まどかは神になったが、みずはは破壊神だ。そうやって見立てると、キュゥべえの役割に相当するのが異様知性体。しかし、『魔法少女まどか☆マギカ』の切なく哀しい感動など、『みずは無間』には薬にしたくともない。いや、これは貶しているのではなく、よくここまで書いたなと。
2013-11-27 12:05:08でも、もしかして『みずは無間』を読み「みずはの気持ちわかるなあ~」とか「みずはが可哀想で泣いてしまいました」とかいう感想を抱くひとがいるかも。いたらコワいね。
2013-11-27 12:05:48まあ、小説を読んで「こんな女ありえねえ」とか「この男バカ? オレだったらこんなことしない」というのは一時的・局所的な感想にすぎず、それで作品全体を計れるものではない。これはそういう女と男が登場する小説であって、その前提(というか要素)だけつついてもしかたない。
2013-11-27 12:41:03『ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト』発刊記念で、SFMにエッセイを書くことになった。収録作品については巻末解説でだいぶ触れているので、それ以外のことと考えて、最新短篇集『ミストレス』(光文社)に言及することにした。
2013-12-02 21:46:31『ミストレス』は5篇を収録するが、そのうち4篇は雑誌の「官能小説特集」に寄せられたもの、残り1篇も「旅」をテーマとしたアンソロジーが初出であり、あまりSFと縁がなさそうにみえる。しかし、3篇がSFないしは幻想小説なのだ。もちろん、みな面白い。
2013-12-02 21:47:05篠田節子『ミストレス』収録作のうち、とりわけの傑作は「やまね」。ちょっとフィリップ・ホセ・ファーマー『恋人』っぽい。また、半村良の伝奇SFの香りもある。
2013-12-02 21:47:58SFとしての読みどころ以外に、「やまね」が面白いのは、男が抱きがちなロマンティシズムが笑いのめされている点だろう。
2013-12-02 21:48:16恋人からその友人へと心変わりした男(主人公)は、彼なりの誠実さをもって恋人に打ちあける。頬を張られてもかわさずに受けとめようなどと、覚悟して。しかしこれが大甘。飛んできたのは平手ではなく拳だった。彼女のスポーツジムで鍛えあげた腕で殴られ、たまらず逃げまわる男。
2013-12-02 21:48:56NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいは梶尾真治『うたかたエマノン』(徳間書店)を取りあげています。 http://t.co/Tul4DUmAez
2013-12-03 18:05:35書評のさわり―― エマノンはつねに変わらぬひとりだが、それに関わる人間ひとりひとりに特別な印象を残すのである。 http://t.co/Tul4DUmAez
2013-12-03 18:06:00グレッグ・イーガン『白熱光』(新☆ハヤカワSFシリーズ)300ページを通過していぜん快調。なんか凄く懐かしい味わい。扱われている物理は高度だけど、物語のつくりとかキャラクターの考えかたとか、ハル・クレメント『重力の使命』みたい。
2013-12-06 21:01:58グレッグ・イーガン『白熱光』(新☆ハヤカワSFシリーズ)読了。驚愕の結末が! 作品のはじまりから、孤高世界を統べる超越的存在はどこにいて何を目的にしているか最大の謎だったんですが、まさかそこに! ずっとそこに!
2013-12-07 12:31:09結城充考『躯体上の翼』(東京創元社)読了。ポストアポカリプスの異形未来の入りくんだ設定とめくるめく景観がすばらしい。ネーミングをはじめ言葉の使いかたもエッジが立っていて、いかにも現代SF。
2013-12-10 14:56:57『躯体上の翼』。主人公の生体兵器(外部の民からは鴉女と呼ばれている)が、機密の情報通信網をハッキングしてcyという存在と出会う。このcyの危機を救うために、自らの立場・任務を放棄し、強大な権力を出しぬこうとするが、相手に感知されて苛烈な戦闘に突入。
2013-12-10 14:57:12ストーリーは太く直線的であり、その強力なベクトルに巻きこまれるように、敵役・脇役を含めた因縁や背景が立ちあがっていく。とても絢爛。
2013-12-10 14:57:46NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいは六冬和生『みずは無間』(早川書房)を取りあげています。 http://t.co/DsLiVtXYUr
2013-12-10 19:36:50書評のさわり―― 異種知性体そのものに悪意も敵意もないが、そこに進化を遂げたDが絡み、また、みずはの因子が発現することで、事態はインフレーション的に宇宙全体を巻きこんでいく。この暴走を描く終盤がものすごい。 http://t.co/DsLiVtXYUr
2013-12-10 19:37:16西崎憲『怪奇小説日和』(ちくま文庫)読了。大味な新作長篇ファンタジイを数冊読んだあとだったので、時の経過に風化しない怪奇短篇の滋味が身に沁みます。
2013-12-15 16:30:19白眉はふたりのボウエン――つまり、マージョリー・ボウエン「フローレンス・フラナリー」とエリザベス・ボウエン「陽気なる魂」。あからさまな超自然に帰着しない不吉な幽冥に、心が惹かれる。トマス・バーク「がらんどうの男」のトボケた味も素敵。
2013-12-15 16:31:22『ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト』(ハヤカワ文庫JA)、担当編集者の(井)くんから見本ができたと連絡。篠田さんの元にはすでに届いているらしいが、うちは明日になりそう。楽しみ! ぼくにとっては初めての編著。
2013-12-16 19:51:05『ルーティーン』は短篇10篇、エッセイ1篇、インタビュウ1本を収録。書き下ろしが1篇、書籍初収録が3篇ありますから、篠田さんの本はすべて読んでいるよという方もぜひ!
2013-12-16 19:51:38以下、『ルーティーン』収録作について、簡単に紹介しておきます。
2013-12-16 19:51:55(1)「子羊」……ディストピアSF。カズオ・イシグロの有名作品と同様の題材を扱っているが、発表はこちらのほうが十年も先行している。
2013-12-16 19:52:14(2)「世紀頭の病」……パンデミックによる人類の危機を描いたSFだが、なんとドタバタ調で進行する。
2013-12-16 19:52:31(3)「コヨーテは月に落ちる」……ディッシュ「降りる」を髣髴とさせる不条理小説。
2013-12-16 19:52:56