牧眞司の文学あれこれ その5
(4)「緋の襦袢」……ホラーというよりも、もう少し風情のある幽霊奇譚。
2013-12-16 19:53:24(5)「恨み祓い師」……異色ホラー、むしろ妖怪小説と呼ぶほうがふさわしいかも。
2013-12-16 19:53:36(6)「ソリスト」……外形的に分類すればホラーだが、この作品が湛えているのは恐怖ではなく崇高美。篠田さんが得意とする音楽小説でもある。
2013-12-16 19:53:57(7)「沼うつぼ」……書籍初収録。幻の魚を題材とした、ちょっと猟奇ミステリ的な味わい。
2013-12-16 19:54:31(8)「まれびとの季節」……書籍初収録。文化人類学的視点の取りかたはビショップやホールドストックあたりに通じるものがある。
2013-12-16 19:54:58(9)「人格再編」……書籍初収録。脳内物質の人工投与による気分の制御、萎縮脳を代替するチップによる記憶保持など、中核となるアイデアはイーガン作品とも共通する。
2013-12-16 19:55:16(10)「ルーティーン」……書き下ろし。奇妙な味。構成は円熟期の星新一や山川方夫が書きそうな不条理、あるいはホーソーン「ウェイクフィールド」の静謐な無気味さにも通じる。
2013-12-16 19:55:37(11)「短編小説倒錯愛」……エッセイ。篠田さんの小説観が端的にうかがえる文章として収録。
2013-12-16 19:55:53(12)「篠田節子インタビュウ――SFは、拡大して、加速がついて、止まらない」(聞き手:山岸真)……ウェブマガジン〈SFオンライン〉が初出。紙媒体に収録されるのはこれが初となる。
2013-12-16 19:56:15NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいはグレッグ・イーガン『白熱光』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)を取りあげています。 http://t.co/aJf2fknoDn
2013-12-17 18:25:14書評のさわり―― 天文学的なスペクタクルと併走して、もうひとつのテーマとも言える「好奇心・探求心の発動」が奇数章と偶数章を貫いている。こちらに対しても、大胆で華麗なアプローチがされている。 http://t.co/aJf2fknoDn
2013-12-17 18:26:14ありがとうございます! あとがきで「四つの勘違い」が示唆されていたので、そこを注意深く読みました。とくに2番目は自分じゃ気づけなかったかも。そして4番目がこの作品のキモだと思います。 RT @ymgsm 訳者あとがきよりずっと的確に話の大枠と読みどころがまとめられています。
2013-12-17 18:41:43『白熱光』を最初に読んだときには〈スプリンター〉の設定とそれを明かしていく手続きにシビれだのだけど、再読して凄いと思ったのは、知的好奇心が種族的に発動するサージ/トリガー/カスケードのメカニズム。奇数章の主人公ラケシュがDNA生まれというのは、じつはこのアイデアと呼応している。
2013-12-17 18:57:54これまでのSFでも、あらかじめプログラムされた好奇心という発想はあった。端的なのは『都市と星』のアルヴィンだが、彼はあくまで個人としてそれを担っていた(あるいは強いられていた)が、『白熱光』はかなり意味合いが違っていて、もっと身も蓋もないというか冷徹というか。
2013-12-17 18:58:20フラン・オブライエン『第三の警官』(白水uブックス)読了。久しぶりの再読だけど、やっぱヘンだわ、これ。奇抜で奇怪なケッサク。もしかすると、ぼくが脳内補完して凄さを過大に見積もっているかと危惧していたのだが、逆でした。記憶していた以上にオカシイ。
2013-12-17 20:18:18『第三の警官』でいちばん好きなのは、語り手が警察に行ってあれこれ言い募るのだけど、警官はなにもかも自転車と結びつけてしまい(そもそも自転車関係以外の事件が起こりうるという発想がない)、ちっとも話が通じないどころか、語り手もだんだん自転車方面へ考えや気持ちが傾いていくくだり。
2013-12-17 20:19:23なんだコレハと思うのだけど、そもそもこの物語は開幕から自転車が隠し味(?)になっているのでした。殺人事件の最初の凶器が自転車用空気ポンプ。それで最後まで、さまざまなカタチで自転車のモチーフが出入りする。どうなっているの? この小説空間。この世界。
2013-12-17 20:21:03『第三の警官』はそのタイトルが示すように警官が3人も登場し、犯罪も謎もあるので、広義のミステリと言ってよいと思うのだけど、ミステリファンのみなさんはどう評価されるのだろう? 世界文学はリーグが違うと、最初から手を出さないのかな。
2013-12-17 20:28:38ツイートしそびれていたが、レオ・ペルッツ『ボリバル侯爵』(国書刊行会)もミステリ界隈の評価をうかがいたい作品。この作品はミステリそのものではないけれど、トリックのパターン「あやつり」を当てはめて考えると、その異様さがよくわかる作品なのだ。
2013-12-17 20:47:52ミステリは基本は、真犯人Aと探偵Bの知恵比べで、物語としては被害者Cが関わってくる。「あやつり」トリックでは、さらに実行犯Dが加わる。
2013-12-17 20:49:47『ボリバル侯爵』は、真犯人Aに相当するのがボリバル侯爵で探偵Bはナッサウ連隊。被害者Cもナッサウ連隊。BはAの犯行計画を事前に察知してこれを阻止する。やや曖昧だがAは処罰されて物語から排除されてしまう。
2013-12-17 20:50:40しかし、死んだはずのAだが、その意志は生きており、実行犯Dを代理にあやつって、被害者C(ナッサウ連隊)に害をなす。
2013-12-17 20:52:22その実行犯Dに心ならずも仕立てられてしまうのが、ほかならぬナッサウ連隊なのだ。つまり、自らの手で自分たちを滅ぼすきっかけをつくってしまう。
2013-12-17 20:52:57この時点で、探偵B、被害者C、実行犯Dがすべてナッサウ連隊という異様な図式なのだが、物語の最後に真犯人A(ボリバル侯爵)が思いもよらぬかたちで再登場し、それもナッサウ連隊のひとりなのだ(実際は同一人物じゃないが運命のいたずらで重ねあわさってしまう)。
2013-12-17 20:54:43すなわち、A・B・C・Dがみな一緒! こんなミステリ、前代未聞じゃないかな。
2013-12-17 20:55:51