは、そういうことである。

2010-10-01 06:02:49
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

やがて未来からゲーム開発の歴史を見返すとき、開発者と研究者のゲームの進化と発展における、それぞれの役割と貢献が、明らかにされて行くだろう。

2010-10-01 06:06:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そういった意味で、デジタルゲームは進化と歴史の自意識を持ち始めているのである。

2010-10-01 06:08:01