モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Summer VI~
- IngaSakimori
- 1562
- 0
- 0
- 0
(それにこの音は……) 志智にとっては━━聞き覚えのあるエギゾーストノートではないか。 「……やっぱり」 振り返ったその先から現れた黄色い車体は、紛れもなく早間のDR-Z400SMだった。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:45:28「うおっ……」 「あら、綺麗なフォームですわね」 17インチ小径ホイールの不利などまるで無関係だとでも言うように、ステップの上に立ちあがった姿勢の早間は、スパーダとXR650Rの脇をすり抜け、悪路区間へ進入する。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:45:32リアタイヤがブレイクし、尻が揺れる。 だか、早間はそれを無視。滑った先で路面に『引っかかり』勝手にグリップを取り戻したリアをさらにアクセラレーション。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:45:46ヘアピン。じんわりとフロントを握りつつ、リアブレーキを踏み下ろして意図的なロックを併発させる。 右足が前方へ突き出る。そのまま転倒するのではないかという勢いで車体が傾いたその瞬間、スロットルを全開。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:46:10あざやかなドリフト状態へ移行したDR-Z400SMは、曲がるはずの右コーナーと反対方向の左側へハンドルを切りながら、下界へと消えていく。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:46:15(あれ、カウンター……っていうんだっけ……) 模範演技をみせられた気分で志智が見とれていると、亞璃須の舌打ちが聞こえてきた。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:46:24「志智……ちょっと追いかけて、煽って、いろいろ凹ませてきますけれど、よろしくて?」 「やめろ。俺がものすごく惨めな気持ちになるからやめろ。 お前がああいうこともできるのはちゃんと分かってるから、とりあえずやめてくれ」 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:46:39「もしかしなくても……あのDR-Zが?」 「ああ、そうだな。偶然とはいえ、こんなところで会うなんてな……」 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:47:01「モタードという競技は本来、オンロードタイヤのままでオフロードも走るものですけれど、鮮やかですわね」 「そうだな……」 このスパーダでもあんなことができるだろうか。 あんなふうにドリフトで曲がることができるのだろうか。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:47:14(無理だな……少なくとも今の俺には……) 悔しさにも似た思いを胸に、両足を出したまま競歩ほどのスピードで悪路の区間を抜けると、志智のスパーダは重力の助けを最大限に借りながら小河内湖へむけて下って行く。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:48:22建設事務所の脇を通り、国道411号線に出た。 ここだったのか、と思わず口に出してしまうほどその場所は、志智にとってなじみのある場所だった。 大多磨駅をショートカットする真新しい愛宕トンネルが、交差点の左にもう見えているではないか。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:48:27そして━━ 「……おっ、やっと来たか」 早間仁(そうま じん)のDR-Z400SMもまた、交差点の歩道で彼らを待っていた。 #mor_cy_dar
2013-08-26 20:48:41【お知らせ】 本日の投稿はここまでです。この作品に興味をもった方、特にバイク乗りの方、@mor_cy_dar をフォローしてください。そして友人に広めてあげてください。物語の感想・こんな話が読みたいといったご要望も @IngaSakimori にてお待ちしております。
2013-08-26 20:49:16