稲川淳二 つぶやき怪談 2013年9月25日
レコーディング・ディレクターで、ラジオの音楽番組のパーソナリティーをしている浅井さんが、結婚して、一戸建ての新居に引越した。
2013-09-25 22:35:11家具が納まるところへ納まって、あとは戸棚や引出しへしまい込む、細かな物を整理していると、奥さんが、箱に入れたままになっていた写真を見つけて、一枚一枚取出しては、懐かしそうに眺め始めたんで、
2013-09-25 22:35:58(これは長くなるなあ・・・)と浅井さんが、見るともなく写真を覗くと、それは帽子をかぶって、リュックを背負った男女のグループ写真だった。
2013-09-25 22:36:44奥さんとツーショットで、こっちを見て笑っている帽子をかぶった彼女、(・・・あいつにそっくりだ。まさか・・・、そうなんだろうか・・・?)
2013-09-25 22:39:46と思いめぐらせていると、そんな親しげなふたりの写真が、次々と出てくるんで、浅井さんが思わず身を乗り出して覗くと、奥さんが気づいて、
2013-09-25 22:40:24「彼女、同じサークルで親友だったんだけど、私達の結婚式の、十日前に交通事故で亡くなったの・・・・。で、披露宴に出られなかったんだけど・・・・、
2013-09-25 22:41:00彼女ね、つき合ってた恋人に捨てられたみたいで、相手に新しい彼女が出来て、その人に、彼をとられちゃったらしいの」 と聞かせてくれた。
2013-09-25 22:41:43結婚式の十日前、浅井さんは前の彼女に、きっぱりと別れを告げる為に呼び出すと、 「歩きながら話そう・・・」と言って、一方的に話をすると、
2013-09-25 22:45:36(そうかぁ、あいつ死んだのか・・・。知らなかったなぁ・・・。 もっとも、死んだと知らされても、葬式には行けないし・・・・。 どうも後味が悪い。でも、それで良かったのかも知れない。
2013-09-25 22:50:59そうなったら『親友の今日子を捨てた男』というのが、自分の亭主で、親友から恋人を奪った張本人が、自分自身だとわかってしまう)と彼女の死を、それほど重くは受け止めていなかった。
2013-09-25 22:52:28(それにしても、まさか、今日子が女房の親友だったとは、意外だったなぁ・・・。女房は、何も気付いていないようだし、黙っていればわからない・・・)
2013-09-25 22:53:23